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リスクアセスメント対象物質とは。関連用語も解説

令和6年度から毎年2月に、職場における危険・有害な化学物質管理の重要性に関する意識高揚と化学物質管理活動の定着を目的として、厚生労働省と環境省が連携し、【化学物質管理強調月間】が創設されました。

自律的な管理が令和6年4月から全面的に施行されており、新たな規制の対象となる物質は、リスクアセスメント対象物質とよばれ、令和8年4月までに約3000種類程度が指定される予定です。
本記事では、化学物質管理強調月間として、化学物質管理者と保護具管理責任者に続きリスクアセスメント対象物質とは何か、またそれに関連する用語について解説します。


【目次】
1.リスクアセスメント対象物質とは
2.根拠法令
3.法改正の背景
4.まとめ


1.リスクアセスメント対象物質とは

リスクアセスメント対象物質とは、国によるGHS分類の結果、ラベル表示やSDS交付、リスクアセスメントの実施が義務である対象物質のことです。

■GHS分類

GHSとは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(The Globally Harmonaized System of Classification and Labelling of Chemicals)の略語です。
2003年7月に国連で採択され、世界的に統一されたものです。

■ラベル表示

ラベルは、化学物質の危険有害性や取扱い上の注意事項等の情報を、わかりやすく絵やシンボルを活用して、直接労働者に伝えるツールです。絵表示は、ピクトグラムで示され、9種類あります。

■SDS

SDSとは、安全データシート(Safety Data Sheet)の略語であり、事業者が化学物質および化学物質を含んだ製品を、他の事業者に譲渡または提供する際に交付する化学物質の危険性と有害性の情報を記載した文書のことです。



2.根拠法令

■義務となっているもの

リスクアセスメント対象物質に該当する下記の化学物質及びそれを含有する混合物は、下記の法律によりラベル表示、SDS交付が義務となっています。

  • 労働安全衛生法施行令別表第3第1号で定める製造許可物質
  • 労働安全衛生法施行令別表第9で定める表示・通知義務対象物質
  • 上記物質を含有する混合物(裾切値あり)

■努力義務となっているもの

労働安全衛生規則第24条の14及び第24条の15に基づき、表示義務または文書交付義務対象物質以外の危険有害性を有するすべての化学物質、及びそれを含有する混合物についても、ラベル表示及びSDS交付が努力義務とされています。ただし一般消費者の生活の用に供するための製品は除外されます。
なお、今後はラベル表示やSDS交付が義務となるリスクアセスメント対象物質が大幅に増加し、国によるGHS分類で危険性・有害性が確認されたすべての物質が順次追加される予定です。そのため、随時確認する必要があります。


3.法改正の背景

日本では化学物質管理において、従来はいわゆる「法令準拠型」といわれるような方法をとっていきました。
しかし、化学物質による健康被害による休業で4日以上となっているものの約8割は、法規制の対象外の物質が原因であるという現状があります。化学物質は数万種類もあり、年々増加傾向にあるなか、法令準拠型の対策で健康障害を防止することは現実的ではありません。化学物質を自律的に管理することは世界的な潮流でもあります。法を遵守すればそれでいい、ということではなく、事業場が主体的に化学物質管理に取り組むことが求められています。


4.まとめ

事業者は、従来のように特定の化学物質に対して規制をかけるのではなく、「危険性・有害性が確認されたすべての物質について、国が定める管理基準の達成を求め、達成のための手段は指定しない方式」にすることが方針の根幹です。
それを実現するためには、事業者が、危険性・有害性を理解しそれに対する対策を講じることができること、SDSを正しく読み取り、リスクアセスメントを適切に実施することが求められます。
産業保健スタッフは、事業者や労働者が適切に化学物質管理ができるように、事業場の実情を踏まえ、体制の整備を含めた支援をすることが求められます。

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