復職支援プラン作成のポイント~業務調整からフォローアップまで詳しく解説
在宅勤務制度を活用して職場復帰支援をする際に、どのように復職支援プランの作成をしていますか?主治医からの診断書の取り扱いや、人事担当者、管理監督者との連携を進める上で、どのような手順で実施すればよいか迷うことがあるかもしれません。
今回は、復職支援プランを作成する際のポイントについて詳しくご紹介します。
※本記事は2022年11月24日に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
▶④復職プラン作成のポイントまとめ【職場復帰支援勉強会】
【目次】
1.復職支援プラン作成のポイント~業務調整
2.復職支援プラン作成のポイント~フォローアップ
3.メンタルヘルス不調の復職支援と在宅勤務
1.復職支援プラン作成のポイント~業務調整
復職支援プランを作るポイントについて詳しく説明したいと思います。
1つ目は、主治医の診断書にそのまま従わなければいけないというわけではないという話です。診断書に「週5日の在宅勤務」や「今の職場から異動させることが望ましい」といった内容が書いてあり、どうするか悩む場面があると思います。
主治医の診断書は、あくまで参考意見の1つです。最終的な決定は、社内で対応できる範囲で行うというのが、基本的な考えになります。会社によっては通常のルールの範囲外のことはやらないというパターンもあります。また、少しは柔軟に運用するというスタンスの会社もありますので、その点は社内の状況で変わってくるかと思います。
次に、こちらが一番大事なポイントとなりますが、雇用契約で定めるルールの範囲を超えた配慮を行うときには、最長で12ヶ月、といった具体的な期限を設けて、それを超えたら、自動的に通常のルールに戻すというのが非常に大事です。
例えば、復職の時に所定労働時間未満の勤務から始めるという制度を持っている会社があります。本来は1日8時間の勤務だけれど、特別に4時間、6時間に短縮し、徐々に勤務を延ばしていくという具合です。
体調の回復に合わせて徐々に調整していく運用で、期限を決めずに運用している場合がありますが、メンタルヘルス不調の回復のスピードというのは、個人差が非常に大きく途中で回復が少し止まってしまうケースがあります。
このようなケースと先ほどの条件が重なると、復職して半年、1年経過したけれど、まだ1日8時間の勤務に至ってない、ということが起きてしまいます。同時に、所定労働時間の勤務ができない人を半年も1年も働かせてよいか、という話が出てきます。
リスクを考慮すると、所定労働時間未満の勤務という形で、雇用契約の範囲を超えた調整を行う場合は、なるべく短い期間で制限をかけて、それを過ぎたら通常の運用に戻すという運用ルールにしておくと困らないと思います。
その期限を超えても、通常に働けないという方は、もう1度再休業してもらうというルールにしておくと、このような場面が起きにくく、担当者が困る場面が減るかと思います。
2.復職支援プラン作成のポイント~フォローアップ
次に、在宅勤務で復職する場合は、社員が自宅にいるので、上司の体調管理がなかなか難しいという場面もあります。そういう時は、なるべく下記の例のような工夫をしていただきたいです。
例)
- 業務開始時、終了時に業務内容や体調を報告してもらう
- 週に1回は上司と面談をしてもらう
- 復職後も継続して生活記録表をつけてもらう
こちらは、自分の会社でも実施しておりますが、生活リズムが乱れやすいからということで復職後も生活記録表の記入をしばらく続けてもらい、産業医面談の時に持参してもらうということをしています。
また、面談の頻度を、通常は月1回ですが2週間に1回に増やして、落ち着くまではフォローするということで少し接点を増やして対応するといった工夫ができるかと思います。
こうした調整ができたら、必要に応じて主治医にも確認するというステップを次に取ります。ここで、会社が作ったプランというのは主治医の意見通りになっていなくても大丈夫です。
例えば、社内で最大限に検討しても在宅勤務はなしで復職してもらう、その代わり職場ではこういう調整を行います、というような計画でも構いません。
主治医には社内で検討した結果、こういったプランを作ったのですが、
「このプランで今復職しても大丈夫でしょうか」
「今無理だったらいつ頃からなら大丈夫でしょうか」
「他に注意することはありますか」
という具合で、主治医の判断について改めて質問するという形にします。
もし、復職して良いという話でしたら復職の手続きを進めればいいですし、そうでなければ、しばらくお休みを継続していただいて、こちらのプランで復職できるようになるまでは回復に専念してもらうやり方があります。
ここまで生活記録表を使って復職の可否、体調の確認をしました。そして、半年間の復職のプランを作って必要に応じて主治医からもOKをもらったというステップが全部OKだったら、最終的に会社としても復職可と判断して良いかと思います。
この方法は、在宅勤務に限らず、職場復帰の調整や判断が難しいケースでも使える共通のテクニックです。状況に合わせて応用してください。
3.メンタルヘルス不調の復職支援と在宅勤務
ここまで在宅勤務制度についてお話をしましたが、運用が始まったばかりの企業も多いのではないかと思います。これからいろいろな場面に遭遇して困ることもあるのではないかとは思いますので、ここで、内容を整理します。
在宅勤務を行う場面でも職場復帰の可否については出社と同じような基準で判断をします。生活記録表を使って外出練習をしてもらって判断をしましょう。基準を変えないので、再発する人がそう増えないだろうというのが現状の私の考えです。
主治医から在宅勤務だったら復職して良いという診断書が届いても、それをどうするかはあくまでも社内のルールの中で運用するので、実施可能なプランを作って主治医に確認するというようなステップを踏んで調整すれば大丈夫です。
職場復帰後の体調管理については、上司や産業保健スタッフとの接点を増やして、こまめに確認するという対応をとっていくことがポイントです。
在宅勤務と職場復帰支援についてお話をしてきましたが、今後いろいろな事例が出てきてノウハウがどんどん溜まってくる部分かと思います。ぜひ皆さんもご自身の経験を社内の関係者や他の事業所の産業保健スタッフ、また社外の関係者とも情報共有していただけると良いかと思います。
そういう時には、さんぽLABの「お困りごとQ&A」も活用いただけると嬉しいです。
講師
難波克行(産業医, 労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』