「最近なんだかストレスが多いな」と感じることはありませんか。
忙しさや人間関係のプレッシャーなど、私たちの生活にはさまざまなストレス要因があります。
しかし、同じ出来事でも「ストレスフル」と感じる人もいれば、そうでない人もいます。
では、この“ストレスフル”という感覚は、どのように生まれるのでしょうか。
<目次>
1.「ストレスフル」とはどんな状態?
2.同じ出来事でも反応が違うのはなぜ?
3.認知の傾向に気づくことの大切さ
4.産業保健スタッフによる支援のポイント
5.まとめ
1.「ストレスフル」とはどんな状態?
「ストレスフル」は、“ストレスが多い状態”“心身に負荷がかかっている状態”を指す言葉です。医学的な診断名ではありませんが、心理学的には「ストレス反応が強まっている状態」や「認知の偏りが生じている状態」として理解されます。
つまり、“ストレスフルな状態”とは、外からの刺激(出来事)に対して、心や体が過敏に反応している状況を指します。ここで重要なのは、「同じ出来事でも人によって反応が違う」という点です。本記事では、この考え方を踏まえ、産業保健の現場で役立つ支援のヒントを紹介します。
2.同じ出来事でも反応が違うのはなぜ?
心理学者のラザラスとフォルクマン(1984)は、「ストレス反応は、出来事そのものではなく、それを『どう受け止めるか(認知)』によって変わる」と説明しました。
たとえば、上司に注意されたときに、 「成長のチャンスだ」と受け止める人は冷静に対処できますが、「自分はダメだ」と感じる人は強いストレスを感じやすくなります。
このように、ストレスは「出来事 → 認知 → 感情・身体反応 → 行動」という流れで生じます。ストレスを軽減するためには、自分がどのような認知の傾向を持っているかを知ることが大切です。
3.認知の傾向に気づくことの大切さ
私たちは、過去の経験や価値観にもとづいて、ものごとを自動的に判断しています。
この「考え方のクセ(認知の傾向)」が、ストレスの感じ方を大きく左右します。
たとえば、以下のようなパターンがあります。
- 完璧主義タイプ:「失敗してはいけない」「100点でないと意味がない」と考えやすい
- 他者評価重視タイプ:「周りからどう見られるか」が常に気になる
- 自己否定タイプ:「自分はいつもダメだ」と感じやすい
- 過度な一般化タイプ:「一度うまくいかなかったから、もうダメだ」と結論づけやすい
これらの思考傾向は誰にでもありますが、強くなりすぎるとストレスを増幅させます。
面談などでこうした「認知のクセ」に気づけるよう支援することは、ストレス軽減の重要な第一歩です。
4.産業保健スタッフによる支援のポイント
ストレスフルな状態にある人は、自分のストレス要因を客観的に捉えることが難しくなります。そのため、産業保健スタッフとの面談を通じて、「どんな考え方がストレスを強めているのか」を一緒に整理していく支援が有効です。
■ストレスチェックを活用する
ストレスチェック制度は、従業員が自分のストレス状態を把握し、高ストレスと判定された場合には、医師による面接指導を受けることができる制度です。結果をもとに、本人と話し合いながら、ストレス要因の受け止め方や、必要に応じて環境面の改善策を検討します。
■外部EAP機関(外部相談機関)の活用
社内の面談だけで十分に支援できない場合や、本人が上司・同僚に知られたくない悩みを抱えている場合には、外部EAP機関(Employee Assistance Program)の利用が有効です。EAP機関では、臨床心理士などの専門カウンセラーが、仕事やプライベートを含めた幅広い相談に応じます。社員は匿名で利用でき、必要に応じて医療機関や社内支援につなげることも可能です。
5.まとめ
「ストレスフル」と感じる背景には、出来事そのものではなく、「それをどう受け止めているか」という認知のプロセスがあります。産業保健スタッフは、社員の認知の傾向やストレス耐性に目を向け、支援の際には「感じ方の違い」を尊重する姿勢が大切です。社員自身が「自分はどんな時にストレスフルになりやすいのか」に気づくことが、回復と成長の第一歩です。
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■参考
1)ストレスチェック制度導入マニュアル|厚生労働省
2)これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~|労働者健康安全機構/厚生労働省
3)ストレスと上手に付き合うための認知的評価とコーピング:理論編|アドバンテッジJOURNAL
■執筆/監修
<執筆>
久木田 みすづ (精神保健福祉士、社会福祉士、心理カウンセラー)
福祉系大学卒業後、カウンセリングセンターの勤務を経て、心療内科クリニック・精神科病院で精神保健福祉士・カウンセラーとして従事。うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんと家族に対する相談や支援に力を入れる。
現在は、主にメンタルヘルスの記事を執筆するライターとして活動中。
<監修>
難波 克行 先生(産業医、労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆。YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信。
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』