産業医・保健師必見のDXとは?健康施策を効果的に進める鍵はデジタル化!
【目次】
1.はじめに
2.デジタル化の重要性とメリット
3.産業医や保健師によるDX戦略
4.産業保健の現場で活用できるデジタルツール
5.おわりに
1. はじめに
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」を略した言葉で、 IT技術の活用により人々の生活や社会活動を良いものに変革させる という概念です。
近年、新型コロナウィルス感染症流行の影響もあり、WEBミーティングの普及やペーパーレス化等、急速にデジタル化が進んだことはご存じのことと思います。
2024年より始まった、健康日本21(第3次)における基本方針においても、PHR(パーソナルヘルスレコード)の推進、ウェアラブル端末やアプリの活用について明記されており、医療業界や産業保健業界においても、DXの推進は今後必要不可欠となるでしょう。
なお、本稿では、DXを加速させるための、デジタル化、IT化による業務効率化の取り組みもあわせて紹介いたします。
2. デジタル化の重要性とメリット
では、DXを進めることでどんなメリットが期待されるのでしょうか?
産業保健におけるDX化を進めるメリットとして、以下の5つが挙げられます。
① 業務効率化
産業保健で使用されるデジタルツールの主な活用方法としては、社内イントラネットの活用、
Teamsなどチャット機能やWEB会議の推進、健康管理システムの導入、タスク管理ツールを使用して業務の見える化などがあります。
【活用例】
・社内イントラネットの活用により健康診断の案内や健康だより等の健康関連の情報を一元化
・電子メールによる連絡をチャットにすることでの業務時間短縮
・健康管理システム導入における事後措置対象者の抽出や就業判定の効率化、個人票作成や記録の作成時間の短縮
・タスク管理ツール導入により産業保健スタッフ間での業務の見える化やタスクの共有
② 機密書類の安全な保管や共有
デジタルツールを有効に活用することで、健康診断結果や診断書、ストレスチェック等の個人情報を安全に共有・保管することが可能となります。
診断書、診療情報提供書、産業医意見書の共有や管理について、電子メール送信や社内便での送付は漏洩(誤送信、紛失、第三者の閲覧など)のリスクが伴いますが、健康管理システム等のツール導入で個人情報を含む機密書類なども安全に保管・管理することが出来るようになります。
ただし、システム上での管理を行う上では、社内セキュリティ対策を徹底し、あらかじめ個人情報における管理方法や閲覧権限を明確にすること等が求められます。
③ 健康課題の可視化等、効果的な健康施策の推進
健康施策を進めていく上で、事業所の健康課題の抽出は必要不可欠です。
Excel等で地道に分析する方法もありますが、デジタルツールの活用により、容易に有所見率など具体的な数字を抽出することが可能となります。
また、健康施策の一つとして、社員の健康づくりを支援するアプリ等を活用することで、健康施策を効果的に行うことも可能となります。
健康経営優良法人収得のための健康経営度調査においても、2024年よりワークエンゲージメントの評価や特定保健指導の実施率等が追加となり、各健康施策において「ただ実施する」のではなく「効果的に実施」し、数字での評価が必要となってきました。
健康課題の抽出から、健康施策の推進、実施した施策の評価など、今後ますますITツールが活躍できる場が増えてくることが想定されます。
④ コミュニケーション活性化や関係各所との連携強化
社内イントラネットやチャット等の交流機能を有効に活用することで、社内コミュニケーションの活性化に役立ちます。
産業保健スタッフの業務においても、社員はもちろん、他事業所、人事等関係各所との連携が容易となります。
コミュニケーションの活性化や連携強化は、業務効率を上げるだけでなく、メンタルヘルス不調の予防や離職防止にも繋がります。
⑤ 業務場所に捕らわれない働き方が可能となる
健康管理システム等で健康診断やストレスチェック、面談記録等の健康情報を一元化することで、鍵付きのキャビネットがある場所での作業を強いられることがなく、フリーアドレス、在宅ワーク、リモートオフィス、他事業所での勤務など、業務場所を選ばない働き方も可能となります。
そして、Web会議ツールを用いて遠隔で面談を実施することで、他事業所で勤務している社員や、外勤中の社員とも移動の手間なくコミュニケーションを行うことができます。
また、疾病による休業者や育児休業者を管理するシステムを用いることで、休業者の情報を一元管理でき、対応状況の共有や進捗管理などが効率的に行えるようになります。
3. 産業医や保健師によるDX戦略
産業医や保健師等、産業保健スタッフが産業保健活動のデジタル化を進めていくためには、基本的な操作方法等のITスキルの収得に加え、データ化された個人情報の取り扱いや閲覧権限などの社内ルールや体制の整備なども必要となります。
また、デジタルツール導入にはコストもかかる為、導入前にどの業務がどのくらい効率化できるのか、このツールを導入したことで事業所にとってどんな効果が期待できるのか、産業保健スタッフの業務プロセスや期待できる効果の見える化も必須です。社内の意思決定や予算獲得のプロセスについて、事業所の人事や衛生管理担当者と連携しながら検討するようにします。
【検討例】
・健康管理システム導入することで、毎月の個人票作成に費やしている●時間を節約できる
・保健師1名あたりの人件費を考慮すると、年間コスト●●万円の削減が見込まれる
・節約できた時間を用いて●●の取り組み(社内の課題に対する取り組み)に力を入れることができる
4. 産業保健の現場で活用できるデジタルツール
① 産業保健スタッフが活用できるデジタルツール
■健康診断結果管理ツール<健康管理システム>
健診管理システムは、従業員の健康診断結果の一元化や保管、就業判定や事後措置の効率化に役立ちます。また、健康診断データの集計や分析、健康課題の抽出や健康施策の立案が容易となります。
■ストレスチェック管理
ストレスチェックをWEBやスマートフォンのアプリ上で実施できるため、実施率向上に繋がります。また、個人の結果や分析結果が実施後すぐに閲覧可能となるため従業員のメンタルヘルスへの意識づけが効果的に行えます。
更に組織分析が容易となるといったメリットが期待されます。
■休職者・復職者管理システム
休職者・復職者管理システムは、病気やケガによって休職した従業員の管理や、復職プロセスをサポートするためのツールです。診断書や職場復帰支援プラン、面談記録、生活記録表などを管理し、従業員が安全かつスムーズに職場復帰できるように支援します。労働者と管理者、産業保健スタッフ間のコミュニケーションを円滑にし、適切な支援策を提供します。
■エンゲージメント管理システム
エンゲージメント管理システムは、従業員の職場への関与度や満足度を評価し、職場環境の改善や従業員のモチベーション向上を促進するためのツールです。アンケートやフィードバックを通じて従業員の声を収集し、問題点の特定やポジティブな要因の強化に活用します。これにより、職場文化の向上やチームの協力関係の強化が図られ、生産性の向上にも寄与します。
■データ一元化(集約・分析)ツール
健康診断結果やストレスチェック、勤怠情報、事後措置等の情報を一元化できるツール。
健康データを一元化することで、組織における健康課題の分析や、健康施策の評価に活用できるため業務効率化だけでなく健康経営においても活用ができます。
② 従業員が活用できるデジタルツール
■食事アプリケーション
食事を入力し、必要な栄養素などのアドバイスが可能となるシステム。
目標体重を入力することで、自動でカロリー計算し必要な栄養素のアドバイスがもらえるため保健指導において食生活の改善や体重管理の継続などが期待できます。
■運動アプリケーション
歩数管理アプリや、筋トレ、腰痛・肩こり予防ストレッチなどが実施できるアプリケーション。社内ウォーキングイベントへの活用、腰痛や肩こり予防によるプレゼンティーズムの改善といった効果が期待できます。
■睡眠アプリケーション
毎日の睡眠状況を記録や睡眠に関するeラーニング実施など不眠の改善に活用できるアプリケーション。睡眠状況を改善することで、エンゲージメント向上やメンタルヘルスケア予防に効果が期待されます。
■コミュニケーションツール
チャット等のコミュニケーションツールを活用することで、社内コミュニケーション活性化につながります。産業保健スタッフへも気軽にチャットで相談できるようになると、産業保健スタッフと従業員の距離を縮めることができるため「専門職へ相談しやすい環境」にもつながります。
③ 番外編【AIの侵略】
産業保健においても、今後はChat GPTなどのAI活用が進んでくるでしょう。
活用例は下記に記載している通り無限大ですが、AIの回答は必ずしも正しい訳ではないため、重要な情報は必ず確認する、また、AIは入力した情報をもとに学習するので、個人情報や会社の機密情報の入力には十分注意するなど、上手に活用する必要があります。
《文章生成AIにおける活用例》
・会議議事録の作成
文章要約を依頼することで、議事録の作成に活用することができます。
・架空の事例を作成
事例検討会等で、架空の事例作成を依頼することができます。
問題点や検討したい内容など細かく指示すると良いでしょう。
・健康講話の内容の見出しの検討
多くの人の目に留まるよう、見出しをいくつか提案してもらうことができます。
対象者やキーワード、目的(課題解決)などを指示すると良いでしょう。
・Excelの数式を聞く
Excelの数式や使用方法に困ったら、聞いてみるとよいでしょう。
・最新の論文の翻訳・要約
気になるテーマの論文を翻訳したり、内容を要約することで効率的な情報収集が出来ます。
5. おわりに
産業保健業務におけるデジタル化は、業務効率を上げるだけでなく効果的に健康施策を進めていく上で非常に効果的です。
煩雑な事務作業などから効率化することで、メンタル不調者の対応や会社の健康課題解決に向けての企画立案など、産業保健スタッフでなければ出来ない仕事、注力すべき仕事に時間を充てられるでしょう。
予算にも関わるため、あらゆるデジタルツールの導入は困難かもしれませんが、事業所にとってどのような課題があって、何を解決したいのかを明確にすることで必要とされるデジタルツールが見えてくることでしょう。
無料で使用できるものもあるため、どのようなツールが存在するのか調べてみることもお勧めです。人事や社内IT担当者とも連携しつつ、効果的に社内DXの推進ができるよう取り組んでいけると良いですね。
■作成|さんぽLAB 運営事務局 保健師
■監修|難波 克行 先生
クロス分析で課題が見える!DXプラットフォーム
ストレスチェックや定期健康診断結果、勤怠のデータなどから高精度なクロス分析を実施し、真の組織課題を見える化!課題解決アプローチを通じて従業員の行動変容を促します。健康経営に必須のDXプラットフォームです。
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投稿を表示医療分野のDXは待ったなしですね!有用な情報ありがとうございます。
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