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健康経営にも活用!睡眠障害改善に向けた6つのアプローチ

健康経営にも活用!睡眠障害改善に向けた6つのアプローチ

近年、多くの企業が健康経営に取り組んでいます。健康経営を意識して活動されている産業保健スタッフも多いことと思います。
特に「睡眠」は健康経営優良法人の調査票の評価にも影響する大切な要素です。従業員の睡眠不足や睡眠障害を改善は健康経営の成功の鍵となります。

本記事では、健康経営の中での睡眠の位置付けと、睡眠改善のアプローチについてお伝えいたします。

目次

1.健康経営おける睡眠の位置づけ
2.睡眠不足や睡眠障害の影響
3.産業保健スタッフが取り組む6つのアプローチ
4.会社として導入できる睡眠改善にむけたアプローチ
5.まとめ

1 健康経営おける睡眠の位置づけ

我が国では、居眠り運転や業務上の事故など睡眠が原因で生じる経済・社会的損失は年間数兆円にも及ぶとも試算されています¹)。さらに、睡眠や休養の不足による年間のプレゼンティーイズム損失コストは、アルコール摂取に次ぐ大きな問題になっています。

実際、睡眠不足は集中力や注意力の低下等、生産性やパフォーマンスの低下に大きく関連している状況です²)。さらに、経済産業省が発行する『健康経営ガイドブック』の評価指標には、特定保健指導の問診で評価できる「睡眠・休養」における項目が含まれており、
健康経営を推進していく上で“睡眠課題の解決に取り組むこと”は不可欠です。

2 睡眠不足や睡眠障害の影響

睡眠不足や睡眠障害の影響
慢性的な睡眠不足や睡眠障害は、記憶力低下や認知機能の低下、意欲低下などの精神機能のリスクだけでなく、自律神経やホルモン分泌にも影響があることが知られています。
また、糖尿病や高血圧、心血管疾患などの生活習慣病に陥りやすいことが明らかになってきました。¹)

■肥満

睡眠と肥満度には、密接な関係があるといわれています。
睡眠不足は、食欲が増進するホルモン「グレリン」が亢進し、逆に食欲を抑えるホルモンである「レプチン」は減少します。そのため、食欲が増強し肥満に繋がります。¹)

■心血管疾患

睡眠不足は高血圧や心筋梗塞など心血管疾患のリスクを高めると言われています。
日本の男性労働者を対象にした研究によると、1日の睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上8時間未満の人に比べて4.95倍リスクが上がると報告されています。³)

■糖尿病

不眠症状のある人は肥満リスクや自律神経の乱れ等により糖尿病のコントロールが悪化することが知られています。¹)
また、糖尿病になるリスクは、良眠している人の1.5倍~2倍であるといわれ、また、糖尿病専門外来受診者の約40%は睡眠障害を有していることが報告されています。⁴)

■精神疾患

うつ病患者の多くは睡眠障害を併発していると言われていますが、睡眠障害が精神疾患の発生要因となるリスクも報告されており、睡眠と精神疾患は相互に作用しています。⁵)

■睡眠と生産性の関係

睡眠は、脳と体の疲労を回復させるために欠かせません。疲労が蓄積していくと、集中力や記憶力、注意力などが低下し、結果として業務のパフォーマンスが悪化します。
つまり、プレゼンティーイズムの問題につながります。したがって、従業員の睡眠の問題に取り組むことは、経営やコストの観点からも非常に重要であるといえます。

3 産業保健スタッフが取り組む6つのアプローチ

産業保健スタッフが取り組む6つのアプローチ

「企業における睡眠の改善」に向けて具体的にどんなアプローチ方法があるのか、ご紹介したいと思います。
目的や対象者によって使い分けることができると効果的です。

① 課題の明確化

産業保健スタッフは、職場の課題を特定し、それをもとに従業員の健康増進につなげたり、現状をフィードバックするのが重要な役目です。
具体的なアプローチとしては、特定健康診断の問診票の分析や、職種、事業所、年齢、交代勤務対象など別にアンケート調査を行うことが効果的です。

② Eラーニング

いつでもどこでも受講できるため、受講のハードルが下がります。テストの実施も可能なので、受講者の理解度を実施側が確認することもできますし、見直したいときに見直すといった復習学習にも活用できます。

③ 健康講話

衛生委員会や、その他従業員が集まる機会に実施します。オンライン、対面等実施方法はその時に応じた形で実施可能です。
参加者同士の意見交換を実施したグループワークも可能なので、深い学びが期待できます。

④ 啓発資料

リーフレットや保健だより、掲示物、社内ポータルサイトでの情報提供等の方法があります。目につくところに掲示したり、配布したりすることで従業員が気軽に情報収集が可能です。

⑤ 保健指導やカウンセリング

特定保健指導の問診やアンケート等で対象者を抽出して睡眠に問題を抱えている従業員へ直接アプローチすることができます。
自覚症状がすでにある対象者に対して個別でアプローチをすることができる為、効果が高いでしょう。

⑥ 受診勧奨(睡眠時無呼吸症候群や精神疾患など)

睡眠障害により、日常生活や仕事に影響が出ている場合は、専門医に相談することがおすすめです。
受診することで、薬を使用したり、症状にあわせたアドバイスを受けたりすることができ、睡眠障害を効率よく改善することが可能となります。

また、睡眠障害の原因として、他の疾患が隠れている場合もあります。精神疾患における症状の一つとして睡眠障害が出ていることがあるかもしれません。
更に、夜間のいびきや寝起きの頭痛、睡眠時間を十分にとっているにも関わらず日中眠いといった場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性も考えられます。

4 会社として導入できる睡眠改善にむけたアプローチ

会社が導入できる睡眠改善にむけたアプローチ

① 仮眠制度の導入

短時間の仮眠は、仕事のパフォーマンスを向上させるといわれています。
短時間の昼寝を、『パワーナップ』といい導入している企業も増えています。
パワーナップとは、12時から15時に、15~30分の睡眠をとることで、コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マースが広めたものです。

②仮眠スペースの確保

従業員が必要なときに仮眠をとれるよう、事業所内での仮眠スペースの確保や、空いた会議室やリフレッシュスペースを活用することを周知するのも良いでしょう。

③睡眠アプリの活用(睡眠記録)

睡眠について、自覚症状だけではなく、客観的に 確認するツールとして、アプリは効果的です。記録をすることで、自身の行動パターンと睡眠の状態を可視化できます。
また、アプリから睡眠のほしい情報を取得するなど、自分の状況にあわせた情報収集を気軽にできるなどのメリットもあります。

会社としては、睡眠アプリによる従業員のデータを、社内で分析に活用することもできます。睡眠を可視化したものを、健診結果や残業時間、職種等と組み合わせて分析することで、事業所の課題に合わせたアプローチ方法を職場と一緒に考えていくことで、ニーズにあった施策の実施が期待できます。

5 まとめ

21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)では「栄養・食生活の管理」「身体活動・運動」「禁煙・節酒」などと並んで「十分な睡眠の確保」に取り組んでおり、睡眠障害もまた生活習慣病のひとつと考えるべきという考えが広がりつつあります。

睡眠不足や睡眠障害は、一過性に仕事のパフォーマンスを下げるだけでなく、新たな健康障害の原因に繋がります。また、睡眠は毎日の生活と大きく関わりがあり、睡眠障害の改善は、従業員にとっても満足度の高いものになるでしょう。

睡眠課題の改善に職場として取り組むことは、従業員の健康増進や、プレゼンティーイズムの改善に非常に効果的です。職場の睡眠状況を把握し、会社と連携し睡眠改善の取り組みをぜひご検討ください。


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また、従業員が睡眠状況を記録できるため睡眠状況のセルフモニタリングが可能となります。
さらに、会社として従業員の睡眠状況を可視化できるため、データ分析することで、健康課題の抽出や健康施策に活かすことができます。

アプリ導入で、従業員の健康増進のみでなく健康経営の施策のひとつとしてご検討いただけますと嬉しいです。

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■作成:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■監修:難波 克行 産業医

参考文献:
1)睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
2)企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)
3)健康づくりのための睡眠指針の改訂について|厚生労働省
4)清水夏恵~糖尿病患者の睡眠障害について~
5) Ohayon MM, Roth T. Place of chronic insomnia in the course of depressive and anxiety disorders. Journal of psychiatric research. 2003;37:9-15.

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