過重労働
1.過重労働とは
過重労働とは、長時間労働や休日労働、不規則な勤務などが原因で、労働者の心身に大きな負担がかかる状態のことです。例えば、残業時間が月100時間を超えたり、2~6か月平均で月80時間を超えたりすると、過労死のリスクが高まります。1日換算すると、20日出勤の場合、1日4時間の残業が目安です。一方で、労働基準法第36条に基づく36協定(サブロク協定)により、労働時間を超えて働かせたり、休日労働させたりする場合には、労働者との間で取り決めを行うことが義務付けられています。しかし、この協定にも上限があり、原則として1か月45時間(年6か月まで)、1年間360時間の延長が限度です。2019年4月から大企業、2020年4月から中小企業において、この上限が定められ、以前のように残業時間が無制限になることを防ぐ対策が強化されました。
2.過重労働の対策
労働者の身体的、精神的な負担を軽減するため、事業者、産業医、産業保健師が連携して対策を講じることが重要です。
<事業主が行うべき対策>
労働時間管理の徹底
労働時間計測システムの導入、タイムカードの厳格な管理、残業時間の見える化、上限設定と超過時のアラート機能の活用、繁忙期・閑散期別の労働時間変動分析に基づいた柔軟な勤務体制の構築など。
休暇取得の促進
年次有給休暇の取得状況の定期的な確認と未取得者の個別指導、リフレッシュ休暇制度の導入、バースデー休暇や結婚記念日休暇などの特別休暇制度の検討、上司が率先して休暇を取得し、部下にも休暇取得を奨励する風土づくりなど。
業務の効率化
業務プロセス分析による無駄な作業の洗い出しと改善、ITツールの導入による業務効率化、業務委託やアウトソーシングの検討、従業員への業務負担に関するアンケートの実施と改善策の検討など。
職場環境の改善
人間関係改善のための研修(コミュニケーションスキルアップ、ハラスメント防止など)、適切な照明、温度、騒音レベルの維持、緑化や休憩スペースの設置による心理的なゆとりの創出など。
健康増進プログラムの導入
運動習慣の促進、健康的な食事に関する情報提供、禁煙支援など、社内イベント(ウォーキング大会、健康診断キャンペーンなど)の実施など。
<産業医が行うべき対策>
健康診断結果の分析とアドバイス
労働者の健康状態の長期的な推移を把握し、早期に健康問題を発見し、その原因を労働環境との関連性から特定して改善策を提案したり、生活習慣病のリスクが高い労働者に対して個別指導を行ったりします。
ストレスチェックの実施と対策
ストレスチェックの結果に基づき、高ストレス者への個別相談、ストレスの原因となる要因の特定と個々の労働者に合わせた対応策の提案、部署全体のストレスレベルを把握した組織全体のストレス低減策を検討します。
メンタルヘルス対策
うつ病や不安障害などのメンタルヘルス問題への早期対応、EAP(従業員支援プログラム)の導入など。
労働能力評価
労働能力の客観的な評価に基づいた業務配分や休養時間の調整など。
<産業保健師が行うべき対策>
健康相談への対応
労働者の健康に関する悩みや不安に寄り添い、適切なアドバイスを提供したり、具体的な行動変容を促すための支援を行ったりします。
職場巡視
職場環境の安全衛生に関する問題点の発見と改善、労働者の作業姿勢や動作の観察による健康リスクの早期発見など。
健康教育
健康に関する知識や情報を提供し、従業員の健康意識を高め、生活習慣病予防のための具体的な行動変容を促します。
メンタルヘルスサポート
ストレスを抱えている労働者への傾聴と心のケア、自殺予防対策など。
職場復帰支援
病気やケガから職場復帰する労働者への支援、職場環境の調整など。
事業主、産業医、産業保健師は、月1回以上の衛生委員会を開催し、すべての労働者の労働時間の状況を把握し、働きやすい環境整備に取り組む必要があります。○○週間や○○月間などのテーマを設定し、健康に関する周知活動を行うことも効果的です。