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健康課題を「見える化」!健診結果を分析し、健康経営に活用する方法とは?

健康診断

産業保健活動や健康経営を推進するためには、健康課題を基に施策を検討し、実施・評価するといったPDCAサイクルを回すことが非常に重要と言われています。
企業や事業所の健康課題を見える化する上で必要不可欠なのが「健康診断結果」であるのはご存じのことと思います。

本記事では、企業や事業所などの集団において健康診断結果をどのように分析・活用できるのか、事例を踏まえてお伝えいたします

【目次】

1.はじめに
2.健康診断結果の分析方法
 ①分析方法
 ②分析項目
 ③クロス分析の活用
3.健康予防のための対策例
 ①具体的な施策の例
 ②ストレス状況や勤怠関連にも注意
 ③当社の実施例をご紹介
4.おわりに

1. はじめに

労働安全衛生法では、一般定期健康診断として、1年に1度労働者へ健康診断を実施することが事業者に義務付けられています。
健康診断は、病気の早期発見や労働者の健康意識向上などの労働者の健康維持増進といった目的を持っていますが、個人のみでなく企業においても重要な役割を担っており、健康診断の結果を用いて健康課題を見える化することは今後の産業保健活動を円滑に進めていく上では欠かせないとも言えます。
その一方で、結果の分析や活用に関して法的な取り決めがなく、実施方法や活用方法などは各企業や事業所へ委ねられている現状があります。

2. 健康診断結果の分析方法

健診結果の分析
近年健康診断結果のデータ化が進み、多くの健診機関でCSVでの健診結果受領が可能となっています。
健診結果をデータ化することで、数多くの健診結果を効率的に処理でき、集計・分析が容易になります。

① 分析方法

分析方法は、CSVをExcelで開き、ピポットテーブルやExcel関数(IF関数、VLOOKUP関数など)を用いて分析する方法があります。
また、予算に余裕があれば分析が行える健康診断システムの導入や、専門企業に依頼するのも良いでしょう。
健康保険組合の行う健康事業の一環として、被保険者の医療費や健診結果の分析を行っている場合もあり(データヘルス)、その結果を参考にすることも出来ます。

② 分析項目

分析する項目は目的によって異なりますが、性別や年齢など企業(事業所)の特性の他、肥満率、企業全体の有所見率に加え、検査項目ごとの有所見率を抽出する方法がお勧めです。
有所見とする基準値は医療機関・健診機関によっても異なりますので、どんな基準で分類するかあらかじめ決めておきましょう

その他にも、検査値の各判定の割合や、糖尿病や高血圧など生活習慣病の該当者(もしくは予備軍)の割合など、いろいろな視点から分析ができます。特定健康診査の問診票には、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の服薬の有無や、飲酒・喫煙・食事・運動・睡眠といった生活習慣の項目もありますので活用するのも良いでしょう。
※有所見率(%):異常所見がある人の割合(異常所見がある人の人数÷全体の人数)×100

分析項目 例

各項目を経年で比較することで、企業(事業所)の課題が明らかになってきます。
可能であれば過去数年遡って分析し、施策の前後で効果を検証するとよいでしょう。

また、厚生労働省が発表している「定期健康診断実施結果(年次別)」を用いて全国の有所見率と比較する方法もあります。ただ、企業内のデータとは有所見の基準や、母集団の年齢・性別などの属性が異なる事から一概に比較が出来ず、あくまでも参考という点に注意が必要です。

③ クロス分析の活用

更に詳細な健康課題を抽出したいときは、ストレスチェックの結果や生活問診、労働時間のデータ、エンゲージメント等を掛け合わせる「クロス分析」も効果的です。

どんな分析をしたいか、課題や目的を明確にしてから分析をすることで、より効果的・効率的な分析をすることが可能となります。

クロス 例

クロス分析例

例えば、「肥満の人は高血圧のリスクが高い」というような一般的な分析結果でも、事業所のメンバーにとっては「自分たちのデータ」として、重要な意味を持ちます。事業所の健康課題を説明したり対策を提案するときには、関係者の関心を引きつけるために、事業所のデータをうまく活用すると効果的です。

ただし、集計結果や分析結果を会社へ共有する場合は、個人が特定されないよう十分に注意する必要があります。

3. 健康予防のための対策例

健康課題が明らかになったら、どの項目に対してどのような施策を実施するのか計画を立てます。
計画を立てるときは、施策の評価タイミングや評価方法を一緒に検討すると、施策の評価がしやすくなるのでPDCAを効果的に回していくことができます。

① 具体的な施策の例

健康施策

施策例① 肥満解消 (長期目標5年、1年ごとに評価)
肥満者が多い、または増加しているなど肥満に関する課題に関しては、食事や運動に関する施策の検討や肥満者を対象に産業医、保健師や栄養士による保健指導を計画するとよいでしょう。
・社員食堂や自販機のカロリー表示やメニューの検討
・ウォーキングイベントの実施
・体重計の設置や配布
・トレーニングジムの割引や無料化

施策例② 若年層の血中脂質改善(長期目標3年、健診後面談の3か月後に評価)
若年層の血中脂質における有所見者が多い場合、新入社員向け研修で入社時から健康的な食事について情報提供したり、健康だよりなどで定期的に啓発活動を実施したりすると良いでしょう。
対象者を抽出して産業医、保健師や栄養士による保健指導を計画するのもお勧めです。
・社員食堂のメニューについて、食堂会社を交えて検討する
・コンビニや外食時の食事の選び方を周知
・簡単につくれる野菜レシピをお伝えする

施策例③ 喫煙率を下げる (長期目標10年、1年ごとに評価)
喫煙者が多い場合、就業時間内禁煙、喫煙所の廃止、禁煙セミナーの実施、禁煙サポートプログラムの実施などが良いでしょう。
・禁煙外来費用補助
・禁煙が成功した人やサポート者へインセンティブ贈呈
・希望者へ産業保健スタッフからの定期的なフォローアップ

② ストレス状況や勤怠関連にも注意

身体と精神は深いつながりがあり、健康診断結果の悪化がメンタル不調から現れている場合もあります。
健康診断時にストレス状況を把握できるように企業独自でストレスや勤務に関する問診項目を追加するのもよいでしょう。
また、ストレスチェックの結果や勤怠状況を基にクロス分析した内容で健康施策を検討することも効果的です。

③ 当社の実施例をご紹介

当社、株式会社アドバンテッジリスクマネジメントにおいても、健康診断の有所見率をはじめ、プレゼンティーズムによる生産性損失割合、プレゼンティーズム、ワークエンゲージメントをKPIとして設定し、2023年までに達成したい目標値を掲げてPDCAを回しています。
ARM健康経営

(株)アドバンテッジリスクマネジメントHPより

その他、従業員の健康増進に重点をおき、運動・食事・睡眠・禁煙の4つの指標を取り入れ、目標値を設定しています。
ARM健康経営

当社の各指標に対する取組み

1) 運動
■ウォーキングイベント「あゆみ」
開催期間中の平均歩数を専門アプリで計測、個人やチームで参加できるため社内コミュニケーション活性化にも繋がっています。
2) 食事
■生活習慣改善アプリ「カロミル」
画像解析技術より栄養素を数値化し、減量や食事管理のサポートをしています。
3) 睡眠
■睡眠問題解消アプリ「Advantage Sleep」
自社サービスである、認知行動理論に基づくアプリを使用し、睡眠の質の向上をサポートしています。
アドバンテッジスリープ

4) 禁煙カウンセリング
認知行動療法を活用し、当社カウンセラーと禁煙を目指します。

《各指標における数値目標》
ARM健康経営
当社は2年連続健康経営銘柄を獲得しております。これは、健康診断やストレスチェックより健康課題を抽出、課題に対し施策の検討、目標数値の見える化などPDCAを効果的に回してきたことが評価されている結果だと考えます。

4. おわりに

健康診断結果をもとに、従業員の疾病予防や健康増進に取り組むことは、個人だけでなく企業にとっても重要です。特に、これから健康経営を進めていきたい企業に関しては健康診断の分析は必要不可欠になってくるでしょう。
どのような会社にしたいのか、目的を明確にしつつ健康診断結果を有効活用してきましょう。

当社では、健診結果管理システム「アドバンテッジ ヘルスケア」を提供しております。健診結果のデータ化で、有所見者の集計・分析が簡単にできます。また、勤怠システムのデータと連携し、就業状況と健診結果を組み合わせた分析が可能です。
アドバンテッジヘルスケア

参考|健康経営の推進について

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作成:さんぽLAB 運営事務局 保健師
監修:難波 克行 先生

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