データ分析を産業保健活動に活かすうえで、最も必要だと感じることは?【産業保健スタッフの投票結果から】
はじめに
産業保健の現場には、毎年の健康診断データ、ストレスチェック結果、休職・復職者の記録など、活用可能なデータが多く存在します。しかし、データの効果的な活用につながらないという課題が多く聞かれます。
今回は、「データ分析を産業保健活動に活かすうえで、最も必要だと感じる事は何か」について現場の声を集めました。結果をもとに、“データ分析”を産業保健活動に活かすためのヒントを整理します。
投票結果(概要)
期間: 2025年11月15日〜11月21日
投票数: 43票
結果
- データ分析を継続的に行い、PDCAサイクルを回す:51%
- データ分析の目的の明確化:30%
- 経営層や人事、他の専門職など、関係部署へのデータ分析結果の連携方法:12%
- 分析ツール・システムの導入、活用促進:7%

各項目の傾向と対応のヒント
データ分析を継続的に行い、PDCAサイクルを回す(51%)
産業保健の取り組みは、単発の施策を実施して終わりにするのではなく、継続的に評価・改善を重ねていくことが重要です。そのためには、従業員の健康データや施策の実施状況を定期的に収集・分析し、PDCAサイクルを着実に回していく仕組みが欠かせません。
データ分析を継続して行うことで、健康課題の変化や施策の効果が可視化され、「どの取り組みに優先度を置くべきか」「どの層に追加の支援が必要か」といった判断がより正確になります。その結果、自社の実情に合った効果的な健康施策を展開しやすくなり、組織全体の健康経営の質向上にもつながります。
対応のヒント
- 衛生委員会等で「分析結果や施策の評価」を定期的に報告する
- 健康診断等の分析のみでなく、健康施策の分析も合わせて実施し評価する
- 短期的な目標設定だけでなく中期目標や長期目標も設定する
データ分析の目的の明確化(30%)
多くのデータを取り扱う中で、「なぜ分析するのか」が曖昧なままデータを扱ってしまうこともあるかもしれません。
データを分析する目的や活用方法を明確にすることで、必要なデータの選定、分析指標の設定、施策実施後の評価がしやすくなります。
対応のヒント
- データを分析する前に目的やゴールを明確化する
- 関係者間で分析の目的やゴールを共有し認識を合わせる
- 定期的に分析の目的や手法を見直す
関係部署へのデータ分析結果の連携方法(12%)
分析した内容を誰に、どのタイミングで伝えるか。
ここが仕組み化されていないと、経営層や会社に産業保健活動の実績や評価が伝わりにくくなります。
対応のヒント
- 図やグラフ等を用いて視覚的に分かりやすく伝える
- 定例会議で定期的に報告するスケジュールを決める
- どのデータをどの共有先(人事、産業保健スタッフ、経営層など)に共有するかをあらかじめ決めておく
分析ツール・システムの導入、活用促進(7%)
産業保健活動でデータを活用するためには、まず健康診断結果や勤怠、ストレスチェックなどの情報を数値化・定量化し、分析できる状態に整えることが重要です。そのうえで、分析ツールやシステムを導入すると、収集・整理・可視化が効率的になり、課題の把握や施策の効果測定が迅速かつ正確に行えます。
対応のヒント
- システム導入の際には、自社の課題や目的に合った機能を備えているか見極める
(例:ストレス×勤怠、健康診断×部署など、課題に対応したクロス分析が容易か) - ツールやシステムの導入が難しい場合は、マクロ等を用いて効率化したり、Excel集計作業を仕組化する
今後の展望
産業保健活動でデータを活用しPDCAサイクルを回していくことは、産業医や保健師などの産業保健専門職の大きな役割のひとつです。分析結果を企業側に提示する際は、目的や目標を明確化した上で定量的な数字を用いてグラフなどを使いながら表現すると伝わりやすいため、効果的にアプローチすることが可能となります。 効果的に産業保健活動を進めるため、適切にデータを活用し、産業保健活動のPDCAサイクルをよりよいものにしていきましょう。