過重労働対策~事業所に求められる取り組み、疲労の蓄積が心身に与える影響について解説
過重労働は、労働者の心身の健康と事業所の持続性に深刻な影響を与えます。
しかし、過重労働をなくすことは簡単なことではありません。
今回は、過重労働対策において事業所に求められる取り組み、過重労働がもたらす健康問題や社会的責任、そして産業医による面接指導の重要性について、わかりやすく解説します。
【目次】
1.過重労働対策とは~事業所に求められる役割
2.過重労働がもたらす問題~心身の健康や事業所に与える影響
3.産業医による面接指導とは
1.過重労働対策とは~事業所に求められる役割
過重労働とは、法令などで明確に定義されている言葉ではありませんが、「長時間にわたる労働」や「身体的・精神的に負担の大きい労働」を指します。
過重労働対策は、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することを目的としています。
過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下4つの項目について、事業者が講ずべき措置が定められています。
- 時間外・休日労働時間等の削減
- 年次有給休暇の取得
- 労働時間等の設定の改善
- 労働者の健康管理に係る措置の徹底
過重労働対策は、法的背景を理解し、人事担当者、管理監督者、そして産業保健専門職といった関係者が連携し、支援を行うことが重要です。
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2.過重労働がもたらす問題~心身の健康や事業所に与える影響
それぞれの事業所では、過重労働を減らすために、さまざまな取り組みがなされていると思います。ですが、過重労働を減らすことは簡単ではありません。
過重労働は、私たちの健康や働き方にどのような影響を与えているでしょうか。
健康に与える影響として、脳・心臓疾患(くも膜下出血や心筋梗塞など)が増加すると考えられています。また、心身の疲労は精神疾患の発症や経過にも悪影響を与えることが知られています。
そして、事業所へ与える影響もとても大きいと言えます。過重労働により労働者が健康を崩した場合、労働者に対する安全配慮義務違反を根拠として、事業所に法的責任(労災や民事賠償)が発生することがあります。
問題が起きてから対処をするのは、かえってコストが高くことが多いです。労働時間が長くなると集中力が低下し、かえって生産性が低下します。
過重労働がもたらす影響について理解し、早期に対策を実施していきましょう。
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3.産業医による面接指導とは
労働者の健康被害を防ぐため、労働安全衛生法では、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に対し、事業者は医師による面接指導を実施しなければならないこととされています。
面接の結果、残業制限などが必要と判断された場合には、産業医の意見書を元に適切な対応をする必要があります。
2019年4月施行の改正労働安全衛生規則により、面接指導の基準が見直され、
労働者の週40時間を超える労働が1か月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受け、事業者は医師による面接指導を行わなければならなくなりました。
また、時間外労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者がいた場合、事業者は産業医に対して情報提供をすることが規定されました。
情報提供にあたっては、「労働者の勤務状況」「労働者の疲労蓄積の状況」「労働者の心身の状況」が確認できるように連携を取ります。
面接指導の対象者には、面接指導対象者となった旨を通知し、事前に問診票や疲労蓄積度チェックリストを配布し、記入してもらうと面談をスムーズに実施することができます。
事業者は、問診票や疲労蓄積度チェックリストの回答と健康診断の結果や過去の労働時間、既往歴や現病歴、業務内容等の労働者本人についての情報を産業医に提供しましょう。
面接指導を実施した医師の意見に基づき必要と認められる場合には、事業者は事後措置を行わなければなりません。
(事後措置の具体例)
- 就業場所の変更や作業の転換
- 労働時間の短縮や深夜業の回数減少などがあります。
過重労働の実態や事後措置の内容については、個人が特定されないよう配慮したうえで衛生委員会への報告し審議することも重要です。
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