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産業保健スタッフのための 職場での身体活動・運動に関するFAQ ―『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』(INFORMATION 2) 実務活用版―

はじめに

本記事は、『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』のうち、働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント(INFORMATION 2)(ガイドP.19-22)をもとに、産業保健スタッフが現場で活用しやすいようFAQ形式で整理したものです。
特に、座って仕事をする時間が長い職種(オフィスワーカー等)では、歩数が少なく、身体活動量が不足する可能性が高いとされています。身体活動不足や長時間の座位は、2型糖尿病や運動器障害等の健康リスクに加え、腰痛、肩こり、頭痛などの不調、さらには労働生産性の低下につながる可能性があることが示されています。


目次

Q1. なぜ『職場での身体活動』が重要なのですか?
Q2. 個人の『頑張り』だけではなぜ難しいのですか?
Q3. どのような考え方(理論モデル)で対策を整理できますか?
Q4. COM-Bモデルの『能力・機会・モチベーション』とは?
Q5. 具体策はどのように考えればよいですか?
Q6. 研究事例として、どのような効果が報告されていますか?
Q7. オフィスの環境改善(座りすぎ対策)には効果がありますか?
Q8. 身体活動と健康指標の関係はどう整理されていますか?
Q9. 産業保健スタッフはどのように進めればよいですか?(実務の流れ)


Q1. なぜ『職場での身体活動』が重要なのですか?

A. 働く世代は運動習慣者が少ない傾向があり、特に座って仕事をする時間が長い職種では歩数が少なく身体活動レベルが低くなりやすいとされています。身体活動不足と長い座位時間は健康リスクを高め、腰痛・肩こり・頭痛などを介して労働生産性にも影響する可能性があります。職場で活動的に過ごせる取組は、働く人の健康を守るとともに、労働生産性を高める上でも重要です。
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Q2. 個人の『頑張り』だけではなぜ難しいのですか?

A. 労働時間中に活動的に過ごすことは、個人の努力だけでは実現が難しい面があります。職場でその意義について共通認識がないと、同僚から『仕事をさぼっている』と誤解されるおそれもあります。また、長時間座ったまま働くことが前提となっている職場環境では、個人の努力だけで活動的に過ごすことには限界があります。

Q3. どのような考え方(理論モデル)で対策を整理できますか?

A. ガイドでは、社会生態学モデルとCOM-Bモデルが紹介されています。社会生態学モデルは、人の行動に影響する要因が多層的(個人内、対人関係、組織、地域、政策など)であることを示す考え方です。個人だけでなく、組織・地域・政策の各レベルで対策を講じることにより、集団全体への効果が高まるとされています。COM-Bモデルは、行動(Behaviour)が、能力(Capability)、機会(Opportunity)、モチベーション(Motivation)の相互作用によって生じるという考え方です。

Q4. COM-Bモデルの『能力・機会・モチベーション』とは?

A. 能力には、身体的能力と心理的能力があります。特に心理的能力を高めるためには、知識の提供や教育が重要とされています。機会には、物理的機会と社会文化的機会があり、いずれについても環境面での整備が必要です。モチベーションには、内発的なものと外発的なものがあり、意義への理解を深めて前向きに取り組めるようにすることに加え、インセンティブや環境整備による後押しも重要とされています。

Q5. 具体策はどのように考えればよいですか?

社会生態学モデルとCOM-Bモデルを組み合わせることで、職場で活動的に過ごすための具体的な対策を整理できます。ガイドでは、取組を「社会文化的な対策」と「物理的環境の整備」の両面から整理できます。具体的には、組織方針やリーダーシップ、実施ルール、情報提供、運動教室などの社会文化的な対策に加え、階段の配置や自転車置き場、スタンディングデスクなどの環境整備が挙げられます。ガイドでは、こうした選択肢の中から、法令やガイドラインとの整合性、費用対効果、実現可能性を踏まえて取組を検討することが推奨されています。
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Q6. 研究事例として、どのような効果が報告されていますか?

A. いくつかの職場介入に関する研究事例が紹介されています。例えば、工場において、情報提供、キャンペーン、ウォーキングツールの提供を含む4年間の介入を行った研究では、HDLコレステロールが介入群で2.7mg/dL増加し、対照群では0.6mg/dL減少したと報告されています。また、メタボリックシンドロームのリスクがある人を対象とした管理栄養士等の専門職による4か月の介入およびセルフモニタリング支援で、体重、BMI、血糖などの改善がみられた報告や、1日1万歩を目標とした4週間の歩行介入で睡眠の質の改善がみられた報告もあります。さらに、昼休みに週3回の運動指導を10週間実施し、活力や仕事満足度などの改善が認めらました。そのほか、包括的・多要素介入により介入前後で身体活動量の増加が認められた報告も紹介されています。

Q7. オフィスの環境改善(座りすぎ対策)には効果がありますか?

A. オフィス環境の改善(リノベーション)を評価した研究では、リノベーションを実施した群は対照群と比べて、座位行動が1日当たり40分減少し、立つ・歩くといった低強度の身体活動が1日当たり24分増加したと報告されています。
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Q8. 身体活動と健康指標の関係はどう整理されていますか?

A. 労働者を対象とした研究では、身体活動量が多いほど循環器疾患のリスクが低く、抑うつなどの健康指標も良好である一方、仕事中の座位行動が多いほど健康リスクが高まることが示唆されています。職場における身体活動への介入については、多要素の介入が実施されており、概ね健康指標に好ましい影響がみられると整理されています。

Q9. 産業保健スタッフはどのように進めればよいですか?(実務の流れ)

A. ガイドの整理に基づけば、①個人への知識提供や教育を通じて、心理的能力や内発的モチベーションを高める、②環境や制度を整備して、物理的機会と社会文化的機会を広げる、③組織の方針、リーダーシップ、インセンティブ等により、外発的モチベーションを後押しする、という観点から多層的に取り組むことが有効です。費用対効果も踏まえつつ、実現可能な施策から段階的に導入することが望まれます。

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現場で使えるチェックリスト(導入時の確認)

  • 個人向け:情報提供・教育(身体活動の意義、座りすぎのリスク等)を実施できているか
  • 組織向け:組織の方針、リーダーシップ、勤務時間の工夫など、制度面での支援があるか
  • 環境向け:レイアウト、スタンディングデスクなど、活動的に過ごしやすい物理的環境があるか
  • 社会文化向け:同僚同士で活動的に過ごすことを肯定できる共通認識があり、誤解を防げる環境になっているか
  • 施策設計:その施策が、能力(C)・機会(O)・モチベーション(M)のどこを強化するものか整理できているか
  • 評価:歩数、座位時間、主観指標(活力、仕事満足度、睡眠の質等)などの評価指標を設定できているか

出典:厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』INFORMATION 2(働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント)をもとに作成。(2026年4月30日利用)
※本記事は、上記資料を参考に当社で編集・作成したものです。
※本記事の作成に当たっては、文章整理の補助としてAIを活用しています。

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