再休業を防ぐ鍵は「リワーク」だけじゃない——産業保健スタッフが知っておくべき復職支援のいま
メンタルヘルス不調による休業者の増加が続く中、企業における復職支援の質が問われています。従来型のリワークに加えて、復職後のフォローや在宅勤務に対応した支援体制の整備が重要です。本記事では、産業保健スタッフが押さえるべき「再休業防止」のポイントを整理し、コロナ禍以降の支援のあり方について解説します。
1. メンタル不調の再休業リスクとその背景
厚生労働省のデータによれば、精神疾患の患者数は20年以上にわたり増加傾向にあり、企業ではメンタルヘルス不調による休業者も増加しています。
特に課題なのが「復職後の再休業」。再発率は回数を重ねるごとに上昇し、職場における継続的な支援の必要性が高まっています。
企業の休業者管理担当者へのアンケートでも、約20%が「再休業率が高い」と感じており、復職支援の質が問われる状況です。
2. 再休業リスクを下げる「リワーク」の有効性
再休業防止策として注目されるのが「リワーク(Return to Work)」です。これは、精神疾患で休職した従業員が職場にスムーズに復帰できるよう、医療機関や職業センターなどで行われるリハビリプログラムです。
実際に、リワーク利用者は非利用者に比べて復職後の就労継続率が高いというデータもあります。ただし、リワークはあくまで「復職までの伴走」。復職後の継続的支援も同様に重要です。
3. 復職後のケアと社内の理解醸成
復職後の支援として、人事・労務・産業保健スタッフが定期的に面談を行い、心身の状態を確認することが求められます。また、復職者への理解が不足していると、無意識にストレスを与え、再休業に繋がることもあります。
復職者への対応や業務配慮については、所属部署だけでなく、企業全体での共通理解が不可欠です。復職支援は「個人対応」ではなく「組織対応」として位置づけましょう。
4. コロナ禍以降のリワークと在宅勤務下の支援の工夫
従来は対面型が主流だったリワークも、コロナ禍以降はオンライン対応が広がりを見せています。一方で、復職者の状態把握が難しくなり、判断材料の「見える化」が課題に。
また、テレワークの普及により、復職者自身も周囲もリモート環境にある場合、変調の早期察知が困難です。復職後も安心して働けるよう、業務負荷調整や面談などのサポート体制をオンライン前提で再構築する必要があります。
5. 「復職がゴール」ではなく「継続就労の支援」へ
現在の多くのリワークプログラムは、復職までをサポートの範囲としています。しかし、再休業を防ぐためには「復職後の支援」も計画的に行うことが不可欠です。
特に在宅勤務など働き方が多様化する中で、従業員の状態は以前より見えづらくなっています。産業保健スタッフが関与し、本人・職場・医療との橋渡しをする体制づくりが、今後の復職支援に求められます。
6.まとめ:変化する働き方に合わせた復職支援を
リワークは重要な取り組みのひとつですが、それだけでは不十分です。復職後のケア、社内の理解促進、在宅勤務への対応など、より包括的な支援が産業保健スタッフには求められます。「復職をゴールにしない」体制づくりこそが、再休業防止のカギとなります。
出典
アドバンテッジJOURNAL
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