公益社団法人日本産業衛生学会では、2000年に「産業保健専門職の倫理指針」が制定され、長らく産業保健専門職の一般原則とされてきました。第1版の制定から20年以上が経過し、働き方改革や技術革新、多様な労働者への配慮など、産業保健を取り巻く状況が大きく変化していることから、近年指針の見直しの機運が高まり、学会の「100周年ミッションと重点活動」の基盤事項として改定作業が行われ、2025年5月14日の学会総会にて承認、6月4日に「産業保健専門職の倫理綱領」の改定が発表されました。こちらの倫理綱領は、産業保健専門職が品位を保持し公正かつ高度の専門性をもって職務の推進に努めるための倫理上の行動規範が示されています。 主な変更点とポイント①「指針」から「綱領」へ名称が「指針」から「綱領」に変更され、産業保健専門職の専門的活動に関する倫理上の一般原則(行動のガイドライン)から、今回の改定により倫理上の行動規範(理念や価値観)がより明確になりました。②産業保健専門職の役割前文にて、産業保健専門職とは、働く人々を支援する産業保健活動に従事する専門家であり、専門性と独立性を保ち、職業倫理に基づき職務を遂行する責任がある事や、全ての働く人を対象とし健康と安全な職場環境の確保、健康状態に配慮しながら職場への適応をサポートをする必要がある事、職務には生命の保護や人権の尊重など倫理原則の推進が含まれ、多職種が専門性を尊重し連携する事などが明記されました。また、「産業保健専門職の立場」として、具体的に求められる役割についても引き続き記載されています。③学術活動今回「学術活動」として項目を新たに、産業保健専門職として得た新たな知見(予防法、健康管理、健康増進の方法など)を、学会などで公的に報告する必要性について明記されました。④多様性、公正性、包摂性の尊重産業保健の現場でも、時代の流れに応じて外国人労働者や障碍者、LGBTQなど、働く人の多様性に配慮する必要性が高まっています。産業保健専門職は全ての働く人が健康で安全に働くことが出来るよう支援するため、今回「多様性、公正性、包摂性の尊重」として項目が新設されました。年齢、性別(ジェンダー)、社会的地位、民族的背景(人種)、政治的・イデオロギー的、宗教的意見、健康状態などに関わらず、公正に関わる必要性が明記されています。 今回の改定により、産業保健専門職が現代の多様な職場環境や社会的ニーズに柔軟に対応し、専門職としての信頼性と社会的責任が一層強化されることが期待されます。 詳細は日本産業衛生学会公式サイトをご覧ください。 一緒に見たいコンテンツ