産業保健計画の立案に効果的なデータ分析~総まとめ~
産業保健活動を効果的に進めていくためには、産業保健活動におけるPDCAサイクルを回していくことが重要です。
この記事では、 PDCAサイクルを見える化するためのデータ分析のメリットや施策の具体例 についてお伝えいたします。
目次
1.産業保健活動におけるPDCA
2.課題抽出のために必要なデータ分析
3.データ分析を始めるための5つのヒント
4.分析結果を健康施策に活かすポイント
5.まとめ
1 産業保健活動におけるPDCA
産業保健活動を効果的に進めていくためには、産業保健活動におけるPDCAサイクルを回していくことが重要です。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)⇒Do(実施)⇒Check(評価)⇒Act(改善)を繰り返し行うことであり、業務効率やクオリティーを高めるための管理手法のことをいいます。
PDCAサイクルを回していくことは、計画をただ実施するのみでなく、評価し、改善し、計画を修正していくといったアクションが求められます。 これを続けていくことによって、活動や計画の内容が見直され、課題やニーズにマッチした、より効果的な健康施策の実施が可能となります。
また、PDCAサイクル(計画・実施・評価・改善)の各フェーズを確実に見える化することも重要です。見える化することによって、産業保健活動を戦略的に進められるだけでなく、その効果を会社に示せるようになるため、産業医や保健師の活動の価値や意義を会社に対して正しく伝えることも可能となります。
2 課題抽出のために必要なデータ分析
各フェーズの見える化には、データ分析などの定量的な評価が有用です。
「産業保健におけるデータ」は、主に健康診断の結果や生活問診、ストレスチェックの結果、エンゲージメントの評価、勤怠情報、健康施策で得た情報、事後措置に関する情報などが挙げられます。
データ分析のメリットは、次の3つがあります。
①健康課題の抽出
データ分析により、健康課題の抽出が可能となります。
健康課題の可視化が出来れば、健康施策の立案を効果的に行えるため産業保健活動を進めていく上では非常に効果的です。
②健康施策の評価
アンケート結果や施策実施後の健康データなどを活用して分析を行うことで、施策が有効であったのか、どのような課題があったのか、といった情報を得ることができるため次の施策を効果的に実施することが可能となります。
③費用対効果の検証
データ分析を定期的に、詳細に行うことで、プレゼンティーズムやエンゲージメント等の分析も同時に行えば施策を行ったことでの費用対効果を抽出することも可能となります。
そのため、データ分析し数字として表せるようにすることで、健康施策のための予算の獲得や人員確保にも繋がります。
3 データ分析を始めるための5つのヒント
データ分析と聞くと=統計解析?と思う方もいらっしゃるかもしれません。実は統計解析よりも先におさえておくべきポイントがいくつかあります。
データをよく理解するための5つのヒントについてご紹介します。
ヒント1. 理想のデータ構造について知っておく
最初から分析用に整った形式になっていればその後の作業の難易度は低いです。理想のデータ構造について知っておくことで、扱うデータの目指す姿が明らかになり、作業の道筋がイメージしやすくなります。
ヒント2. 何のデータが入っているのか把握する
まず把握する情報は、どういった変数(=列名)がデータとしてあるのかについてです。変数名の一覧とその中身を見て、活用したい、もっと詳しく調べてみたい変数を拾い出します。
ヒント3. データを要約する
データをよく理解するためには、要約して集計する作業がかかせません。
たとえば、関心のある指標(変数)について以下の基本的な集計をするとよいと思います。
■各変数の平均値、割合などを計算する
■層別(性別、年齢層別、部署別、年度別など)に平均値、割合などを計算する
ヒント4. グラフにする
基本的な集計は、グラフ化することでさらに理解がしやすくなります。加えて、集計していない生のデータの特徴をできるだけ残して可視化する方法も強力かつ簡単です。
■基本的な集計のグラフ化:棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなど
■生のデータの特徴を残したグラフ化:ヒストグラム、箱ひげ図、散布図など
ヒント5. ストーリーを作る
データのグラフ化までできたら、たくさんあるデータ分析結果から、伝えたいメッセージに合わせて抽出し、整理することが必要です。ストーリー性を持った情報の提示を意識することにより、分析結果の重要性がより伝わるようになるでしょう。
4 分析結果を健康施策に活かすポイント
健康課題が明らかになったら、どの項目に対してどのような施策を実施するのか計画を立てます。
計画を立てるときは、施策の評価タイミングや評価方法を一緒に検討すると、施策の評価がしやすくなるのでPDCAを効果的に回していくことができます。
施策例① 肥満解消
肥満者が多い、または増加しているなど肥満に関する課題に関しては、食事や運動に関する施策の検討や肥満者を対象に産業医、保健師や栄養士による保健指導を計画するとよいでしょう
(例)社員食堂や自販機のカロリー表示やメニューの検討
施策例② 若年層の血中脂質改善
若年層の血中脂質における有所見が多い場合、新入社員向け研修で入社時からアプローチや、健康だよりなど定期的に啓発活動を実施すると良いでしょう。
例)コンビニや外食時の食事の選び方を周知
施策例③ 喫煙率を下げる
喫煙者が多い場合、就業時間内禁煙、喫煙所の廃止、禁煙セミナーの実施、禁煙サポートプログラムの実施などが良いでしょう。
例)禁煙外来費用補助
5 まとめ
産業保健計画においてPDCAサイクルを回していくことは、産業医や保健師などの産業保健専門職の大きな役割のひとつです。
この産業保健計画は事業者と協力・連携をしながら同じ方向を向いて進んでいくことが求められます。企業側に提示する際は、目的や目標を明確化した上でデータ分析の結果等、定量的な数字を用いてグラフなどを使いながら表現すると伝わりやすいため、事業者に効果的にアプローチすることが可能となります。
効果的に産業保健活動を進めるため、適切に計画を立てて適正に評価をすることで、PDCAサイクルをより良いものにしていきましょう。
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投稿を表示産業保健師をしております。
データ分析に関するコラムにつきまして、見落としていたものもあり、
総まとめとしてUPいただき、誠にありがとうございます。
年度末の分析の時期でもあり、大変ありがたいです。
自前で行っておりますが、
ヒントを得ながら高めていきたいと思います。
※データ分析、PDCA、従業員へフィードバック等が生産性に繋がる健康経営として、
DXとしてシステムの予算がいつかとれたらなと。
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