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産業保健スタッフの役割って?産業医や保健師、衛生管理者についてわかりやすく解説

産業保健スタッフの役割って?産業医や保健師、衛生管理者についてわかりやすく解説

産業保健におけるPDCAを回していく上で、必要不可欠なのが「産業医」「産業看護職」「産業心理職」「衛生管理者」など、産業保健スタッフです。産業保健スタッフには様々な役職が含まれており、産業保健スタッフがより機能する為にはそれぞれの役割や特徴を理解し、強みを活かしていくことが重要です。
この記事を読むことで、職場産業保健スタッフについて理解を深め、事業所の産業保健活動を効果的に進めていきましょう。

目次

1.産業保健スタッフとは
2.産業保健スタッフの種類と役割
2-1.産業医
2-2.産業看護職
2-3.衛生管理者
2-4.その他の専門職等
3.まとめ

1.産業保健スタッフとは

 産業保健スタッフとは、産業保健業務(労働者の健康を確保するための業務)に関わる全ての人のことです。産業保健スタッフには、産業医、保健師・看護師、心理職、衛生管理者、職場の人事労務担当者など、さまざまな役職が含まれます。それぞれの会社の中で、より詳しい定義をしているケースもあります。
労働者の健康確保と安全配慮は、事業所の責務であり、そのためには事業者が産業保健活動の主体となり、労働者も協力して進めることが望ましく、職場の実情に合う産業保健体制を作っていく必要があります。

2.産業保健スタッフの種類と役割

 事業者は、法令による規定や職場での需要に応じ、必要となる産業保健スタッフをそろえます。事業所内の産業保健スタッフについて例を示しながらみていきましょう。

2-1.産業医

 産業医は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識をもち、一定の要件を備えた医師として選任されています。

 産業医は、 産業保健チームにおいてその専門性からリーダーシップを発揮することが期待されます。産業保健活動や安全衛生活動の主体は事業者ですが、健康課題には医学や産業保健の専門知識を必要とされることが多いため、適切に産業医と事業者とが連携をすることが重要です。
産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項第1号から第9号までに定められています。
産業医の職務

2-2.産業看護職

産業保健の現場では、多くの保健師・看護師が活躍しています。産業保健分野で活動している看護職は、医療・保健に関する専門的な知識を持ち、かつ事業場の衛生に関わる技術的事項の管理者として衛生管理者に求められる要件を保有し、産業保健活動を実践している専門職です。

保健師は、職場の健康課題・事業場全体の健康課題にも取り組む等の集団的なアプローチと、所見の有無にかかわらず、労働者個人の健康度に合わせた対応など個々のアプローチの両方で事業場の労働者の健康管理を支援しています。
産業看護職の心得|さんぽラーニング

 そして、事業場の看護師も産業保健分野で活動している職種です。保健師と看護師は異なる専門性を持っているため、保健師と看護師とで実施する活動を分けている職場もあります。 しかし、産業保健分野では保健師・看護師ともに同じ役割を期待されていることも多く、保健師と看護師を合わせて、「産業看護職」と呼称されることが多いです。
 
 産業保健チームとして、産業看護職に期待される役割は、労働者の健康管理ですが、労働者から気軽に相談できる身近な専門職としての存在「窓口機能」、産業保健活動において、産業医・労働者・職場等を繋げる「ハブ機能」、そして産業医等との専門職間の「連携機能」は、特に重要な役割を担っています。
産業看護職に求められる機能

2-3.衛生管理者

 衛生管理者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任する必要があり、事業者の下で、衛生に関わる技術的事項を管理する役割があります。
 衛生管理者は、職場や作業について熟知していることが望ましく、職場や労働者に近い立場から選任することで、職場の衛生管理、労働者の健康管理の状況を的確に把握できます。 衛生管理者には、労働衛生に関する専門的な知識(原則として、都道府県労働基準局長の免許を受けていることが要件)を活かし、現場の状況に沿って産業保健活動を進めることが求められます。
また、衛生管理者には産業医・専門職・労働者・所属長等との調整、各種事務手続等の役割も担っています。

安全衛生管理体制|法令チェック

2-4.その他の専門職等

 これまでに紹介した専門職以外にも労働安全衛生法に規定のある職種についても紹介します。

◇総括安全衛生管理者

 総括安全衛生管理者は、事業場における安全と衛生に関する業務が適切かつ円滑に行われるよう、安全と衛生に関する業務を行う人を指揮する役割を担っています。安全と衛生を確保するためのどんなに良い方法があったとしても、それを実践できなければ何の意味もありません。総括安全衛生管理者は、それを指揮し実施に移せるよう、それ相応の権限と責任をもつことが求められており、事業所長や工場長などが選任されます。

◇心理職

 心理職は、心理学に関する専門的知識をもち、心の問題を抱える人の相談に応じ、支援を行う役割を担います。
心理職には、公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラーなど、様々な種類(資格)があります。心の健康づくりを担う専門スタッフとして、メンタルヘルスケアを効果的に実施するために、積極的な配置が推奨されています。

◇労働衛生コンサルタント

 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタント資格をもち、事業所などの求めに応じ、職場の労働衛生の管理状況に問題がないか、社外の専門家の立場から診断や指導を行います。
安全衛生管理スタッフの選任や労働者の健康を確保するための環境整備や措置が法令に基づき適切に行われているかを診断・指導を行う役割を担っています。

◇人事労務担当者

 職場の人事労務担当者は、産業保健チームの一員として、労働者の人事労務管理(勤怠、社会保険、福利厚生など)に関する事務手続きや連携調整を行います。これらの情報は、労働者の健康と密接に関わるものであり、産業保健専門職と連携して、労働者や事業場関係者・部署との調整等を行うことが多いです。
産業保健お勧め資格

3.まとめ

 産業保健活動を推進していくにあたり、専門職をはじめとする産業保健スタッフが、効果的に機能するためには、まずそれぞれの職種の専門性や特徴、活動状況を知ることが第一歩となります。
その役割は、互いに重なり合う部分が多くあるため、それぞれの強みを活かし、業務や役割の連携を行うことが重要です。
 チームによる産業保健活動は、事業者・労働者が一体となって大きなチームとして活動することにつながっており、事業場の課題解決、労働者の健康管理を積極的に進める大きな役割を果たしています。

■執筆:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■監修:難波 克行 産業医


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■監修医師のご紹介


産業医 難波 克行 先生

アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医

メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信

代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』


■参考文献


・メディックメディア|職場の健康がみえる 産業保健の基礎と健康経営 第1版
・厚生労働省|産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集 ~産業保健チームを効果的に活用しましょう!

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