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【メンタルヘルス】今さら聞けない!産業保健の用語解説

産業保健現場では臨床現場と異なる業務が多いため、聞き馴染みのない用語が頻出。ネットでいつも検索していた。でも答えが見つからない。なんて経験ありませんか?

そこで、「産業保健の用語解説」を作成しました。
今回は”メンタルヘルス”に関係する用語のうち、産業保健スタッフが知っておくべきキーワードや使用頻度の高い用語に関して解説しています。
ご自身の学習/復習だけでなく、他の方への説明の際などにもご活用ください。

用語一覧


メンタルヘルス
メンタルタフネス
ストレスチェック
実施事務従事者
高ストレス者
4つのケア
ラインケア
適応障害
バーンアウト(燃え尽き症候群)
ボアアウト(退屈症候群)
ブルーマンデー症候群
レジリエンス
マインドフルネス
アサーション
ノンヘルスセクターアプローチ
ラポール


メンタルヘルス

メンタルヘルスとは直訳すると「精神保健」、もっとやわらかく言うと「こころの健康を保つ」ということです。今、多くの企業でこころの健康が保てなくなって仕事ができなくなり、会社を休職したり、退職したりする人が増えています。

わが国ではうつ病で病院に通う人は100万人を超えているといわれています。企業においても多くの労働者がこころの健康の問題を抱えているといえます。




メンタルタフネス

メンタルタフネスとは、困難が降りかかった時に悪い感情に振り回されるのではなく、解決に向けた行動が起こせることを言います。人はストレスに直面すると、自分なりに解決策を考えて実行に移しますが、その時どのような方法でストレスに向き合うかは人によって異なります。この個人による差がメンタルタフネスの違いです。

例えば、ストレス原因は同じでも、直面した時に激しく落ち込む人もいれば、全く気にしない人もいます。前者はストレスへの向き合い方が苦手な人であり、後者はそれが上手な人と言えます。しかし、メンタルタフネスは生来持っている「性格」ではなく、開発できる「スキル・能力」であるため、ストレスへの向き合い方を学ぶことでスムーズに解決できるようになるのです。




ストレスチェック

ストレスチェックとは、労働安全衛生法改正により2015年12月からスタートした制度になります。常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して、すべての労働者に年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。

ストレスチェック制度は「労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する」「職場環境の改善」という2つの目的のもと実施され、具体的には以下の効果が期待されています。

・労働者自身にストレスの状況について気づきを促すことが未然予防につながる
・検査結果を集団分析して課題にアプローチすることで、職場環境の改善につながる

近年メンタルヘルス不調者は増え続けており、厚生労働省が公表した平成29年度の「過労死等の労災補償状況」では精神障害の労災認定件数が過去最多となっています。

メンタルヘルス不調になる原因は多くの場合、長時間労働やハラスメントが起きやすい風土など職場に起因しています。ストレスチェック制度は、企業がメンタルヘルスの問題に本格的に取り組み、健全な職場環境を構築していくためにスタートした施策だといえます。




実施事務従事者

実施事務従事者とは、ストレスチェック実施者の補助業務を行う人のことをさします。
ストレスチェックを実施するのは、各事業場の産業医など労働衛生に関する知識を持った実施者ですが、ストレスチェックに関わる全ての実務を実施者が行うことは難しいため実施事務従事者が必要になります。
実施事務従事者とは、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力又は記録の保存(事業者に指名された場合に限る)等を含む。)に携わる者と定義されます。




高ストレス者

高ストレス者とは、ストレスチェックによって高ストレスと判明し、面接指導が必要であるとストレスチェック実施者が判定した人を指します。

高ストレス者の判定基準として明確に定められたものはありませんが、ストレスチェックを実施する前に、実施者の意見および衛生委員会などの調査・審議により、高ストレス者の評価基準を設定する必要があります。

厚生労働省が公表しているストレスチェック制度実施マニュアルで紹介されている高ストレス者の判定基準では、ストレスチェックを受けた労働者の10%程度が高ストレス者となるように設計されています。

なお、ストレスチェックの結果を評価して高ストレス者を選定する際、事業者が受検結果や選定結果を知ることはできません。労働者の受検結果を評価するのは「実施者」なので、この時点で選定結果を知っているのは、実施者および実施事務従事者のみとなります。

労働者に通知するストレスチェックの受検結果では、「ストレスの要因に関する項目」「心身のストレス反応に関する項目」「周囲のサポートに関する項目」という3つの領域におけるストレスレベルを点数で表すほか、ストレスの程度や医師による面接指導の対象者であるかどうかが記されていなければなりません。

ストレスチェックの受検結果が、実施者および実施事務労働者から労働者に通知されても、事業者は受検結果について知ることはできません。ただし、労働者が通知を受け取った後、その労働者の同意を得た場合に限り、事業者も受検結果を把握することができます。

ストレスチェック実施において知り得た個人情報を第三者に漏らすことは禁止されています。高ストレス者の情報をその人の上長などに本人の同意なしに伝えることは守秘義務違反となりますので、情報の取り扱いには十分に注意しましょう。

高ストレス者の判断基準の設計はゼロから行うことも可能ですが、担当者の方の業務負担を減らしたいという場合は、厚生労働省のストレスチェッ




4つのケア

4つのケアとは、厚生労働省がメンタルヘルス対策において推奨している「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」のことを指します。

各企業がメンタルヘルス対策を行う際には、この4つのケアを念頭において施策を進めると効果的です。




ラインケア

ラインケアとは、直属の上司など管理監督者が、部下の不調に気づき、相談対応や職場環境の改善といった取り組みを行うことをいいます。
厚生労働省では、「労働者の心の保持増進のための指針」において、メンタルヘルスケアを「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケアに分類しており、そのうちのひとつがラインケアと呼ばれるものです。




適応障害

適応障害とは、日常生活や職場において起きた出来事や環境の変化などにうまく適応できず、特定の出来事をストレスに感じることに起因してさまざまな気分や行動面に症状が表れる状態をいいます。




バーンアウト(燃え尽き症候群)

バーンアウト(burnout)とは、これまで熱心に仕事に取り組んでいた人が、突然、あたかも「燃え尽きたように」意欲を失ったり、心身のエネルギーを消耗して無気力状態になってしまうような状態を指します。1970 年代にアメリカの精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガー博士が提唱した概念であり、日本語では「燃え尽き症候群」とも呼ばれています。

バーンアウトは、対人サービス従事者の職務ストレスとして知られており、特に医療や福祉、教育などの公共サービス領域で仕事をしている人が陥りやすい傾向にあると言われています。しかしながら、現代社会においては上記以外にも、様々な領域・職種の人々が自身の知識や技術にもとづいたサービスを顧客に提供していることから、誰でも燃え尽きてしまう危険性を孕んでいます。

バーンアウトの状態に陥ると、メンタルヘルスに不調が生じるだけでなく、パフォーマンスの低下や休職につながることも明らかになってきています。さらに症状が進めば、「今すぐに仕事を辞めたい」と従業員の離職につながる可能性もあるため、企業はこうした事態にならないよう対策を施す必要があります。




ボアアウト(退屈症候群)

ボアアウト(Bore out)とは仕事や生活面において常に物足りなさを感じ、やる気の衰退や不安などからメンタルヘルスに支障をきたしている状態を指します。「boring(退屈)」から生まれた言葉であり、2007年ごろに提唱されております。退屈症候群とも呼ばれます。
症状としては退屈感、不安感、危機感、自己否定など動けない状態であるのにその状態に不安や危機感を覚える悪循環の状態です。自己評価を著しく低下するなどの症状も見受けられます。




ブルーマンデー症候群

ブルーマンデー症候群とは、月曜日が近づくにつれて憂鬱になる心理のことです。土日休みの社会人を中心に使われることが多く、月曜日から仕事が始まることに対する、人の憂鬱な心理状態を表しています。この言葉は心理状態を指すものであり、医学的用語ではありません。

具体的には、休日が残り少なくなる日曜日の夕方頃から憂鬱な気分になる人が多いようです。休日が楽しい時間であるほど、働いている時間の辛さや苦しさとのギャップが大きくなり、ブルーマンデー症候群の引き金となります。日本ではその時間帯にTVアニメ『サザエさん』を放送している地域が多く、アニメを見て「日曜ももう終わりか、明日から仕事だな」と、月曜日を意識するきっかけになることから、「サザエさん症候群」などの通称も存在します。

仕事がうまく進んでいない、仕事上のコミュニケーションが苦手、などの不安要素がある人は、月曜日からの仕事を考え憂鬱になりやすい傾向にあります。他にも、性格的にまじめな人や、楽観的に考えるのが苦手なネガティブ思考な人も、ブルーマンデー症候群に陥りやすい可能性があるので注意が必要です。




レジリエンス

レジリエンスとは、直訳すると「回復力」「弾力性」「しなやかさ」を意味する単語です。
これを心理学では、困難な問題や危機的な状況、トラブルやストレスに対する回復力として定義されています。




マインドフルネス

マインドフルネスとは、具体的には日々の悩み事や不安な感情や気が散ってしまうことを鎮め、「この瞬間」に集中する精神状態を意識的につくっていくことです。その代表的な手法として、「瞑想」が用いられることが有名です。

また、学術的な視点では、早稲田大学教授の熊野宏昭氏によると、「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の在り様」と説明される状態を指すようです。

たとえば人が思い悩んでいる時、仕事で失敗してしまったことを何度も思い出したり、次のプレゼンでうまくできるかどうか不安になったりと、時間軸上の過去か未来の思考に注意が向いてしまっています。そのため、今目の前にある仕事に集中できず、手がおろそかになってしまうのです。

マインドフルネスのプロセスは、自分の注意が過去や未来についての思考に向いている事実にまず気づくこと。そして、そうした思考に注意をうばわれないようにし、代わりに現在の自分が知覚している自分の身体の外側にある環境中の刺激(光、音、におい、触感など)、また自分の内側にある身体の感覚などに注意を戻すことが、最初の一歩になります。




アサーション

アサーションとは、コミュニケーションスキルのひとつで、自分も相手も大切にしながら、率直・誠実に自分の意見や気持ちを伝える方法のことです。「自己主張」を意味する英語の"assertio"からきています。1950年代のアメリカで、行動療法という心理療法の中から生まれ、自己主張が苦手な人に対するカウンセリング技法として活用されてきました。

近年アサーションが注目されて広まりを見せているのは、多様性(ダイバーシティ)やハラスメント意識の高まり、コロナ禍による非対面コミュニケーションの増加といった背景があります。

アサーションを活用すれば、お互いの違いを理解し尊重する力を養え、その場の空気感や相手の表情・しぐさといった細かな変化が見えないオンライン上のコミュニケーションの円滑化にも役立つと考えられています。




ノンヘルスセクターアプローチ

健康経営において、従業員の健康を支えるために、直接的には健康管理と関係がないように見える部門や活動にも焦点を当てることを意味します。これには、経営方針や企業文化など、従業員の健康に間接的に影響を与える要素が含まれます。




ラポール

ラポールとは、相談などに際しての心の繋がりのことをいいます。ラポ-ルは問題解決に向けて相談などを継続して進めるための基本となります。特に、初回対応の場面で重要となり、その後の成果に大きく影響するといえます。




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