「安全衛生管理体制」チェックリスト/解説記事/手順書
安全衛生管理体制とは、労働安全衛生法に基づいた事業者の責務を果たすために、それぞれの権限をもった役職等で構成される職場内の組織のことで、産業保健活動の土台といえます。
産業保健スタッフは、職場の現状を把握して理解を深めるだけでなく、関係部署と連携して体制を構築していくことが求められています。
以下のSTEPに沿って、安全衛生管理体制の構築にお役立てください!
STEP 1 チェックリストで職場の課題を可視化
STEP 2 解説を読んで根拠や活用できるコンテンツをチェック
STEP 3 手順書をダウンロードして体制づくり
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それぞれの項目をクリックいただくと、その課題についての根拠や関連コンテンツ、活用できるフォーマット等が閲覧できるようになっております。ご自身の理解を深めるためにご利用ください。
■衛生管理者
■産業医
■衛生委員会
■安全衛生教育
■衛生管理者
衛生管理者とは、職場での労働者の健康障害を防止するための業務を管理する人のことです。法令により、一定の規模の事業場には衛生管理者を選任し、職務に必要な権限を与えることが義務付けられています。
衛生管理者について、詳しくみていきましょう。
▶選任義務(選任基準)
労働安全衛生法;安衛法12条1項により、事業者は、事業場の規模に応じた人数の衛生管理者を選任することが義務付けられています。
安全衛生規則;安衛則7条1項により、原則として、衛生管理者は全員、その事業場に専属とすることが定められています。専属とは、その事業場に勤務していることを指します。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、その中に労働衛生コンサルタントが1人以上いる場合は、その労働衛生コンサルタントのうち1人については専属でなくてもよいと定められています。
労働者数50人以上の全ての業種で衛生管理者は選任する必要があります。
・50人以上から200人以下 1人以上
・200人超~500人以下 2人以上
・500人超~1000人以下 3人以上
・1000人超~2000人以下 4人以上
・2000人超~3000人以下 5人以上
・3000人超 6人以上
▶資格要件
選任できる衛生管理者は、事業場の業種によって異なります。
① 衛生(健康)管理の必要性が特に高いものとして法令で定める業種
<業種>
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業
<資格>
・第一種衛生管理免許若しくは衛生工学衛生管理者免許又は医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、厚生労働大臣の定める者
② ①以外の業種
<資格>
・①の資格保持者、または第二種衛生管理者
▶選任時期と選任報告
衛生管理者の選任は、安衛則7条により、衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、衛生管理者を選任したときは、選任報告書を所轄労働基準監督署に提出することが義務付けられています。衛生管理者が病気や出産などで長期に休業する時には、衛生管理者を別に選任しなおすか、衛生管理者の代理を立てることが必要です。
また、衛生管理者を選任することができないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは、選任が免除されます。(特定の者を衛生管理の業務につかせることを条件として、1年の猶予期間を設ける等)
▶衛生管理者の役割
衛生管理者は以下の業務のうち、労働者の健康障害の防止のための対策に関することを行います。また、週1回の職場巡視、衛生委員会への出席(複数いる場合は、事業者が指名した者)が義務付けられています。
1.労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
3.健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
4.労働災害防止の原因の調査及び再発防止策に関すること
具体的には以下のような業務を行います。
1.安全衛生に関する方針の表明に関すること
2.安全衛生に関する計画の作成、実施、評価、改善に関すること
3.リスクアセスメントの実施や措置における健康障害の防止に関すること
4.健康に異常がある者の発見および措置
5.作業環境の衛生上の調査
6.作業条件、施設等の衛生上の改善
7.労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
8.衛生教育、健康相談、その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
9.労働者の負傷・疾病、それによる死亡・欠勤・移動に関する統計の作成
10.その他、衛生日誌の記載など職務上の記録の整備
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まとめ
衛生管理者は、労働者の健康障害を防止し、職場の衛生と健康を守る重要な役割があります。産業保健スタッフが兼務する場合もありますし、そうでない場合も産業保健スタッフと連携する機会も多くあります。まずは、法を遵守するために、衛生管理者の役割や定められている内容を正しく理解できるようにしましょう。
■産業医
産業医とは、事業場において、労働者の健康管理と医学に関する専門的知識を必要とする業務を行う医師のことです。 産業医の設置基準や職務内容は労働安全衛生法;安衛法で規定されています。労働者の安全と健康を守るためには、産業医を選任するだけでなく、法令にのっとった活動を適切に行う必要があります。法令を遵守するために、詳しくご紹介します。
▶選任義務(選任基準)
安衛法13条1項、安衛法施行令5条、労働安全衛生規則;安衛則13条1項により、事業者は、事業場の規模に応じた人数の産業医を選任することが義務付けられています。
労働者数50人以上の全ての事業場で産業医は選任する必要があります。
(1) 労働者数50人以上999人以下 1人以上嘱託可。ただし、労働者500人以上で有害業務に該当する事業場は専属)
※有害業務 安衛則13条1項2号 衛生管理者の選任基準と似ているが別なので注意が必要
(2) 1000人以上3000人以下 1人以上専属
(3) 3001人以上 2人以上専属
また、以下に該当する場合、産業医になることはできません。
・事業者が法人の代表者
・事業者が法人出ない場合、事業を営む個人
・事業場においてその事業の実施を統括管理するもの
▶資格要件
産業医にあるためには、医師免許に加えて、以下の所定の要件のうちのいずれか一つを満たす必要があります。
① 所定の研修を修了したもの
② 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学を卒業し、その大学が行う実習を履修した者
③ 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
④ 学校保健法における大学にいて労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授または講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、またはあったもの
⑤ ①~④に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
⑥ 1996年10月1日より前に①に規定する研修に担当する研修として厚生労働大臣が定めるものの受講を開始し、その研修を修了した者
⑦ 1996年10月1日より前から産業医として働いており、1998年9月30日において産業医として労働者の健康管理等を行った経験年数が3年以上である者
(安衛法13条1項2項、安衛則第14条、平成8年9月13日労働省令第35号附則1.2、平成8年9月13日基発第566号)
▶選任時期と選任報告
産業医の選任は、安衛則13条により、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、事業者は、産業医を選任したときは、選任報告書(総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告|厚生労働省)を所轄労働基準監督署に提出することが義務付けられています。
専属の産業医が必要となる場合で、候補者をすぐに見つけることが難しい場合には、『産業医の選任特例許可申請』を都道府県労働局長に提出し許可を受けたときは、特例を設けることができます。
▶産業医の職務
産業医の職務は多岐にわたりますが、主な職務特に法令で定められているものをご紹介します。
・健康診断の結果に基づいて、就業判定、保健指導等を実施し、労働者の健康確保のために必要な措置に関する意見を事業者に伝える
・ 長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック後の面接指導等を実施し、労働者の健康確保のために必要な措置に関する意見を事業者に伝える
・ その他、労働者からの健康相談、事業者からの相談、傷病者の職場復帰支援や治療と就労の両立支援に関する相談対応を行い、労働者の健康確保のために必要な措置に関する意見を事業者に伝える
・ 作業環境について、助言や指導を行う
・ その他、労働者の健康管理に関することで、助言や指導を行う
・ 毎月1回(※条件により2か月に1回)の職場巡視を実施する
・ 衛生委員会の構成員(事業場側)となり、医学的見地から意見を述べる
※産業医の職場巡視の頻度について: 産業医が、事業者から、毎月1回以上、以下の①②の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、2か月に1回でよいとされています。ただし、過重労働対策やメンタルヘルス対策などに注力するための措置であるため、単に職場巡視の日数を減らすだけでなく、労働者の健康管理業務を充実することが重要です。
① 衛生管理者が行う巡視の結果
② 労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの(例:長時間労働の面接指導が必要な労働者の氏名と労働時間、新規に使用される予定の化学物質や設備に関する状況、労働者の休業状況など)
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▶産業医の業務内容などの周知
事業者は、産業医の具体的な業務内容等を、常時労働者がみることができるように以下の方法のいずれかで、労働者に周知させることが義務付けられています。また、周知を義務付けられている事項は「産業医の業務の具体的な内容、産業医に対する健康相談の申し出方法、健康情報の取り扱い方法」です。
・常時各作業場のみやすい場所に掲示または備え付ける
・書面を労働者に交付する・電子データとして記録し、各作業場に労働者が常時確認できる機器を設置する
(安衛法11章101条)
まとめ
産業医は、医学的見地から『職場の健康を守る』ための業務を行います。
産業医と連携することにより、労働者はもちろん、職場全体の健全な経営にもつながります。産業医については、法令で定められている項目も多くあります。法令を遵守し、事業者と産業医の役割をしっかりと認識することが重要です。
■衛生委員会
衛生委員会とは、労働者の健康の確保に必要なことについて、調査審議を行う委員会のことで、労働安全衛生法;安衛法18条等で定められています。事業者は、労働者が50人以上の全ての業種の事業場で設置し、毎月1回以上開催することが義務付けられています。
▶委員
衛生委員会の委員の構成については、安衛法18条で以下のように定められています。
① 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者→1名
② 衛生管理者のうちから事業者が指名した者→1名以上
③ 産業医のうちから事業者が指名した者→1名以上
④ 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者→1名以上
⑤ ※任意※当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士のうちから事業者が指名した者→1名以上
上記①以外の委員については、事業者が委員を指名することとされています。なお、この内 の半数については、 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合 (過半数で組織する労働組合がない場合 は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名しなければなりません
▶議事の概要の周知
労働安全衛生規則;安衛則23条により、事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法で周知しなければならないと定められています。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
② 書面を労働者に交付すること。
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
▶議事の記録・保存
安衛則23条において、事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを3年間保存しなければならないと定められています。
①衛生委員会から事業者への意見内容
②委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
③前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの
▶調査審議事項
衛生委員会では、『特にこれをやらなければならない』ということは特に決められてはおらず、それぞれの事業場の衛生委員会が必要に応じて個別に判断して決めます。
衛生委員会で、調査審議すべき事項ついては、下記のようなものがあります。
· 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
· 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
· 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
· 労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
· 衛生に関する規程の作成に関すること。
· 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
· 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
· 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
· 化学物質有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
· 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
· 定期に行われる健康診断、臨時の健康診断、自発的健康診断及び労働安全衛生法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
· 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
· 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
· 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
· 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。
· 労働者の健康を確保する観点から必要なものとして産業医から調査審議を求められたこと
まとめ
衛生委員会は、労働者の健康障害の防止に関する議論を行いますが、その際、労働者個人のプライバシーへの配慮が必要です。具体的な個人名を挙げたり、個人の健康診断結果などをそのまま出したりするのではなく、そのような情報は匿名化・集約化などしたうえで調査審議に利用するようにとの規定もあります。(昭和47年9月18日基発第601号の1、昭和53年2月10日基発第78号)
衛生委員会は、事業場と労働者が対等に、健康的な職場づくりについて話し合う貴重な機会です。
充実した委員会となるよう、まずは法令で定められた内容を知り、事業場にあわせた形を作り上げていくことを意識することがおすすめです。
■安全衛生教育
安全衛生教育とは、労働災害を防止する観点から、事業者が労働者に対し、安全または健康を確保するために必要な知識や技能を教えたり、訓練を行ったりすることです。
安全衛生教育の講師は、教育する内容について十分な知識と経験を持つものが務めることが望ましく、また、安全衛生教育は、自社で実施するか、外部機関(外部講師)に委託することができます。
▶義務
①雇入時教育
雇用形態や事業場の規模に関係なくすべての労働者が対象となります。
具体的な教育内容は以下のとおりです。業種によって1〜4は省略できます。
1.機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること
2.安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能及びこれらの取り扱い方法に関すること
3.作業手順に関すること
4.作業開始時の点検に関すること
5.当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
6.整理、整頓及び清潔の保持に関すること
7.前各号に掲げるものの他、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
②作業内容変更時教育
作業内容が大幅に変更した労働者に対して実施します。
具体的な内容は、①雇入時教育と同様です。
③特別教育
労働安全衛生規則;安衛則36条で定められる危険有害業務に従事する従業員に初めて従事する際に実施します。
さらに、これを実施した際には、事業者は、受講者名、科目等の記録を作成し、3年間保管する義務があります。
④職長等教育
労働安全衛生法;安衛法第60条により、建設業、製造業(一部業種を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械処理業において、事業者は新たに職務に就くことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者に対し、特に必要とされる事項についての安全又は衛生のための教育を行う必要があります。概ね5年毎、もしくは機械設備等に大幅な変更があったときは、能力向上教育に準じた教育(再教育)を実施することが求められています。
▶努力義務
⑤危険または有害な業務に従事するも者に対する安全衛生教育
⑥安全管理者等労働災害を防止するための業務に従事する者に対する能力向上研修
⑦健康教育
その他、必要に応じて、事業者は自発的に安全衛生教育を実施することが推奨されています。
まとめ
近年は、身体的な安全だけでなくメンタル面での労働災害防止のためにも安全衛生教育は重要であるといわれています。
安全衛生教育は、労働災害防止の基本です。法を遵守することはもちろん、労働者の安全と健康のため、安全衛生教育を実施するようにしましょう。
STEP 3 手順書をダウンロードして体制づくり
手順書には、体制づくりの進め方が記載されています。実際に体制整備を実施する際に、関連部署に提供し、一緒に体制づくりを進めるためにご活用ください。
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