産業保健データの管理で、現場で最も課題を感じる点は?【産業保健スタッフの投票結果から】
はじめに
産業保健業務では、健診結果や面談記録、ストレスチェック結果など、多くの健康データを日々取り扱います。その中で、管理方法に課題を感じるケースも少なくありません。
今回は、産業保健スタッフの皆さまに「産業保健データの管理で、現場で最も課題を感じる点」について伺いました。
現場の実感を反映した投票結果をもとに、各課題の特徴と対応のヒントを整理します。
投票結果(概要)
期間: 2025年11月1日〜11月7日
投票数: 51票
結果
- 健診結果や面談記録、ストレスチェック結果など、データの一元管理ができていない:41%
- データの活用ができていない:27%
- 入力・集計作業の工数が多く、時間がかかる:20%
- セキュリティや個人情報保護の対応に不安がある:6%
- その他:4%
- 特に課題を感じていない:2%

各項目の傾向と対応のヒント
データの一元管理ができていない(41%)
多くの産業保健スタッフが最も課題として感じているのは、データの分散や管理の煩雑さです。
健診結果や面談記録、ストレスチェック結果がそれぞれ別の場所に保管されていたり、健診結果で紙運用とシステム運用が混在していたりすると、必要な情報をすぐに参照できず、業務効率が低下するケースがあります。さらに、フォーマットや記録様式がスタッフごとに異なると、引き継ぎや情報共有の際に混乱が生じやすく、データの信頼性にも影響します。
対応のヒント
- フォーマットやテンプレートを活用し、書式や記録様式を統一する
- クラウドや専用システムを活用し、健診結果・面談記録・ストレスチェックなどを一元的に管理する
データの活用ができていない(27%)
データはたくさんあるけれど、集計や分析などを通して役に立つ形に活かしきれていないという声が多く聞かれました。健康データの分析は難しそうに感じますが、まずは手元の情報を「整理し、可視化すること」から始めるのが効果的です。たとえば、労基署への定期健康診断結果報告書から有所見率を経年比較する、健診結果から有所見率を性別・年代別に確認する、面談件数や休職者の人数をカテゴリー別に集計するといった事でも、健康課題の可視化の第一歩になります。
対応のヒント
- どのデータをどの目的で分析するのか、活用の優先順位を明確にする
- データ構造の基本を理解し、整った形で記録・蓄積していく
- 勉強会や研修を通じて、データ分析の基本的な考え方を習得する
入力・集計作業の工数が多く、時間がかかる(20%)
健診結果など紙運用の場合はExcelへ手作業で入力したり、集計作業自体も工数が多くかかったりと、入力・集計作業は業務負担が大きいと感じるスタッフも少なくありません。特に中小規模の事業所では人的リソースが限られており、データの入力や集計作業の効率化が重要です。Excelのショートカットキーや基本関数を活用するだけでも、集計作業やデータ整理の時間を大幅に削減できます。また、健診システムの導入やストレスチェックの外部委託なども1つの方法です。
対応のヒント
- 入力テンプレートやマクロを活用して作業を自動化する
- データ連携やシステム化により、重複作業を削減する
- 作業フローを見直し、優先度の高い業務に集中できる体制を整える
セキュリティや個人情報保護に不安がある(6%)
データ管理で個人情報保護やセキュリティ面に課題を感じている産業保健スタッフも一定数おられました。クラウドサービスを利用する場合は、アクセス権限や情報漏えいリスクに注意が必要です。また、「健康情報等の取扱規程」の策定が事業者に義務づけられており、適切な管理体制を整えることが安心してデータを扱ううえで重要です。
対応のヒント
- アクセス権限の設定を適切に管理する
- データ保存方法やバックアップのルールを整備する
- 健康情報取扱規程や手順書を活用して体制を整える
今後の展望
今回の投票結果から、産業保健スタッフが現場で特に課題を感じているのは、「データの一元管理」や「活用の難しさ」であることが明らかになりました。これらの課題は、業務効率の向上だけでなく、労働安全衛生法で求められる健康情報の適正な取扱いとも深く関係しています。
今後は、健康情報取扱規程などのルールに基づきながら、データ管理の仕組みを整理し、活用の目的と範囲を明確にすることが求められます。あわせて、入力・集計作業の効率化や、アクセス権限の管理などセキュリティ面の強化を段階的に進めることで、現場の負担軽減と安全性の両立が期待できます。
産業保健スタッフが安心してデータを活用できるようにするには、健康情報の適正な取扱いやデータ活用の効率化が欠かせません。人事や情報システム部門とも連携しながら、データを基盤とした産業保健活動へと発展させていくことが、今後の重要な方向性となるでしょう。