健康診断の分析とは?メリットや項目、実際の集計方法を解説!
健康診断の結果を分析したいけど、何から実施していいか分からないといったことはありませんか?この記事では、健康診断の分析におけるメリットや分析項目、実際の集計方法についてお伝えいたします。
【目次】
1.健康診断の分析とは
2.健康診断の分析項目
3.実際に集計してみよう
3-1.受診者数を出したい
3-2.肥満率を出したい
3-3.血圧の有所見率を出したい
3-4.血中脂質の有所見率を出したい
4.おわりに
1.健康診断の分析とは
労働安全衛生法では事業者に社員の健康診断の実施が義務付けられています。
健康診断の結果を活用し、効果的に事業所の安全衛生活動を行なっていくためには、健康診断結果の分析が役立ちます。
健康診断結果を分析することは、次の3つの効果が期待されます。
① 健康課題の抽出
企業または事業所の健康課題を見える化することで、その企業がもつ健康課題を把握でき、具体的な対策を優先順位に基づいて産業衛生活動を進めていくことができます。
② 健康施策の評価
たとえば、血圧の有所見率改善に重点を置いた施策を実施した場合、実施前後の血圧の値や血圧に関連した生活習慣等を比較することで、その効果を評価し改善点を見つけることができます。また、保健指導の効果を測るために、指導を受けた群と受けていない群で、体重の減少率を比較することもできます。
③ 会社や従業員へのアプローチに活用
自社の健康診断の結果を分析し、その情報を事業所や従業員と共有することで、健康意識の向上を図ることができます。ただし、情報を事業所に共有する際には、個人が特定されないよう、プライバシーに配慮した分析手法を用いることが必要です。
2.健康診断の分析項目
健康診断結果の分析においては、企業や事業所の特性、従業員の状況を考慮しながら、分析する項目や分析手法を選定します。各検査項目の有所見率だけでなく、問診などから生活習慣に関する項目でクロス集計を行う方法や、がん検診を行なっている場合はその受診率などを集計する方法があります。
年代別の比較を行ったり、経年での比較を行ったりすると、事業所の課題を見える化することができます。
全国のデータとの比較については、厚生労働省が公表をしている「定期健康診断結果報告」の有所見率などのデータがあります。この定期健康診断結果報告書は、有所見と分類するための検査値の基準が明確になっておらず、単純に比較することはできません。
一方、厚生労働省や経済産業省、日本健康会議の3者が作成し、各健康保険組合に送付している「健康スコアリングレポート」は、共通の基準で評価されているため、他社(他健保)との比較が可能です。このレポートを健康保険組合と企業で共有し、健康課題の認識をすり合わせることでコラボヘルスの推進も円滑に進めることができます。
3.実際に集計してみよう
健診機関により異なりますが、健診結果をまとめてCSV形式で提出いただくところが多いことと思います。
健診機関によって判定基準が異なるため、複数の健診機関を使用している場合は判定基準(有所見の基準)を統一させてから集計しなければなりません。
出したい項目を例にあげて実際に集計をしてみようと思います。
※注※ 有所見基準は各医療機関や企業・事業所により異なります。 こちらの記事が正解ということではなく、あくまで集計方法・有所見基準の一例ですので、参考程度にご利用いただければと思います。 (この判定基準は人間ドック学会判定区分2024年度版において、C要再検査・生活改善、D要精密検査・治療、E治療中を「有所見」として集計していきます) |
また、こちらの関数についての説明は、「Excelの基本」で説明しておりますので、関数が苦手な方は併せてご覧いただくとより理解しやすいと思います。
3-1.受診者数を出したい
受診者の総数を集計する際は、列全体の人数より1行目を除くことで総数を出すことが出来ます。
この集計には、入力されたセルの個数を数える関数「COUNTA関数( 式:=COUNTA(数値) )」を使用するので、下記の図では「=COUNTA(A:A)-1」 」と入力すると、受診者数を出すことが出来ます。
3-2.肥満率を出したい
肥満率を出すためには、BMIより25以上を抽出し、受診者数より比率を抽出します。
まず「肥満」と「非肥満」を分類する必要があります。
条件によって処理を分ける時には、IF関数を使用します。
下の図では、F2が25以上であれば”肥満”、それ以外であれば”非肥満”と表示したいので、「=IF(F2>=25,"肥満","非肥満")」と入力します。この式を列の一番下までコピーするとF列を”肥満”と”非肥満”で分類することができます。
肥満と非肥満の分類が出来たら、肥満の個数を数えます。
この集計には、条件に合った数を数える関数「COUNTIF関数(式:=COUTIF(範囲,条件)) 」を使用し、肥満数を算出します。
集計したいセルに「=COUNTIF(G:G,"肥満")」と入力すると、G列の範囲で“肥満”と記載があるセルの数が抽出されます。
肥満率は、肥満者数を受診者数で割り、100をかける、もしくは%表記で出すことができます。
「式:肥満率=肥満者数÷受診者数×100」
3-3.血圧の有所見率を出したい!
拡張期血圧の有所見を90以上、収縮期血圧の有所見を140以上として有所見を抽出するとします。
この際、I列が90以上、もしくはJ列が140以上になったときに「有所見」、それ以外は「所見なし」と表記されるようにしたいので、「IF関数(式:IF(倫理式,真の場合,偽の場合)) 」と「OR関数(式:OR(条件1, 条件2 …))」を組み合わせて集計します。
ORの関数を使用することで、この複数の条件、この場合IとJのどちらかに1つでも該当する場合にIFの式が適応となります。
下の表では、K2に「=IF(OR(I2>=90, J2>=140), "有所見", "所見なし")」と入力し、K2の式をK列全体にコピーすることで血圧の有所見を分類することができます。
有所見率を出したい場合は、肥満の時と同様にCOUNTIF関数で「有所見者数」を出し、受診者数で割り100をかける、もしくは%表記となることで有所見率を出すことができます。
「式:血圧有所見率=有所見者数÷受診者数×100」
3-4.血中脂質の有所見率を出したい
血圧の有所見の方法と同様に、血中脂質について「有所見」を出していきましょう。
今回は、「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」、「血中脂質」のいずれかが有所見であれば血中脂質を有所見として集計していきます。
少し数式が複雑になるので、順序だてて集計していきたいと思います。
まず、Q列のLDLコレステロール、S列のHDLコレステロール、U列の中性脂肪で有所見を個々に抽出するとします。
LDLコレステロールの有所見を出す
先ほどと同じく「IF関数」と「OR関数」を使用していきます。
「LDLコレステロールが60未満または140以上」という式を入れたいので、R2のセルに「=IF(OR(Q2<60,Q2>=140), "有所見", "所見なし")」と入力し、下のセルまで式をコピーします。
HDLコレステロールの有所見を出す
続いて、HDLコレステロールの所見は「HDLコレステロールが30未満」という式を入れたいので、T2のセルに「=IF(S2<30,"有所見","所見なし")」と入力し、下まで式をコピーします。
中性脂肪の有所見を出す
続いて、中性脂肪の所見は、「中性脂肪が30未満または300以上」で出したいので、V2のセルに「=IF(OR(U2<30,U2>=300), "有所見", "所見なし")」の式を入力し、下までコピーします。
血中脂質の有所見を出す
最後に、LDLコレステロールとHDLコレステロール、中性脂肪のどれかひとつでも所見がある場合に「有所見」としたいので、W列に改めてIF関数とOR関数を入力します。
W2のセルに「=IF(OR(R3="有所見",T3="有所見",V3="有所見"),"有所見","所見なし")」と入力し、式を下までコピーするとLDLコレステロールとHDLコレステロール、中性脂肪のどれかひとつでも所見がある場合に「有所見」と表示することができます。
有所見率を出したい場合は、血圧の有所見率の算出と同様にCOUNTIF関数で「有所見者数」を出し、受診者数で割りかける100をするか%表記とすることで有所見率を出すことができます。
「式:血中脂質有所見率=有所見者数÷受診者数×100」
4.おわりに
今回は、健康診断の分析と集計の例についてお伝えいたしました。
健康診断結果の集計は、今回のように数式を使う方法に加え、ビボットテーブルを使う方法やマクロを組んで集計する方法、健康管理システムやDXプラットフォームを活用し分析する方法等があります。
分析したい内容や目的によって使い分けるとよいでしょう。
作成:さんぽLAB運営事務局 保健師
■分析から事後措置の工数削減まで役立つ健康管理システム
当社アドバンテッジリスクマネジメントの健康管理システムは、判定基準の統一化が図れ、複雑な分析作業を簡素化することができます。
また、健診予約から受診勧奨の工数削減、保健指導の記録保管など、健康診断の業務に掛る業務時間を大幅に削減に繋がります!
■参考文献
健康スコアリングレポートの概要|厚生労働省
産業保健看護学‐基礎から応用・実践まで~|光益財団法人 産業医学振興財団