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産業看護職の心得~意外と知らない企業で働く上での常識とは?~

産業看護職の心得【さんぽラーニング】
保健師や看護師などの「産業看護職」が、医療機関で勤務する看護職と異なるところは、「病院」ではなく「企業」に勤めているということです。

企業で働くためには、従業員個々のの健康増進だけに注目するのではなく、企業(事業所)等、組織の健康を考えたり、経営的な視点で健康を考えたりしなければなりません。
「企業の常識なんて今更聞けない!」と感じていらっしゃる方へ、「企業」で働くうえで覚えておきたい心得についてお話いたします。

目次

1.企業とは
2.産業看護職が知っておきたい!企業の常識とは?
3.企業における健康とは
4.産業看護職における対象者と業務
5.職場で健康に取り組む理由
6.さいごに

1 企業とは

そもそも、企業とはなんでしょう?
企業とは、営利、つまり利益を目的に生産活動を担っている組織・団体のことをいいます。
企業の中に、法人である株式会社や組合企業がふくまれており、多くの産業看護職は株式会社に所属していることと思います。
企業とは
株式会社は「株式」を発行することでお金を集め、その資本をもとに経営を行っていく会社のことをいいます。
株式を通して会社に出資している人を「株主」といい、株主は出資範囲で経営に責任を負います。社長、つまり代表取締役は、会社の経営権を多く持っていますが、ひとりで経営しているわけではありません。
取締役で行われる取締役会によって代表取締役の選任や経営や業務の監督が行われています。

また、労働安全衛生法等でよく使用される「事業場」や「事業所」とは事業を行う施設が存在するところのことを言います。産業保健において、事業場と事業所という言葉は、ほとんど同じ意味で用いられています。よく使用される言葉なので覚えておくと良いでしょう。

産業看護職の活動の場である職場は企業です。
その企業は、生産活動を担っていますので、労働者の健康を通じて、生産活動を促進させる、
つまり、「生産性を向上させる」ことが産業看護職の役割の重要な役割のひとつなのです。

2 産業看護職が知っておきたい!企業の常識とは?

産業看護職は、従業員と組織にかかわるため、役職・組織図を念頭に仕事をすることが求められます。
役職名や役割は、企業によってさまざまです。

・社長(代表取締役):一般的にその会社のトップです。
・本部長(統括部長):部を統括する管理職で、経営的な立場にいます。
・部長:部の長であり、経営的な視点での役割を担います。
・次長(副部長):部長の次の立場です。
・課長:課の長であり、現場サイドの立場に立った管理職といえます。
・係長(チームリーダー):係・チームの長。係・チームの業務遂行の責任者です。
・主任:現場のまとめ役で、管理職ではありません。

企業によって、「田中課長」のように名前と役職で呼ぶ場合と「田中さん」といったように役職をつけない場合があります。企業内の呼び方にあわせるとよいでしょう。
「田中課長さん」など、役職と「さん」や「さま」は一緒に使用しないのでご注意ください。

3 企業における健康とは

企業における健康管理とは何なんでしょうか?
WHOにおける健康の定義によると「健康とは、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態のことであり、単に疾病や虚弱がないということではない」と定義されています。
企業における健康
つまり、企業においては、病気や障害がたとえあったとしても、職場や周囲の配慮や本人の努力などにより、仕事を円滑にすることができ、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であれば、健康であるといえます。

産業看護職は、労働者をその状態で仕事ができる状態にするため、
病気の予防と、治療と仕事の両立、業務内容や職場の調整、周囲との関係構築などコーディネーターのような役割 も必要となります。

4 産業看護職における対象者と業務

①対象者

産業保健師の業務の対象となるのは企業の従業員です。従業員が職場に来る目的は「仕事をするため」であって、「健康になったり、病気を予防したりするため」ではありません。
その点で、産業保健師の目的と従業員の目的が一致していない場合が多くあります。ここに、産業看護職の業務の難しさとやりがいがあります。

そのため、産業看護職という役割や必要性を認識して『あの人に相談したい』と思ってもらえるような存在になるということがとても大切です。
企業や事業所の一員であるという自覚をもち、ビジネスマナーを大切にし、コミュニケーションスキルを学んでいく必要がある のです。

また、産業保健師は、従業員個人だけでなく組織も対象となるため、組織全体へのアプローチに加え企業や事業所へのアプローチも必要となります。
産業保看護職における対象者と業務
個人へのアプローチとしては、面談や保健指導、受診勧奨などがあります。
集団へのアプローチとしては、セミナーや健康だよりなどの啓発活動などがあります。
企業や事業所へのアプローチとしては、組織全体の健康課題の抽出や健康施策の立案、職場環境改善などがあります。
つまり、目の前にいる対象者個人だけではなく、組織全体、従業員同士の関係性や仕事の適正の調整、企業との調整など、全体を俯瞰するアセスメント能力が必要です。

②業務

産業保健師の業務には、健診結果のデータ分析や、健康教育資料のまとめや書類の管理などの事務作業が多くあります。そのため、基本的なPCスキルや文章力は必須です。

また、一日の業務の流れがほぼ決まっているわけではないので、自身で計画をたて、それを実行し、評価していく、という計画性や実行力、企画力なども必要とされます。
Excelの基本

5 職場で健康に取り組む理由

企業における産業保健師の役割を果たすためには、健康を経営的な視点でみる「健康経営」の考え方を理解しておくことも大切です。
企業が成長するためには、従業員一人一人のパフォーマンスを高め、生産性を向上させていく必要があります。

健康上の不安や問題があったり、その人の職場が安心できる場所でなかったりする状況であれば、従業員のパフォーマンスは低下します。従業員が心身共に健康であってこそ、企業は成長できます。
産業看護職は、従業員個人に向き合うことはもちろん、企業の経営にどうしたら貢献できるか、という視点を持てるとよいでしょう。
さんぽラーニング|職場における健康とは

6 さいごに

産業保健師には、従業員に寄り添い、メンタルケアや傾聴等、精神的に負荷のかかる業務も多くあります。さらに、1人職場であることも多くあり、自分で自分をケアすることや自ら学ぶことが非常に重要です。
一方で、自らスケジュールをたてて長期的な目線で取り組む業務が多くあるため、スケジュールに柔軟性を持たせることができるので、プライベートと両立しやすく、仕事の進め方を自分自身でコントロールしやすいといったメリットもあります。
企業で働くことは大変なこともたくさんありますが、企業や組織への理解を深めることで、より働きやすくなるはずです。柔軟に、楽しく仕事ができるとよいですね。

執筆:さんぽLAB運営事務局 保健師
監修:難波 克行 産業医


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1 件の返信 (新着順)
KK
2023/10/05 13:39

臨床からのキャリアスタートでしたが今では産業看護でのキャリアの方が長くなりました。産業看護職になりたての時は疾病ばかりに目がいってましたが、今では社員がどうすれば円滑に業務を遂行できるかに重きを置けるようになってきました。時々、道に迷いそうになってますが。初心に戻って考えることのできる貴重な記事、時々読み返しに来ようと思います!!


KKさま
いつもありがとうございます。
さんぽLAB 保健師の杉村です。

コメント頂きましてありがとうございます。凄くうれしいです!
業務に追われると、どこを目指しているのか迷子になることがありますよね…。
さんぽラーニングは産業保健の経験が浅い方だけでなく、経験を重ねた方へも、
ふと立ち返る場所としてご活用いただければ嬉しい限りです。
今後もコンテンツを増やしていきたいと思っておりますので、応援いただけますと幸いです!