ストレスチェックは「年1回やれば終わり」と思われがちですが、実務ではその後の運用こそが重要です。
頻度の最適化、集団分析の活用方法、高ストレス者への対応、面接拒否時の対処、そして産業医と保健師の役割分担まで――現場では判断に迷う場面が多く存在します。
本記事では、ストレスチェック運用における代表的な5つの疑問について、法令の基本と実務でのベストプラクティスをわかりやすく解説します。
「形式的な実施」で終わらせず、職場改善や離職防止につなげたい方はぜひご覧ください。
Q1. ストレスチェックは年1回だけで十分?
現在、労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年に1回以上のストレスチェックの実施が義務付けられています。(そして2025年5月の法改正により、これまで努力義務だった50人未満の事業場に対しても今後義務化される方針が示されました。)
年1回の実施で最低限の法令順守にはなりますが、ストレスチェックを年に複数回、継続的に実施することで、労働者のストレスの変化をタイムリーに把握し、早期対応につなげることが可能となります。メンタルヘルス不調の一次予防としての効果がより期待できるのはもちろん、集団分析の結果を活用することで職場環境改善の推進やその効果検証、ひいては離職・休職リスクの低減などにもつながります。
なお、年複数回のストレスチェック実施には、衛生委員会などで労使の合意を得る必要があり、実施頻度や時期についてあらかじめ明確化しておくことが重要です。
Q2. 集団分析の結果はどのように現場へフィードバックすべき?
集団分析は、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」を使用する場合は、調査票に関して公開されている「仕事のストレス判定図」を用いることが適当です。(独自の項目を用いる場合には、「仕事のストレス判定図」を参考としつつ、各企業において適切な分析方法を定めましょう。)その際、「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」の評価項目をもとに、標準集団と比較した分析対象集団の健康リスクを判定することができます。(ただし、集団分析の単位が10人を下回る場合には、労働者の同意もしくは個人の特定に繋がらないよう、より大きな所属単位での集計・分析が必要となるので注意しましょう。)
産業保健スタッフは日頃の活動を通して得られる健康課題や職場巡視の結果、管理監督者や労働者の声などを併せてフィードバックすることで、総合的な職場環境の評価につながります。集団分析の結果をもとに、管理監督者向け研修の実施や衛生委員会等における職場環境の改善方法の検討などに活用することが重要です。
Q3. 高ストレス者への対応は誰がどこまで行うの?
実施者などから個人のストレスチェック結果を労働者に直接通知の上、高ストレス者のうち実施者が面接指導を受ける必要があると判断した対象者に対して、医師による面接指導を受けるように勧奨します。
中には、医師による面接指導の申出を行わない労働者もいると考えられるため、面接指導の申出という正式な手続き以外でも、健康相談として産業医や保健師、心理職等に相談できる窓口を用意し周知するなど、高ストレス者が適切なサポートを受けられるよう取り組むことが大切です。
Q4. 面接勧奨したのに本人が拒否した場合はどう対応する?
医師による面接指導の勧奨は、あくまでも機会の提供であり、強制力はありません。しかし、ストレスの程度が高いと評価された労働者は、うつ病などの精神疾患を抱えるメンタルヘルス不調者となる可能性や将来的に離職・休職のリスクも高いと考えられるので、できるだけ医師による面接指導を受けるよう勧奨することが望ましいでしょう。
また、中には高ストレス者であることやストレスチェック結果などを会社に知られたくないとして、医師による面接指導の申出を行わない労働者もいると考えられるため 、対象者ができるだけ安心して面接指導を申し出るような環境づくりが重要です。
面接指導を申し出たことに対して不利益な取扱いはされないことや個人情報の取り扱いなど十分説明するとともに、高ストレス状態を見過ごした場合のリスクや医師面接のメリットについて情報提供を行うなど、会社と従業員の信頼関係を醸成されるような取り組みを行うと良いでしょう。
その他、社内外の相談窓口の周知や必要に応じて医療機関への受診など、他の方法があることを知らせておくのも効果的です。
Q5. 産業医と保健師の役割分担はどう整理すればよい?
実施者は事業場で選任されている産業医が最も望ましいとされており、産業医が実施者(実施代表者)となることが多く、保健師は共同実施者(または実施事務従事者)になることがあります。
産業医は実施者としての役割はもちろん、高ストレス者への面接指導を担う場合が多いでしょう。保健師は、産業医と連携を取りながら、医師面接を希望しない労働者へ健康相談として対応したり、医師面接後のフォローとして体調確認を行ったりするほか、実施事務従事者と連携を取りながらストレスチェック未受検者への受検勧奨や医師面接指導の勧奨など事務的業務の補助を行うこともあります。
6. まとめ
ストレスチェックは、年1回の実施で法令順守は満たせるものの、本来の目的は「職場環境改善」と「メンタルヘルス不調の予防」にあります。
そのためには、単発で終わらせるのではなく、継続的な実施による変化の把握、集団分析結果の現場への適切なフィードバック、高ストレス者への多層的なフォロー体制の構築が不可欠です。
また、面接拒否への対応や産業医・保健師の役割分担を明確にすることで、より実効性の高い運用が実現できます。
ストレスチェックを「義務対応」から「経営に活きる施策」へと進化させることが、これからの企業に求められています。
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