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【人材開発・組織開発】今さら聞けない!産業保健の用語解説

産業保健現場では臨床現場と異なる業務が多いため、聞き馴染みのない用語が頻出。ネットでいつも検索していた。でも答えが見つからない。なんて経験ありませんか?

そこで、「産業保健の用語解説」を作成しました。
今回は”人材開発・組織開発”に関係する用語のうち、産業保健スタッフが知っておくべきキーワードや使用頻度の高い用語に関して解説しています。
ご自身の学習/復習だけでなく、他の方への説明の際などにもご活用ください。

用語一覧


組織開発
アブセンティーイズム
プレゼンティーイズム
ハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
心理的安全性
EQ
仕事の資源
EAP
パルスサーベイ
eラーニング
1on1
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
KPI


組織開発

組織開発とは、企業風土や社員相互の関係性が、どのように個々の社員や集団のモチベーションに影響を与えるかなどのプロセスを調査し、分析結果にもとづいて組織を改善していくサーベイ・フィードバックの流れを汲んでいる施策の一つです。

組織開発はもともとアメリカで生まれた概念であり、英語ではOrganization Developmentと呼ばれます。




アブセンティーイズム

アブセンティーイズムとは、企業の生産性を測る指標の1つとされています。病気やケガで欠勤、または休職などで業務についていない(=明らかに職場や会社に居ない)状態をいい、健康経営に取り組む企業から年々注目が集まっています。

アブセンティーイズムを解消するためには、「心身症」や「生活習慣病」、「感染症・アレルギー」「メンタルヘルス不調」「運動器・ 感覚器障害」の予防・改善による健康の保持・増進が必要です。それらの課題の解決には健康意識の醸成をはじめとして、適切な食行動や運動習慣、効果的な休憩・睡眠やコミュニケーションなど様々な面からアプローチしていくことが重要です。

自社のアブセンティーイズム課題を把握し、効果的な施策を実行することで着実に健康課題は解決していくでしょう。またその取り組みを継続的に行っていくことで従業員の働き方が変化し、健康意識が高まっていくことも期待できます。




プレゼンティーイズム

プレゼンティーイズムとは、出勤しているのに心身の不調により十分なパフォーマンスが発揮できず、業務遂行能力や生産性が落ちてしまう状態のことをいいます。心身の不調には目のかすみ、頭痛、肩こり、腰痛などの症状が挙げられます。

プレゼンティーイズムにおけるパフォーマンスの低下の例としては、「思考力が低下する」「刺激に対する反応が鈍くなる」「注意する力が衰え、散漫になる」「動作が緩慢になる」などがあります。

プレゼンティーイズムは生産性や業績に影響する割合が大きいといわれており、生産性指標の1つとして活用されます。プレゼンティーイズムが高いということは、不健康である状態によって労働生産性が落ちている、と解釈できます。




ハラスメント

ハラスメント(Harassment)とは、相手の意に反する行為によって不快にさせたり、相手の人間としての尊厳を傷づけたり、脅したりするようなことであり、いわば「いじめ」「嫌がらせ」と同等の意味をもつ行為です。

たとえ、行為者に相手を「傷つけよう」「いじめよう」という意図がなくても、相手が不快な感情を抱けばハラスメントは成立します。

ハラスメントは職場だけでなく学校、地域社会、家族間でも発生します。どのような社会集団であっても暴力はもちろん、言葉や態度による嫌がらせ(嘲笑、噂の流布、大勢による無視)などはハラスメントに相当します。




モラルハラスメント(モラハラ)

モラハラ(モラルハラスメント)は、優越関係のあるなしに関わらず発生するもので、一般的に家庭内や恋人間で使われるケースが多く見られました。しかし、近年では職場におけるモラハラの考えも広がってきています。

モラハラは言葉や身振り、態度などにより相手に肉体的・精神的苦痛を与えることです。具体的には以下のような内容があります。

<モラハラの具体例>

・みんながいる前で過剰に叱責する
・本人に聞こえるように悪口を言う
・必要な連絡をしない
・仕事を与えない
など




ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

ジェンダーハラスメントは、性別を理由とする差別や嫌がらせのことです。性別によって異なる扱いや評価をして、社会的立場や役割を決めつける、不当な負担や苦痛を与えるなどの行為が当てはまります。たとえ無意識で、相手に良かれと思ってやった行為であっても、相手の受け止め方によってはハラスメントになり得ます。このように無意識のうちに生じる偏見は「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれており、ハラスメント問題を説明する際に扱われることが多いので覚えておきましょう。また、LGBTQに関する差別もジェンダーハラスメントに含まれます。

<ジェンハラの具体例>

・男女で呼び方が異なる(男性は名字に「さん」、女性は「〇〇ちゃん」)
・仕事を優先できる男性を管理職に置く
・男性に対して一方的に力仕事や残業を命じる
・お茶出しや掃除を女性にだけさせる
・同性愛をネタにした冗談を言ったり、からかったりする
など




心理的安全性

心理的安全性(psychological safety)にはいくつかの定義がありますが、最も有名なものは、ハーバード大学のエイミー・エドモンソンによる以下の説明です。

「人間関係においてリスクのある行動をとっても安全なチームだという信念が共有されていること」

「人間関係においてリスクのある行動」には、思ったことを言い合う、懸念を口にする、高度なフィードバックを依頼するといったものがあります。
また、「安全なチームだという信念」を形成するためには、メンバーの発言に対する反応として、恥ずかしい思いをさせず、拒否せず、罰を与えることをしないことが重要になります。

メンバーが遠慮なく意見を出せると誰もが感じられるようなチームの風土づくりが心理的安全性には必要です。
このような心理的安全性のあるチームは、エンゲージメントやパフォーマンスなどが高くなることが想定され、多くの研究をまとめた分析においても一定の相関が示されています。




EQ

EQとはEmotional Intelligence Quotientの略称で、「感情をうまく管理し、利用できる能力」を指します。EQは、IQ(Intelligence Quotient=知能指数)に対する概念として「こころの知能指数」や「感情知性」と呼ばれ、ビジネスシーンにおいて必要となる対人コミュニケーションの基礎能力といわれています。

メンタル不調の多くが対人コミュニケーションの問題に起因することから、個々人のEQを向上させることがメンタルヘルスに関する問題の根本解決につながるものとして、その重要性が唱えられています。

EQは下記の4つの能力から構成されています。
① 感情の識別:自分と他者の感情を認識する能力
② 感情の利用:ふさわしい行動を取るために感情を活用する能力
③ 感情の理解:自分や他者がそのような感情を得た原因や、その後の感情を推察する能力
④ 感情の調整:次の行動に合わせて、自分の感情を調整する能力

これらの能力が高いこと、またそれぞれのバランスがいいことが、EQを適切に機能させる秘訣です。




仕事の資源

仕事の資源とは、企業や組織において、従業員が業務を遂行する際に必要な様々な要素や支援体制を指します。これは、物理的なものから人的なものまで多岐にわたり、効率的で生産的な仕事環境を構築し、従業員のパフォーマンスや幸福感を向上させるために欠かせない要素となっています。

人的資源

組織内の従業員やリーダーシップといった、人に関する資源を指します。組織は適切な人材を確保し、トレーニングや開発プログラムを通じて従業員のスキルや能力を向上させることで、生産性を向上させることができます。

物理的資源

オフィスや生産施設、ツールや機器など、物理的な環境のことを指します。適切な設備やハードウェアが提供されることで、効率的な業務遂行が可能となります。

情報の資源

仕事において正確かつ適切な情報が利用可能であることは重要です。情報の流れがスムーズで透明性があり、必要な情報に迅速にアクセスできる環境が整っている必要があります。

時間

時間は限られた資源であり、適切に管理される必要があります。タスクの優先順位を考慮し、適切な時間配分を行うことで、生産性向上やストレスの軽減が期待できます。

精神的・感情的サポート

仕事環境においては、従業員のメンタルヘルスや感情的な安定が重要です。上司や同僚との良好なコミュニケーションや、ストレス管理のためのサポートが「仕事の資源」として機能します。

これらの資源が整備されているかどうかは、従業員のモチベーションやエンゲージメントにも影響します。組織はこれらの要素を適切に管理し、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境を構築することが求められています。産業保健スタッフとして、従業員の健康と安全を確保し、働きやすい環境をサポートすることが重要となるでしょう。




EAP

EAP(従業員支援プログラム)とは、従業員のメンタルヘルス対策から、職場や家庭、個人におけるあらゆる問題の解決を支援するプログラムです。

近年、労働人口の減少による人手不足で従業員に過度な業務負担がかかりやすくなるなか、終身雇用や年功序列といった日本型雇用から、成果主義の欧米型雇用への移行を検討する企業が増加傾向にあります。労働環境が大きく変化する現代社会において、ストレスやプレッシャーが原因となる従業員のメンタル不調のリスクはますます高まっていると考えられます。

従業員が慢性的なストレスを放置すれば心身の不調の原因となり、疾病の発症や長期欠勤、離職につながるおそれがあります。ストレスチェックやカウンセリング 、必要に応じて医療機関への受診推奨などをおこなうEAPは、従業員が抱える不安や悩み、ストレス環境を早期発見し、改善を支援できる有効な施策といえるでしょう。




パルスサーベイ

パルスサーベイとは、従業員の満足度を調査するための意識調査のひとつです。パルス調査という名称で呼ばれることもあります。

週に一度、月に一度など、脈拍(パルス)のように短期間で調査を繰り返し行うため、従業員の負担が少なく済むよう、調査はアンケート形式で、設問数は5~15問程度、内容は数分程度で簡単に回答できるようになっています。




eラーニング

eラーニング(e-Learning /イーラーニング)とは、主にインターネットを利用した学習形態のことです。受講者はパソコンやタブレット、スマートフォンを使って学習を行うのが一般的です。

eラーニングには、従来の集合研修にはない「自分のペースで進められる」「時間や場所に縛られない」などの特長があります。




1on1

1on1ミーティングのことで、上司と部下が定期的に1対1で話し合うことをいいます。
昇進時の面談や評価面談など、半年あるいはそれ以上の期間に一度程度行われる面談と異なり、15~30分程度の短い時間で、週に1回、月に1回と短いスパンで定期的に実施されるものを指します。

従来との面談的な意味合いの面談に比べ、上司が部下の成長をサポートするための時間と捉え、社員を成長させるための手段として実施する企業が増えてきています。




ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)

ACT(アクト)とは、Acceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の略称で、認知行動療法の中の1つの心理療法です。元々は心理療法やカウンセリングにおいてメンタルヘルスの問題に対し用いられていましたが、近年ではACTトレーニングとして健康な人々への教育などでの活用も盛んになっています。

ACTでは、心理的柔軟性と呼ばれる行動的側面を増やしていくことで、自分の行動を妨げる思考や感情にとらわれることなく、いきいきした生活を送ることを実現しようとします。具体的には、セラピストとの会話や自身の日常での実践を通じて、「いま、この瞬間」自分の中にある思考や感情を受け容れながら(アクセプタンス)、自分自身が大切にしたい価値に向かって行動パターンを作り上げる(コミットメント)ことを目指します。欧米の有名 IT 企業でも取り入れられている「マインドフルネス」の方法も使いながら、行動変容を促す手法として注目されています。

ACTの様々な問題に対する効果は、多数の研究をまとめたメタ分析をさらに20件レビューした論文によっても明らかにされています。また産業領域においてもさまざまな研究と実践が行われつつあり、生産性やウェルビーイングの向上との関連が示されてきています。したがって、ストレス対処のセルフケアをはじめ、生活習慣の改善や職場の安全教育、キャリアやリーダーシップ開発等にも活用が期待されています。




KPI

KPI(Key Performance Indicator)はビジネス目標における評価基準の1つです。
会社組織の戦略的目標に対する進捗を定量的に測定する事で、今後の意思決定の参考情報になります。また、具体的な数値や指標を用いて業績やプロセスの健全性を把握することで改善の方向性を見出せます。目標値と達成率などのバランスが取れるKPI体系を構築し、組織の成果をモニタリングしていくことで、戦略達成に向けた進展状況を追跡し分析することができるようになります。




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