安全委員会/衛生委員会とは?委員会における産業看護職の役割を解説!
労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の事業場では安全委員会、衛生委員会、またはこれらを統合した安全衛生委員会の設置が義務付けられています。これらの委員会は、労働者の安全と健康を守るために労使が一体となって取り組む重要な役割を担っています。
この記事では、委員会の目的、設置基準、調査審議事項、産業看護職の役割についてお伝えいたします。
【目次】
1.委員会とは
1-1.委員会の目的
1-2.委員会の設置
1-3.委員会の周知と記録の保存
2.衛生委員会
3.安全委員会
4.委員会の進め方
5.委員会における健康講話
6.委員会における産業看護職の役割
1.委員会とは
労働安全衛生法に基づき、一定の規模に該当する事業場では、安全委員会、衛生委員会、または、両方を統合した安全衛生委員会を設置しなければいけません。
1-1.委員会の目的
委員会は、労働者の安全や健康を守るための基本となる、労働災害の原因及び再発防止対策などについて調査や検討を行います。安全衛生の取り組みは労使が一体となって行う必要があり、労働者の意見を反映させるよう、十分な調査審議を行う必要があります。事業者は委員会の意見や調査審議の結果を踏まえて適切な措置を実施します。
1-2.委員会の設置
委員会を設置しなければならない事業所は、業種や従業員数によって異なります。詳しくは下記の表に記載しています。衛生委員会と安全委員会の両方を実施しなければならない事業所は、それぞれの委員会の設置する代わりに安全衛生委員会を設置することができます。事業所がどの業種に当てはまるか分からない場合、労働基準監督署に問い合わせるとよいでしょう。
出典:安全委員会、衛生委員会について教えてください|厚生労働省
<委員会の設置義務がない事業所>
労働者数が50人未満の事業所においては、安全委員会、衛生委員会の設置義務はありませんが、安全衛生委員会等に代えて、安全や衛生等に関する事項について、関係する労働者の意見を聞くための機会を設けなければなりません(安衛則第23条の2)。
1-3.委員会の周知と記録の保存
<労働者への周知>
事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく委員会における議事の概要をいずれかの方法によって労働者に周知しなければなりません(安衛則第23条の3)。議事の概要というのは、議事録よりも読みやすい形で委員会の内容をまとめたものです。議事録そのものを周知する方法でも構いません。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける ② 書面を労働者に交付する ③ 電子データとして記録し、各作業場の労働者が常時確認できる機器を設置する |
<記録の保存>
事業者は、委員会の開催の都度、次の3つの事項を記録し3年間保管しなければなりません。議事録を作成する際には、次の事項が含まれるようにします。
① 委員会から事業者への意見内容 ② 意見を踏まえて実施した措置の内容 ③ 委員会における議事内容で重要なもの |
2.衛生委員会
衛生委員会は、労働安全衛生法第18条等により、労働者の健康の確保に関して必要なことに関して調査審議することを目的として設置されています。
衛生委員会の設置は、業種に関わらず50名以上の従業員規模の事業所において、毎月1回以上の実施が義務付けられています。
<衛生委員会の構成>
衛生委員会の構成は次の通りです。
① 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者(1名) ② 衛生管理者のうち、事業者が指名した者 ③ 産業医のうち、事業者が指名した者 ④ 当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有するもののうち、事業者が指名した者 ※任意:当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士のうちから事業者が指名した者 |
<衛生委員会の調査審議事項>
調査審議の事項は次の通りですが、全てやらなければならないということは特に定められていません。事業所の必要に応じて判断していくと良いでしょう。
1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。 2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。 3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。 4. 衛生に関する規程の作成に関すること。 5. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。 6. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。 7. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。 8. 化学物質の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 9. 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。 10. 定期健康診断等の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 11. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。 12. 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。 13. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。 14. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。 |
出典:安全委員会、衛生委員会について教えてください|厚生労働省
衛生委員会は、労働者個人ではなく事業所全体としての対応を調査審議するため、個人の名前や健診結果等をそのまま提供することは望ましくありません。必要な情報は匿名化する等、個人が特定されないよう注意しましょう。
3.安全委員会
安全委員会とは、労働安全衛生法第17条等により、労働者の安全の確保に必要なことについて調査審議すること目的として設置されています。
安全委員会は法令で定める設置基準を満たす場合、毎月1回以上の開催が義務付けられています。
<安全委員会の構成>
① 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(1名) ② 安全管理者のうち、事業者が指名した者 ③ 安全に関し経験を有する労働者のうち、事業者が指名した者 |
<安全委員会の調査審議事項>
調査審議の事項は次の通りですが、衛生委員会同様に全てやらなければならないということは定められていないので、事業所の必要に応じて判断していくと良いでしょう。
1. 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。 2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。 3. 安全に関する規程の作成に関すること。 4. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。 5. 安全衛生に関する計画(安全に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。 6. 安全教育の実施計画の作成に関すること。 7. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は産業安全専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の危険の防止に関すること。 |
4.委員会の進め方
年度の初めに事業所の安全衛生活動についての計画を作成し、それに沿って年間の活動や安全衛生委員会での審議を進めていく方法が一般的です。また、労働災害や通勤災害などが発生したとき、職場巡視の結果で問題が生じたとき、その他、職場の安全衛生上の問題が生じたときには、安全衛生委員会で調査結果を報告したり、対策を審議したりします。
事業所の安全衛生に関わる主要なメンバーが集まる機会ですので、委員会の前後に職場巡視を行っている事業場もあります。
5.委員会における健康講話
衛生委員会・安全衛生委員会の中で、産業医や産業看護職から10分程度の短い健康教育を実施することもあり、「健康講話」などと呼ばれています。健康講話は法令によって義務付けられた活動ではありませんが、産業保健専門職の存在や役割を事業所内に周知する機会のひとつです。また、事業所の健康づくり活動や安全衛生活動を推進するきっかけにすることもできます。
健康講話の内容は、季節ごとの健康づくりの話題や、健康診断やストレスチェックに関する話題、メンタルヘルスに関する話題、事業所の安全衛生上の課題に関連した話題、安全衛生の法改正に関する話題など、多岐にわたります。
6.委員会における産業看護職の役割
産業看護職は産業医や衛生管理者と異なり、衛生委員会・安全衛生委員会の構成員として法令で定められていません。委員会への出席は各事業所の判断により任せられているため、産業看護職における委員会への参加が不要とされている事業所も少なくないでしょう。
しかし、衛生委員会・安全衛生委員会の主な目的は「労働者の健康の確保」です。事業所の安全衛生活動を担当する産業看護職が出席することで、事業所の方針との認識のすり合わせ、産業看護職として感じている課題や活動の報告などが行えます。委員会で報告する事項の例としては、面談実施人数や休職者・復職者の対応件数などの定期的な活動の報告に加えて、定期健康診断の分析結果や健康施策の振り返り等、年度の施策について報告・審議等があります。
また、委員会の事務局の一員として、委員会の運営そのものをサポートできます。事業所で行う健康づくり活動や、その計画作りに、より深く関わることも可能です。事業所における安全衛生活動をうまく推進していけるよう、衛生委員会・安全衛生委員会を効果的に活用できると良いですね。
執筆:さんぽLAB運営事務局 保健師
監修:難波 克行 産業医
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■監修医師
産業医 難波 克行 先生
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』
■参考文献
安全委員会、衛生委員会について教えてください|厚生労働省
職場のあんぜんサイト:安全委員会|厚生労働省
職場のあんぜんサイト:衛生委員会|厚生労働省
職場の健康がみえる|医療情報科学研究所 メディックメディア