社会で働く中で、ある程度のストレスを感じながら過ごすのは自然なことです。しかし、ストレスの多い状態が長く続くと、慢性的なストレスとなり、心身に大きな負担をかけます。慢性的なストレスが続くと、うつ病などのメンタルヘルス不調や離職につながることもあります。この記事では、職場で起こりやすい「慢性的なストレス」の影響や、気づくためのサイン、支援のポイントについて解説します。
<目次>
1.慢性的なストレスが心身に与える影響
2.気づかれにくい「サイン」
3.産業保健スタッフが介入すべきタイミングと方法
4.まとめ
1.慢性的なストレスが心身に与える影響
この記事では数週間〜数か月以上ストレスにさらされている状態を「慢性的なストレス」と呼びます。一時的なストレスとは異なり、心身に次のような大きな影響を与えます。
■身体的な症状
慢性的なストレスによって、次のような不調がおこることがあります。
- 不眠や日中の強い眠気による業務への支障
- 下痢や吐き気などの胃腸の不調
- 頭痛、肩こり、背中の痛み
- 疲労感や倦怠感
また、性欲の減退や高血圧などの症状が出現するケースもありますし、免疫力が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなる場合もあります。
その他の身体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 動悸や息切れ
- めまい
- 手足の冷え
- 手足のしびれ
- 体重の急激な増減
- 発熱
- 原因不明の痛み
- 呼吸困難感
- 意識がもうろうとする など
■精神的な症状
精神的な症状としては、急に落ち込んだりイライラしたり情緒が安定しなくなりがちです。また、否定的な思考に囚われやすくなるため、やる気が落ち、集中力も低下しやすい傾向にあります。強い緊張感からパニック症状が生じ、人との接触を避けるようになる場合も少なくないでしょう。
他にも、精神的な症状には次のようなものが挙げられます。
- 喜怒哀楽を感じなくなる
- 異常に活動的になる(気分がハイになる)
- 孤独感や絶望感が強くなる
慢性的なストレスは精神面にも大きな影響を与え、それによって社会生活が送れなくなってしまう危険性もあるのです。
■行動面の症状
行動面の症状としては、ストレスを発散しようと暴飲暴食をしたり、逆に食事を全く摂らなくなったりするケースもあります。また、人によっては現実逃避する場合も。さらに、引きこもりがちになり、欠勤が続く場合もあります。
他にも、行動面の症状として次のようなものが挙げられます。
- 今まで好きだったことをしなくなる
- ケガが多くなる
- 考え込んだり独り言が増えたりする
- お風呂に入らなくなる(不潔になる)
- 服装や身だしなみを気にしなくなる
- 小さなことが気になってしまうなど
■病気を引き起こす可能性
慢性的なストレスは、目に見える不調だけでなく、さまざまな病気の発症や悪化に関与する可能性があります。代表的な疾患には、以下のようなものがあります。
- うつ病、適応障害、不安障害、強迫性障害
- 摂食障害、アルコール依存症
- 胃潰瘍、過敏性腸症候群などの消化器疾患
- 狭心症などの循環器系疾患
- 気管支喘息や過換気症候群などの呼吸器系疾患
- 蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症などの皮膚疾患
- 月経不順や更年期障害などの婦人科系疾患
- 自律神経失調症など
これらは、厚生労働省や関連学会でも慢性的なストレスとの関連が指摘されています。
2.気づかれにくい「サイン」
慢性的なストレスは、状態が重い場合には周囲が気づく場合もありますが、初期のサインは見逃されやすいものです。ここでは、早期発見につながる変化の例を紹介します。
■口数が減る
これまで積極的に発言していた人が、急に口数が減ることがあります。
ストレスが続くと自信がなくなり、感情のコントロールが難しくなって発言が減る傾向があります。会議や雑談への参加が減ってきたときは注意が必要です。
■仕事の効率が落ちる
慢性的なストレスの初期サインはささいな変化から始まります。
簡単な作業に時間がかかる、細かいことが気になる、といった変化もその一つです。
「疲れているだけ」と見過ごさず、いつもと違う点に気づくことが大切です。
■集中力の低下や注意散漫
睡眠不足や生活リズムの乱れが続くと、自律神経のバランスが崩れ、集中力が落ちます。その結果、ミスや予定忘れが増えることもあります。「もう少し頑張れば大丈夫」と無理をしてしまう傾向があるため、早めの気づきが重要です。
3.産業保健スタッフが介入すべきタイミングと方法
慢性的なストレスは、気づかないうちに進行し、心身の不調や休職につながることがあります。産業保健スタッフは、情報を適切に把握し、関係者と連携しながら、早期対応と再発防止の両面で支援していくことが求められます。
■早期発見の段階
産業保健スタッフは、管理職や人事担当者からの相談を通じて、社員の変化に関する情報を把握します。
業務への影響や勤務状況などを確認し、上司には声かけや対応方法を助言します。
不調が疑われる場合には医療機関の受診の提案や、高ストレス結果の有無や長時間労働がないかなどを確認し必要に応じて産業医面談を促し、早期対応につなげます。
■対応が必要になった段階
ストレスチェックの結果や面談の内容をもとに、職場や上司と連携し、業務内容や勤務環境の調整を検討します。過度な負担がかからないように支援し、改善後のフォローも継続します。
■再発防止・予防の段階
日常的に管理職と情報共有し、セルフケアやラインケアの研修、相談窓口の周知などを通じて、ストレスに気づきやすく、相談しやすい職場環境づくりを進めます。
4.まとめ
慢性的なストレスは、本人にも周囲にも気づかれにくく、気づいた時には状態が悪化していることがあります。長期化による疾患や離職につながる前に、適切な対処を行うことが求められます。
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■参考
1)ご存じですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
2)実践!ストレスマネージメントストレスの解決・解消と職場のコミュニケーション 心の健康10の原則付き|渡辺洋一郎
3)Tsutsumi et al. 2018. A Japanese Stress Check Program screening tool predicts employee long-term sickness absence: a prospective study. Journal of Occupational Health. 60: 55-63.
■執筆/監修
<執筆>
久木田 みすづ (精神保健福祉士、社会福祉士、心理カウンセラー)
福祉系大学卒業後、カウンセリングセンターの勤務を経て、心療内科クリニック・精神科病院で精神保健福祉士・カウンセラーとして従事。うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんと家族に対する相談や支援に力を入れる。
現在は、主にメンタルヘルスの記事を執筆するライターとして活動中。
<監修>
難波 克行 先生(産業医、労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆。YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信。
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』