分析って必要?産業保健の現場で「データ分析」を勧める3つの理由
毎年労働基準監督署へ提出する健康診断結果報告書では集計しているものの、問診項目とクロス分析をしたり有所見項目の経年変化を確認したりと、健康課題を抽出する詳しい分析まで手が回らない現場もあるのではないでしょうか。
また、健康診断結果の分析の他、健康施策の定量的な評価など、産業保健の現場におけるデータ分析は「やり方が分からない」「時間がない」といった意見も多く、労力や費用もかかるため、後回しになってしまいがちです。
しかし、データ分析は産業保健計画の立案や評価など、健康経営や産業保健活動を進める上で非常に重要といえるでしょう。
本記事ではデータ分析のメリットや活用方法についてお伝えいたします。
【目次】
1.データ分析とは
2.データ分析を勧める3つの理由
3.データ分析の方法
4.おわりに
1. データ分析とは
データ分析とは、その名の通り「収得した様々なデータを分析」することを言います。
「産業保健におけるデータ」は、主に健康診断の結果や生活習慣に関する問診、ストレスチェックの結果、エンゲージメントの評価、勤怠情報、健康施策で得た情報(セミナーやイベントの参加率や満足度、生活習慣改善の継続率等)、事後措置に関する情報(二次検診受診率、保健指導件数、診断区分や就業区分の件数等)などが挙げられます。
健康診断やストレスチェックの結果に関しては、健康課題の抽出や集団分析などで分析し活用できている企業も多くありますが、分析システムを導入しておらず、Excel等を用いて手作業で集計・分析されているといった企業も多くあるようです。
2. データ分析を勧める3つの理由
データ分析により、どんなメリットが期待されるのでしょうか?
データ分析のメリットは、次の3つが挙げられます。
①健康課題の抽出
データ分析により、健康課題の抽出が可能となります。
健康診断やストレスチェック、勤怠情報などのデータを分析することで、事業所の健康課題の見える化ができます。健康課題の可視化が出来れば、健康施策の立案を効果的に行えるため産業保健活動を進めていく上では非常に重要です。
また、健康課題を衛生委員会等で事業所に提示することで、人事・労務の担当者や経営層と同じ方向を向くことが出来るようになります。
②健康施策の評価
健康施策は実施して終わりではなく、評価、改善といった「PDCAを回していく」ことが求められます。
アンケート結果や施策実施後のデータ(健康診断結果や施策による平均歩数の変化等)を活用して分析を行うことで、施策が有効であったのか、どのような課題があったのか、といった情報を得ることができるため次の施策を効果的に実施することが可能となります。
③費用対効果の検証
企業における健康管理は費用対効果が見えにくく、「不要なコスト」として位置づけられることは少なくありません。
しかし、データ分析を定期的に、詳細に行うことで効果が見える化できるため、プレゼンティーズムやエンゲージメント等の分析も同時に行えば施策を行ったことでの費用対効果を抽出することも可能となります。
そのため、データ分析し数字として表せるようにすることで、健康施策のための予算の獲得や人員確保にも繋がります。
例:健康投資によって、プレゼンティーズムによる損失割合が〇%低下した
3. データ分析の方法
データ分析の方法は大きく分けて次の4つがあります。
①Excelを活用
システム導入が難しく、プログラミングに抵抗があるといった場合、Excelの数式やピボットテーブルを活用しデータを分析することができます。
健康診断のデータはCSVで出力できることが多いので、Excelの数式やピボットテーブルを覚えてしまえば、割と手軽に分析することが可能です。
②データ分析ツールの活用
近年、健康管理システムは目まぐるしいスピードで成長しています。
健康管理システムの導入で、ボタン1つクリックすると簡単に情報の集計ができるといったものもあり、健康管理システムを導入する際は、分析のしやすさを指標の1つとしても良いでしょう。
その他、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールといった、バラバラなデータを一元化し分析、その結果をレポートの形でグラフや図表でわかりやすく表現されるシステムもあります。
健康診断結果だけでなく、ストレスチェックの結果や勤怠情報、エンゲージメント、健康施策で実施したアンケートなどのデータをすべて一元化し、容易にクロス集計することが可能となります。
これにより、意思決定と課題解決が容易となり、効果的な健康経営や業務遂行へとつながります。
③プログラミング
プログラミングの方法には、RやPythonといったツールがあります。どちらもデータ解析に特化したプログラミングの方法です。
プログラミングと聞くと、難易度が高いと思われがちですが、一度やり方を覚えると実はExcelでの集計より簡単に集計が可能となる場合もあります。
④外部委託
専門機関へ委託といった方法を取り入れるのも良いでしょう。
コストはかかりますが、データを渡すだけで細かな分析結果を受領することができ、業者によっては細かな分析内容の説明や改善方法等のフィードバックも得ることができます。
4. おわりに
産業保健の現場におけるデータ分析は、まだまだ進んでいるとはいえません。
しかし、近年健康経営度調査において、プレゼンティーズムやワークエンゲージメントといった業務パフォーマンス指標に対して、指標や測定方法、経年変化が順次追加となるなど、今後ますますデータ分析が必要となる機会は増えていくことと思います。
「なぜデータ分析が必要なのか」といった目的を明確にしつつ健康施策や評価に活かして行けると良いでしょう。
■作成|さんぽLAB 運営事務局 保健師
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