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会社と本人の意見が食い違ったとき産業保健師ができる対応とは?復職支援FAQ

産業保健の現場では、会社の意見と本人の希望が必ずしも一致しない場面があります。 復職のタイミングや業務制限の有無など、双方の思いにギャップがある場合、産業保健師のコーディネート力や調整力が求められることがあります。 

ここでは、意見の食い違いが生じたときに産業保健師が取るべき対応のヒントをFAQ形式で解説します。 


Q1. 会社の意見と本人の希望が食い違ったとき、どう調整する?

就業上の措置は、主治医や産業医からの情報を参考にしつつ、本人の意向・職場の状況・社内ルールなどを踏まえて、最終的に会社が判断・決定します。産業保健師は、そのプロセスを支える立場として、本人・上司・産業医・人事担当者などと連携し、本人の希望や医学的な情報、職場の状況を整理・共有することで、調整や決定が円滑に行えるようにサポートします。必要に応じて産業医・会社・本人の三者で話し合える場を設けることも有効です。その際、産業保健師が同席して、お互いの意見を分かりやすく翻訳して伝えたり、事前に必要な情報を共有したりすることも効果的です。

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Q2. 本人が「復職判断に納得できない」と言ってきた場合の対応は?

まず本人の感情を否定せず、共感的に受け止めます。そのうえで「どの点が理解しにくいのか」「どの条件に不安があるのか」を具体的に確認します。さらに、会社が復職判断で重視している観点(例:生活リズム、勤務可能な状況、体調の回復度など)を伝えることで、本人が状況を整理しやすくなります。人事担当者や産業医の説明を本人が誤解して受け取っていることもあるため、その点も丁寧に確認します。 

誤解や情報不足が原因であれば、産業医の医学的見解や会社の判断の根拠をわかりやすく説明しましょう。また、主治医が復職可能と診断している場合でも、最終的な復職の判断は会社が行うことを伝えることも重要です。なお、面談の場で本人が考えをうまく表現できない場合もあるため、必要に応じて産業保健師が同席し、安心して意見を述べられる環境を整えるとよいでしょう。


Q3. 産業保健師として、どこまで本人の立場に立つべき?

産業保健師として、本人の気持ちに寄り添うことは大切ですが、同時に会社や職場の状況も考えながら支援する必要があります。会社には労働契約法で定められた「安全配慮義務」があり、労働安全衛生法でも健康を守る仕組みづくりが求められています。 

また、さまざまな裁判例でも「働く人への配慮」と「会社の適切な業務運営」のバランスが争点になっています。そのため産業保健師は、本人の声を尊重しながらも、どちらか一方に偏らず、中立的かつ客観的な立場を保つことが求められます。産業医や人事担当者と協力し、法令や裁判例の考え方も意識しながら、会社が安全配慮義務を適切に果たせるよう、必要な情報を整理し、関係者に共有することが重要です。


Q4. 会社と本人の間で意見調整を行う際のファシリテーションのコツは?

調整の場では、双方の意見をただ伝えるだけでなく、その背後にあるニーズや不安を確認することが重要です。例えば「この復職形態を希望するのは、本人の体調や家庭の事情に、どんな必要性があるからなのか」、「会社としてはどんなことを懸念しており、どう改善すれば、その懸念が解消できるのか」といった事情を丁寧に聞き取り、要約して双方に確認することで、お互いに納得できる利害調整が可能になります。 

これはコンフリクトマネジメントの基本であり、表面的な対立を解消するのではなく、主張の背景にある利害・不安・価値観を理解し、お互いの共通点や、折り合える点を見いだす姿勢が大切です。 
ただし、最終的な判断は会社が行うため、必ずしも本人の希望通りになるとは限りません。その場合でも産業保健師は、本人の気持ちを尊重しつつ会社の判断の背景をわかりやすく伝え、本人が納得感を持って復職に向かえるよう支援する役割を担います。 


Q5. 産業医、人事や上司を交えた調整のタイミングと注意点は?

復職時の面談は、あらかじめ会社内でフローを決めておくことが望ましいです。臨時で面談を設定する場合は、目的によって呼ぶ関係者が異なるため注意が必要です。また、復職直前ではなく、できるだけ早い段階から関係者間で調整を進めることで、本人と会社の意見のずれを最小化し、スムーズな復職につなげやすくなります。 

会社へ本人の情報を共有する時は、予め本人の同意を得たうえで情報共有の範囲を明確にしておくことが必須です。 職場復帰や就業継続に関わる重要な局面では、関係者全員が同じ方向を向いて対応することが円滑な支援につながります。 

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まとめ 

会社と本人の意見の相違は珍しくありません。 産業保健師は双方の立場を理解し、橋渡し役として調整を行うことが求められます。 背景の整理、論点の明確化、情報共有のルールづくりが、建設的な解決のカギとなります。 

 

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