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保健師必見!効率的な産業医との連携術と実例紹介

産業医とのスムーズな連携は、職場の健康管理を支える上で欠かせません。しかし、専属産業医と嘱託産業医の違いや、それぞれの業務内容、連携のポイントについて詳しく知っている保健師は意外と少ないかもしれません。本記事では、産業医との効率的な連携方法をわかりやすく解説し、実際の事例を交えながら成功するコツをご紹介します。あなたの職場での連携体制を見直すきっかけにしてみてください。


講師|大林知華子先生(産業医・精神科専門医・指導医・労働衛生コンサルタント・産業保健法務主任者・Actwith株式会社代表取締役)
※本記事は、2024年10月10日に開催したセミナー「現場で実践!産業医と保健師の効果的な連携のヒント」の一部を編集したものです。


<目次>

1. 産業医の種類とその特徴
 ・専属産業医とは
 ・嘱託産業医とは
 ・専属と嘱託の違いがもたらす保健師への影響
2. 産業医が担う具体的な業務内容
 ・労働安全衛生規則が定める業務一覧
 ・保健師と産業医の共同作業
3. 嘱託産業医との連携ポイント
 ・業務の線引きを明確にする重要性
 ・効率的なコミュニケーション方法
 ・面談対象者や情報共有のコツ
4. 保健師が産業医に求められる3つの役割
 ① 社員との橋渡し
 ② 業務コーディネート
 ③ 事前準備の徹底
5. 実際の事例から学ぶ多職種連携の課題と解決策
 ・事例①:産業医面談における人事とのすれ違い
 ・事例②:業務の住み分けや優先順位の付け方
 ・事例③:産業医と勤務日が異なる場合の対応
 ・事例④:産業医から適切な情報共有を得る工夫
 ・事例⑤:事業所ごとの産業医対応の差にどう向き合うか
 ・事例⑥:主治医との連携が困難
 ・事例⑦:産業医への業務依頼
6. 連携の質を向上させるために保健師ができること
 ・メールや電話での効率的なコミュニケーション術
7. 最後に


1.産業医の種類とその特徴

まず、産業医の種類についてご紹介します。産業医にはいくつかのタイプがあります。保健師は産業医の種類を理解することで、それぞれに合った連携のヒントが見えてくるかもしれません。

■専属産業医とは

専属産業医は、事業所や会社に常勤として勤務することが多いです。社員としての身分を持ち、勤務時間も長く、週に3~4日、1日7~8時間フルタイムで働くことが一般的です。専属産業医を配置する必要があるのは、社員数が1,000名以上、または有害業務を行う事業所では500名以上という法的な基準があります。

■嘱託産業医とは

一方、嘱託産業医は非常勤が多く、業務委託契約で勤務することが一般的です。勤務時間は短く、月に1回1時間や、2カ月に1回などの場合もあります。社員数が50名以上の事業所では産業医を配置する必要があるため、50~999名規模の会社で嘱託産業医が活躍することが多いです。

専属産業医 嘱託産業医
勤務形態 事業場に常勤 非常勤
身分 会社の社員(または嘱託社員) 業務委託が多い
事業場での勤務時間 長い。週に3~4日程度、1日7~8時間程度 短い。月に1時間~(2カ月に1回のことも)
社員数 1000名以上、または有害業務500名以上 50~999名

■専属と嘱託の違いがもたらす保健師への影響

これら2つの働き方は全く異なるため、特に嘱託産業医とは効率的なコミュニケーションが重要になります。専属産業医であれば、保健師と一緒に相談できる環境が整っていることが多いですが、嘱託産業医の場合は月に数時間しか訪問しないため、その短い時間で必要な業務を全て行う必要があります。効率的なコミュニケーションが求められます。

2.産業医が担う具体的な業務内容

次に、産業医の業務内容についてです。

■労働安全衛生規則が定める業務一覧

労働安全衛生規則により、産業医の業務は第14条、第15条で定められています。

  1. 健康診断の実施とその結果に基づく措置
  2. 長時間労働を行う従業員に対する面接指導とその結果に基づく措置
  3. ストレスチェック及びストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導とその結果に基づく措置
  4. 職場巡視
  5. 作業環境の維持管理
  6. 作業管理
  7. 上記以外の従業員の健康管理
  8. 健康教育、健康相談、従業員の健康を促進するための措置
  9. 衛生教育
  10. 従業員の健康問題の原因調査、再発を防止するための措置

■保健師と産業医の共同作業

先述の産業医業務の中には保健師が対応可能な業務も多く含まれています。例えば、作業環境の維持・管理、健康管理、健康教育、衛生教育、従業員の健康相談などです。これらの業務は産業医と保健師が協力しながら進めることで、より効率的に取り組むことが可能です。

3.嘱託産業医との連携ポイント

嘱託産業医の注意点として、以下の点が挙げられます。

  1. 臨床経験が豊富であっても、嘱託産業医としての経験が少ない場合は、衛生委員会の出席や職場巡視等の基本的な業務以外の知識が不足していることがあります。
  2. 復職支援や就業制限の解除など、具体的な手続きや支援方法に不慣れな場合があります。
  3. 複数の会社を担当している場合、面談対象者や企業の特徴を十分に把握できていない場合があります。

嘱託産業医との連携をスムーズに進めるためには、以下のポイントを押さえましょう。

■業務の線引きを明確にする重要性

産業医にどこまで対応してほしいのかという線引きを明確にすることで、誤解が生まれにくくなります。

■効率的なコミュニケーション方法

長文のメールは読まれない可能性があるため、報告や共有は短めにして要点を先に伝えるようにしましょう。詳細は後から補足する形が効果的です。

■面談対象者や情報共有のコツ

産業医が複数の企業を担当している場合、面談対象社員のことを覚えていない場合もあります。事前に簡単な情報を共有することで面談がスムーズに進みます。例えば、「うつ病で休職中だった社員が現在復職して2カ月目で、就業制限の解除を希望している」といった情報を伝えるだけでも、産業医が状況を把握しやすくなります。

4.保健師が産業医に求められる3つの役割

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■講師


大林 知華子(産業医、精神科専門医・指導医、労働衛生コンサルタント)

Actwith株式会社 代表取締役

大阪出身、大阪在住。​
滋賀医科大学出身、北里大学で精神科後期研修修了。​
精神保健指定医、精神科専門医・指導医。​
第1子出産を機に大阪に帰省し、精神科病院に勤務しながら嘱託産業医として活動を開始。第3子出産後は産業医としての活動に重点を置き、現在は製造業、情報・通信業、人材派遣業、レジャー業など、約20社の産業医を務めている。

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