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ワーク・ライフ・バランスの向上に貢献する睡眠習慣~7つの効果的なアプローチ~

ワーク・ライフ・バランスの向上に貢献する睡眠習慣~7つの効果的なアプローチ~

睡眠不足や睡眠障害における健康リスクが明らかになっている一方で、わが国において、1日平均睡眠時間が6時間未満の割合は約4割と言われており、睡眠は重要な健康課題であると注目されています。¹)

平成27年における国民健康・栄養調査によると、睡眠確保の妨げになっている原因として男性は仕事・女性は育児や家事が上位に挙がっており睡眠は仕事や生活に深い関連があると言えるでしょう。

この記事では、睡眠とワーク・ライフ・バランスの向上に効果的な睡眠習慣のアプローチについてお伝えいたします。

目次

1.睡眠とワーク・ライフ・バランスの関係
 1-1.ワーク・ライフ・バランスとは
 1-2.睡眠不足や睡眠障害がワーク・ライフ・バランスに与える影響
2.質の高い睡眠を目指す7つのアプローチ
3.まとめ

1 睡眠とワーク・ライフ・バランスの関係

1-1.ワーク・ライフ・バランスとは

ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事(Work)と生活(Life)の調和」のことで、仕事と生活のどちらかに偏りすぎることなく両方を充実させるといった考え方です。

わが国では平成19年12月18日に「仕事と生活の調和(ライフ・ワーク・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が内閣府より策定され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」の実現を目指すとされています。

1-2.睡眠不足や睡眠障害がワーク・ライフ・バランスに与える影響

労働者にとって、良い睡眠の確保は非常に重要です。良い睡眠とは、睡眠の量(睡眠時間)と睡眠の質(睡眠休息感)が充足されることで担保されますが、不適切な生活習慣や睡眠環境、嗜好品などのとり方で睡眠不足や睡眠障害が発症し、良い睡眠は損なわれてしまいます。
その結果、仕事のみでなく生活へも影響を及ぼすとされ、充実した仕事や生活(ワーク・ライフ・バランス)に支障を及ぼします。

睡眠不足や睡眠障害がワーク・ライフ・バランスに与える影響は、具体的に次の5つが挙げられます。
睡眠不足や睡眠障害がワーク・ライフ・バランスに与える影響

① 業務への支障

睡眠時間が足りていない、もしくは睡眠の質が良くない状況は、注意力や集中力の低下、記憶力・学習力の低下、創造力の低下などの原因となり業務効率や生産性低下に繋がります。

②意欲低下

慢性的な睡眠不足は意欲低下を招くため、「何もしたくない」「外に出たくない」「誰とも話したくない」などネガティブな思考や行動を引き起こします。そのため、生活においても充実感を損なう原因となります。

③メンタルヘルス不調

睡眠不足は疲労感・倦怠感をもたらしストレスを感じやすくなります。睡眠と精神疾患にも相互関係があることが知られており、メンタル面が安定しないことは仕事や生活に悪影響を及ぼします。

④身体的な不調

睡眠は、肥満や生活習慣病のリスクだけでなく風邪のような日常の病にもかかりやすくなると言われています。体調不良や病気となることで、日常生活への支障に加え、病欠や退職などの原因になることもあります。

⑤ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)

一時的でなく、慢性的な睡眠不足のことを「睡眠負債」といいます。平日に溜まった睡眠負債を取り戻すために休日多く眠るといった「寝だめ」を行うことでソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)を引き起こし、体内時計を乱しやすくなり不調の原因となります。

2 質の高い睡眠を目指す7つのアプローチ

従業員が質の高い睡眠をとるためには、産業保健スタッフなどが、睡眠に関する重要性について繰り返し啓発していくことが重要です。

「睡眠が仕事や生活に大きく関わっていく」、「質の高い睡眠を得るために自ら工夫していく」という考えを広めていくことが求められます。

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良い睡眠を確保するための7つのアプローチ方法

良い睡眠の確保のためには、次の7つのアプローチを行うことが推奨されています。¹)
従業員へ周知したい、良い睡眠を確保するための7つのアプローチ方法

①睡眠時間の確保

“眠たくなったから寝る”ではなく、決まった時間に布団に入るなど睡眠環境を整えることが大切です。予め寝る時間を決めて置き、逆算して起床時間や入浴時間、食事時間を設定するのも良いでしょう。

睡眠アプリやウェアラブル端末などを活用し、睡眠状況を記録しておくと自身の睡眠を客観的に評価することも可能となります。

必要な睡眠時間は年齢によって異なると言われています。個人差があるので全て当てはまるとは言えませんが、睡眠時間の目安として15歳前後では約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳では約6時間と言われています。¹)
一方で、長く眠ろうと床の上で必要以上に長く過ごすと「途中で目が覚める時間が増える」、「寝付くまでに時間がかかる」、「熟睡感が減る」などといった睡眠の質の低下がみられることがわかっています。¹)

②睡眠環境の調整

睡眠環境を整えるためにためには、『光・温度・音』を意識しましょう。

<光>

朝起きてから朝日を浴び、日中はなるべく日光を浴びると体内時計が調整され、入眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌により入眠しやすくなると言われています。睡眠中は、低い照度の光でも中途覚醒の時間を増やすため照明やスマートフォンの光、特にブルーライトには注意が必要です。

<温度>

睡眠時の温度環境の調整は良い睡眠を得る上で重要です。
就寝前に手足の皮膚血流が増加することで入眠しやすい状態になると言われており、就寝前の入浴など身体を温めることで速やかな入眠をもたらします。
また、エアコンなどを活用し室内は快適と感じられる温度や湿度を保ちましょう。

<音>

騒音は眠りを妨げるため、なるべく静かな環境で眠るようにしましょう。

③スマートフォンやPC、タブレットの使用を控える

 寝る前の1時間はスマートフォンやコンピュータの使用を避けるよう心がけましょう。
スマートフォンをスリープモードに予約設定しておく、通知を切る、メールの返信をしないなどルールを決めて習慣化できると良いでしょう。

④規則正しい運動習慣を身につける

適度な運動習慣は、睡眠の質に影響します。運動のタイミングは日中が良いと言われていますが、夕方や夜間でも睡眠改善に効果的と言われています。(目安:就寝2~4時間前まで)
また、成人では有酸素運動や筋力トレーニングなどの中等度以上の身体活動が望ましいとされています。
運動強度

⑤寝る前の食事や間食、嗜好品を控える

就寝前の2時間以内に食事をとると睡眠の質を下げてしまう可能性があります。寝る前の食事や間食は控えると良いでしょう。
また、朝食を欠食すると体内時計が乱れ、寝つきが悪くなる原因となります。朝食の欠食を避け、なるべく決まった時間に食事をするようすると良いでしょう。

⑥嗜好品を控える

コーヒー・タバコ・アルコールなどの嗜好品の中には、睡眠に影響を及ぼすものがあります。

<コーヒーやお茶、エナジードリンクなどのカフェイン>

一日400㎎(ドリップコーヒー:700ml)のカフェイン量以上は超えないように注意し、夕方以降のカフェイン摂取は控えましょう。

<タバコ>

タバコに含まれているニコチンには覚醒作用があり、睡眠前の喫煙は入眠困難や中途覚醒、睡眠効率の低下などを招きます。
受動喫煙も同様に睡眠に影響を及ぼすので、同居人(特に妊婦やこども)の睡眠への影響などにも注意が必要です。

<アルコール>

アルコールは、一時的に寝つきを促進し睡眠の前半では深い眠りとなります。一方で睡眠後半における眠りの質は著名に悪化し、飲酒量が増えるにつれて中途覚醒の回数も増えることが知られています。

また、アルコールには閉塞性睡眠時無呼吸などの睡眠障害を悪化させることが分かっているため、睡眠前の飲酒には十分注意が必要です。

⑦睡眠前のリラックス

寝る前にリラックスすることは、脳の興奮を鎮めるためスムーズな入眠に効果的です。
少なくとも入眠の1時間前までには仕事や勉強・家事などを終わらせてリラックスする時間を持つと良いでしょう。
入眠を促進するリラクゼーションとして一般的に瞑想法や静かに行うヨガ、音楽やアロマテラピーがあります。

全ての人に当てはまるものはないので、一人ひとりに合ったリラクゼーションの方法を見つけることが大切です。

これらのアプローチを実施した上で、睡眠が改善されない従業員に関しては、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの疾患のリスクも考慮した上での介入が必要です。

3 まとめ

良い睡眠をとることは、疾病予防のみでなく仕事や生活を豊かにする上で非常に重要です。
従業員の睡眠障害を予防し、ワーク・ライフ・バランスを充実させていくことは、従業員の健康はもちろん組織の活性化にも繋がります。

睡眠セミナーや保健指導、保健だよりなどを通じて正しい睡眠の知識を啓発していくとともに、仮眠空間の設立、パワーナップ制度や睡眠アプリの導入など必要なアプローチを会社と共に検討していくと良いでしょう。


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■作成:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■監修:難波 克行 産業医
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問​
アズビル株式会社 統括産業医​

メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆​
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信​

代表書籍​
『職場のメンタルヘルス入門』​
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』​
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』​

参考文献:
1)健康づくりのための睡眠ガイド 2023 (案)|厚生労働省
仕事と生活の調和の実現に向けた取組の推進|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 - 「仕事と生活の調和」推進サイト - 内閣府男女共同参画局 (cao.go.jp)
労働者の睡眠問題と勤務間インターバル | 労働安全衛生総合研究所 (johas.go.jp)
健康づくり支援担当者のための総合情報サイト_睡眠編|厚生労働省

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