セルフケアとラインケア~職場におけるメンタルヘルスの基本~
職場における健康づくりには、体調を崩してからの対策よりも未然防止が重要です。
厚生労働省から発表されている『事業場における労働者の心の健康づくりのための指針』には、『セルフケア』『ラインケア』『事業場内産業保健スタッフ等によるケア』『事業場外資源によるケア』の4つのケアがあります。
なかでも『セルフケア』と『ラインケア』は非常に重要です。
本記事では、メンタルヘルス対策におけるセルフケアとラインケアについてご説明いたします。
目次
1.セルフケアとは
セルフケアとは、労働者が自分自身で行う健康管理です。
心も体も良好な状態を保ち続けるめには、自分の状態に意識を向け必要なケアを実施することが大切です。
労働者自身がストレスに気づき、セルフケアできる知識と対処法を身に着け日常的に実施することは、職場のメンタルヘルス対策には必要不可欠です。
セルフケアを労働者に取り組んでもらうためには、『生産性をあげるために有効である』ということを周知することが重要です。
①メンタルヘルス不調の初期症状の例
<身体面>
肩こり、頭痛、だるさ、睡眠障害、食欲不振、過食、発汗、依存傾向(アルコール、カフェイン、買い物など)
<精神面>
無気力感、集中力の欠如、イライラ、不安感、自責的な考え
<行動面>
遅刻や欠勤の増加、仕事におけるミスの増加、人に会いたくない、攻撃的な言動
※2週間~1か月以上同じような症状が続く場合は要注意
②セルフケアの方法
セルフケアには色々な種類があり、実施する人に会った方法を選んで実施することが効果的です。
<セルフケアの方法の例>
・呼吸法
・ストレッチ、軽い運動
・十分な休息、睡眠
・気分転換
・周囲に相談する
③ストレスチェックの実施
職場のメンタルヘルス対策として実施するストレスチェックは、労働者にセルフケアを理解してもらうよい機会です。
ストレスチェックの結果は、自分自身のストレス状態が可視化され振り返る材料となります。
ストレスチェックの実施とあわせて、セルフケア研修などを実施するのもよいでしょう。
2.ラインケアとは
ラインケアとは、直属の上司などの管理監督者が部下の不調に気付き、相談対応や職場環境改善などの取り組みを行うことをいいます。
管理監督者は、部下の健康を守るという役割も課されており、部下からの相談への対応や職場環境の把握・改善など、メンタルヘルス対策で大きな役割を担っています。日常的にコミュニケーションをとっている上司は、部下の不調の早期発見、細やかなケアをするうえでも重要な存在です。
①上司に求められるもの
・いち早く気づくこと
『いつもと違う』ことに早く気づくことが大切です、そのためには『いつも』の部下を知っておく必要があり、普段からコミュニケーションをしっかりとることが重要です。
・傾聴する
部下の状態を受け止め、相手の立場に立って話を聞くことが重要です。
・個人情報の保護
健康情報の取扱いは十分な注意が必要です。また、情報を保護する姿勢が信頼関係の構築にもつながります。
②ラインケアを適切に実施するために事業場として実施すべきこと
管理監督者に対しラインケア研修を実施するとよいでしょう。また、産業保健スタッフがラインケアを実施する側の管理監督者の相談にのるなど、連携できる体制を整えておくことが重要です。
管理監督者が、部下の不調に気付きやすいように、1on1を定期的に実施するようにしたり、ストレスチェックを基にした職場環境の評価や衛生委員会での審議など、組織として職場環境を整えることも重要です。
3.まとめ
職場における健康づくりにおいて、セルフケアとラインケアは非常に重要です。
不調となった労働者の対応も重要ですが、自分で自分をケアする方法を伝える、環境を整えるなど産業保健スタッフには『予防』に着目した活動が求められます。
また、ラインケアが効果的に実施されるためには管理監督者のケアが欠かせません。産業保健スタッフは、日頃から管理監督者とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いていくことが重要です。