産業保健におけるデータをどのような場面で活用したい?【産業保健スタッフの投票結果から】
はじめに
産業保健の現場では、健診結果、ストレスチェック結果、休職・復職の記録など、さまざまなデータを日々扱っています。これらのデータは、単に管理するだけでなく、「どの場面でどう活用するか」によって、企業の健康課題の可視化や施策の質の向上につながります。
今回は、産業保健スタッフの皆さまに「産業保健におけるデータをどのような場面で活用したいか」について投票いただきました。現場でのニーズを反映した結果をもとに、活用が期待されるシーンと今後のヒントを整理します。
投票結果(概要)
期間: 2025年11月8日〜11月14日
投票数: 45票
結果
- 健康診断結果の分析による健康施策への活用:56%
- ストレスチェックデータの分析結果を活用した職場環境改善:24%
- 休職・復職データを活用した企業課題の可視化・分析:20%
- その他:0%

各項目の傾向と活用のヒント
健康診断結果の分析による健康施策への活用(56%)
最も票を集めたのは、健診結果を分析して施策に反映したいという回答でした。
有所見項目の傾向や年代別の特徴を整理することで、職場の健康上の課題や傾向が把握しやすくなります。
また、血圧・脂質異常・肝機能などの有所見率を経年で比較すると、職場の健康状態の推移や施策の効果、重点的に取り組むべき領域が見えてきます。
活用のヒント
- 健診結果の有所見率を年次で比較し、健康課題の変化や傾向を把握する
- 生活習慣に関する問診結果など、関連データとあわせてクロス集計する
- データ分析をフォーマット化し、集計作業を効率化する
ストレスチェックデータの分析結果を活用した職場環境改善(24%)
次に多かったのは、ストレスチェック結果を職場環境改善に結びつけたいという希望でした。
「結果は届くものの、改善策にどうつなげればいいかわからない」という声が多く、”集団分析結果の活用”や”職場環境改善へつなげること”が課題になっています。
活用のヒント
- 集団分析の結果を安全衛生委員会や経営会議等で共有し、経営層の理解と後押しを得る。
- 取り組みはスモールステップで開始し、無理なく改善を積み重ねる。
- 社員向けにストレスチェックの仕組みと活用方法を学ぶ勉強会を実施する。
- 外部専門家に分析結果の解釈や改善策の助言を依頼し、客観的な視点を取り入れる。
休職・復職データを活用した企業課題の可視化・分析(20%)
休職・復職に関するデータを、休職理由や休職期間、復職後の勤務状況、再休職の有無などとともに体系的に蓄積することで、職場における休職・復職プロセスにおける課題や傾向が把握しやすくなります。
その結果、復職支援体制の見直しや、より効果的な支援フローの整備に生かすことができます。
活用のヒント
- 休職理由・期間・再休職率などの基礎データを集計し、年度別で比較する
- 職場復帰支援プロセスの進行や達成状況(面談タイミングや頻度)を記録し、支援の効果や課題を可視化する
今後の展望
産業保健領域で扱うデータは、記録としてデータを蓄積するだけでなく、日々の記録を集計し、集団分析を行うことで「組織全体で健康課題を把握し、改善につなげる仕組み」へと変換ができるようになります。データの活用を効果的に行い、確かな根拠に基づく健康管理を進めていくことが重要です。