働く女性の数は年々増加し、職場における女性の活躍はますます重要になっています。
それに伴い、職場で扱うべき健康課題も、月経、妊娠・出産、更年期、婦人科疾患など、よりライフステージに即した視点が求められるようになっています。
健康経営でも女性の健康課題への取り組みが重視されており、企業にとって、こうした健康課題への対応は「個人の問題」ではなく、組織として取り組むべきテーマとなっています。
本記事では、女性の健康課題をライフステージごとに整理しながら、職場で求められる支援策と、産業保健スタッフに求められる役割を解説します。
目次
- はじめに:なぜ今、職場で「女性の健康」を扱うのか
- 背景:ライフステージごとに変わる健康課題
- 職場での支援:法令遵守とさらなる取り組み
- 産業保健スタッフの役割:4つのポイント
- まとめ:女性の健康支援で、誰もが働きやすい職場づくりへ
1. はじめに:なぜ今、職場で「女性の健康」を扱うのか
働く女性の数は年々増加しており、年齢階級別の就業率を見ても、かつての「M字型」から、妊娠・出産後も就業継続する「台形」に近づいていることが示されています。
働く女性が増えている一方で、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は年間で約3.4兆円とも言われており(※1)、性別や不調の有無、年齢に関わらず、組織全体で女性の健康について理解を深め、適切な対応を進めることが望まれます。
※1 出典:経済産業省 令和5年度「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」
2. 背景:ライフステージごとに変わる健康課題
女性の健康課題は、女性ホルモンの分泌量に大きく影響を受けるため、ライフステージごとに様々な健康課題があります。
■月経困難症・月経前症候群(PMS)など
強い月経痛などの月経に関する異常症状や、月経前症候群(PMS)がある場合でも、「何も対処をしていない」人が最も多いという調査結果が出ています。(※2)月経の痛みや、不調を緩和できる薬(鎮痛薬、漢方、低用量ピルなど)の服用の相談、子宮や卵巣の病気の早期発見のためにも、早めの婦人科・産婦人科の受診が重要です。
※2 出典:特定非営利活動法人日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
■妊娠・出産
妊娠・出産を通じて女性ホルモンは大きく変化し、女性の心身には大きな負担が生じます。妊娠中はつわりや貧血などの不調、産後はホルモンバランスの乱れにより産後うつなどのメンタルヘルス不調や育児による睡眠不足などが生じることがあります。
育休・産休の前後では、体調によって仕事との両立に影響が出やすく、職場での理解と支援制度が必要となります。
■女性のやせ
若い就労世代(20~30歳代)の女性のうち、20.2%がやせ(BMI<18.5 kg/m²)であり(※3)、将来不妊症や胎児や生後早期の赤ちゃんへの悪影響のほか、女性が年齢を重ねて中高年になった際の健康障害などが懸念されています。
※3 出典:令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)
■更年期症状
閉経の前後(45歳~55歳頃)の女性に見られる症状で、卵巣機能低下に伴う女性ホルモンの減少により、易疲労感、汗をかきやすい、冷え、イライラなど様々な不調が見られます。
症状は自然と軽快することも多いですが、生活に支障が出る場合は我慢せずに婦人科を受診し相談することが重要です。
■女性のがん
就労世代で見ると、20代後半から50代まで、女性のがん罹患率は男性を上回っています。(※4)
特に乳がん・子宮頸がんは若い世代の罹患数が多く、早期発見・早期治療により完治が期待できるため定期検診が重要です。
※出典4 :国立がん研究センター情報サービス「全国がん罹患データ」2023年
職場では、乳がん検診や子宮頸がん検診の促進、また、がんを抱えながらでも適切な就業上の措置や治療に対する配慮ができるよう、両立支援に取り組む必要があります。
3. 職場での支援:法令遵守とさらなる取り組み
妊娠・出産後も働き続ける女性は増えており、企業には法律に基づく対応に加え、安心して働き続けられる環境整備が一層求められています。
① 会社が行うべき措置(義務)
会社は、法律に基づき、妊娠や出産の時期に必要な対応を行う義務があります。特に押さえておきたいポイントは以下です。
■ 妊娠・出産に関する措置(義務)
• 健診・保健指導を受ける時間の確保
• 通勤緩和や休憩の配慮
• 妊娠・産後の不調症状への配慮
• 時間外・休日労働・深夜業の制限
• 産前産後休業、解雇制限 など
■ 育児との両立支援の強化(義務)
• 育児休業
• 短時間勤務制度(3歳未満)
• 所定外労働の制限(残業免除)
• 時間外・深夜業の制限
• 柔軟な働き方(選択制度)
• 両立に関する個別の意向聴取・配慮 など
■ 母健連絡カードへの対応
医師からの指導事項や必要な措置について記載された母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)をもとに、適切な措置を講じる義務があります。
② 職場でできる取り組みと支援(任意)
健康経営の観点からも、女性の活躍推進の一環として、様々な取り組みを行う企業が増えています。
• 婦人科健診・検診の費用補助
• 女性の健康に関する相談窓口
• 女性の健康に関する研修・セミナー
• 生理休暇を取得しやすい環境整備
• 不妊治療のための休暇・休職制度 など
4. 産業保健スタッフの役割:4つのポイント
女性の健康課題に関して、産業保健スタッフに期待される役割は、大きく4つあります。
① 健康課題のアセスメント
健診結果の集計・分析や、日頃の健康相談・面談から得られる従業員の声、健康施策、女性の健康に関するアンケートなどから、健康課題を明確化します。
② 就業上の配慮
健康診断の就業判定や母健連絡カード、女性労働者からの健康相談など、就業上の影響で心身の健康状態の悪化が懸念される場合は、必要に応じて受診勧奨や主治医と連携の上、産業医より就業上の配慮について意見書を提出します。
今後、一般健康診断に女性特有の健康課題に関する問診(女性の健康問診)を追加し、健康課題があると回答した労働者に対し健診機関より情報提供や専門医への受診勧奨を行う取り組みが厚生労働省より示されています。
引用:厚生労働省 女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル(事業者向け)
産業保健スタッフは、女性労働者が健康課題に対する配慮について申し出を行いやすい職場づくりのほか、就業上の配慮を検討するにあたり、本人や職場、人事、主治医とのコミュニケーションや橋渡しが求められます。
③ ヘルスリテラシーの向上
女性の健康課題に向けた取り組みとして、女性だけではなく男性も含めて情報提供や健康教育、研修を行い、職場のヘルスリテラシーを向上させることが重要です。ライフステージによる健康課題やセルフケア、婦人科検診の重要性、相談窓口について啓発したり、管理職向けにラインケアや具体的なサポートについてお伝えしたりすると良いでしょう。
④ 健康相談
前述したように、女性は月経痛やPMSなどの症状で悩んでいても、相談や受診など改善に向けた行動を取れていない方が多くいます。社内の産業保健スタッフの相談窓口を周知する、女性の健康相談窓口を設けるなどで、気軽に専門家に相談できる環境を整えることが重要です。
5. まとめ:女性の健康支援で、誰もが働きやすい職場づくりへ
働く女性の増加に伴い、女性特有の健康課題への対応は、個人ではなく組織として取り組むべき重要なテーマとなっています。ライフステージごとに健康課題は異なりますが、就業へ影響することもあるため、職場での理解と支援が欠かせません。
企業には女性が安心して働き続けられる職場環境の整備が求められ、その中でも産業保健スタッフは、健康課題の把握や就業上の配慮に向けた専門職としての意見、ヘルスリテラシーの向上、相談しやすい体制づくりなどを通じて、専門的かつ総合的な支援を担う存在です。
女性の健康支援の充実は、すべての従業員にとって働きやすい職場づくりにつながります。多様な人材が安心して力を発揮できる環境を目指し、継続的に取り組んでいくことが重要です。
まずは講話資料などを活用しながら、職場内の理解を広げることから始めてみてはいかがでしょうか。




