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産業保健の専門家があかす「ストレスチェック制度」の実態と課題 職場改善を前進させる3つのポイント

厚生労働省が公表した令和3年度「過労死等の労災補償状況」において、精神障害の労災認定件数が過去最多になるなど、近年増え続けるメンタルヘルス不調者への対応は現代社会において大きな課題となっています。
そのようななか、「ストレスチェック制度」は今年で義務化7年目となりました。
制度が普及し、従業員のメンタルヘルス向上や集団分析結果を活かした職場改善などが進められ、少しずつ新たな働き方、健康に配慮した職場環境が見られ始める一方で、様々な課題があることも明らかになってきています。

本記事では、職場のストレス対策やメンタルヘルスケア支援プログラムを提供する株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのメディカルアドバイザーを務め、同社が提供するストレスチェックの実施者の立場として多くの職場の環境改善について提言している深澤健二先生に、同制度の現状やこれからの課題、制度を活かし運用していくために不可欠なポイントをお話しいただきました。産業保健の専門家、日本産業衛生学会指導医としても産業保健活動に従事する深澤先生が伝えたいメッセージとは――。

CONTENTS


1.ストレスチェック制度ができたことは「大きな進歩」
2.ストレスチェック制度を取り巻く大きな誤解。正しい目的とは?
3.ストレスチェック制度の実態
 ・ストレスチェックの実施状況は年々増加傾向。しかし面接指導の申し出は5%未満の事業場も。
 ・実態①医師面接指導後、適切な事後措置が行われていないケースも
 ・実態②事業者がストレスチェックの意義を十分に果たせる状態になっていない
4.ストレスチェック制度の効果を最大化するために必要なこと
 ① ストレスチェックの意義を理解し、職場環境の改善まで取り組むこと
 ② 事業者・従業員・産業医の3者が適切な関係をもってゴールを共有すること 
 ③ 産業医と事業者が日頃からコミュニケーションを取ること
5.『ウェルビーイング』な社会に向けて 3者連携のもとストレスチェックを活用しよう


ストレスチェック制度ができたことは「大きな進歩」

メンタルヘルス不調を抱える労働者の増加を受け、厚生労働省は平成18年にメンタルヘルス指針を掲げ、自分自身による『セルフケア』、管理監督者(上司)による『ラインケア』、そして人事労務者や産業医が行う『事業場内産業保健スタッフ等によるケア』、最後は社外機関や専門家による『事業場外資源によるケア』の“4つのケア”を推進してきました。ストレスチェック制度も、これに対しさらなる強化を図るべくスタートしたものです。

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出典

アドバンテッジJOURNAL
産業保健の専門家があかす「ストレスチェック制度」の実態と課題 職場改善を前進させる3つのポイント

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1 件の返信 (新着順)
ak バッジ画像
2022/08/18 13:43

産業保健師をしている者です。

深澤先生のご解説、ご見解、大変参考になります。

集団分析は事業者には努力義務とされていますが、仰られるとおり、二次予防だけでなく、
受検結果による傾向分析で、より働きやすい職場環境づくりに繋げる一次予防、ポピュレーションアプローチも大切な要素と思います。
※弊社の産業医的には、集団分析も本来は義務、というくらいに大切な要素だと。

【運用の理解について社内展開について】
安全衛生委員会等から運用について社員に周知し、
個々のストレス度の気づき等のためと、
集団分析による働きやすい職場環境づくりに繋げることを社員に理解いただき、
できるだけ多くの社員に受検いただく(率直な回答)、
集団単位で傾向分析ができる受検数を得る、
分析した結果で、会社・職場上長が改善アクションに繋げてくれている
(社員にフィードバック・共有する)、
社員が受検した結果が活かされていることを実感できる、
というサイクルを目指したいと思います。
※所属長からも部全体にアナウンスしていただくことで受検率が上昇しました
 (個々の気づきと、働きやすい職場環境づくりに活かすために、ぜひ受検をと”勧奨”)

【集団分析結果の取り組みについて】
部署数が多く、産業医のスケジュールの関係で、全部署の所属長とまではいきませんが、
数値上、ストレス度が高い傾向の部署と、真逆のGood部署の両サイドの所属長と対話、
改善アクションの議論をしてみたところ、
技術職が多い会社ということもあるのか、所属長は、数字について、
ストレスチェック分析要素ごとに要因を考察・分析し、
部内のマネージャークラスと改善アクションについて検討し、部員におろしていく取り組みをしているケースがあります。
次年度のストレスチェック分析結果、またエンゲージメントサーベイとで、
アクション結果のPDCAを回してくれていました。
その部署は、ストレスチェックの受検率、数値が改善傾向にありました。

やはり、会社・所属長が、ストレスチェックの目的、どうポジティブに活かしていくか、
理解をしてくれ、良くしていこうと本気で考え1歩ずつでもアクションする、
そして社員がどう活かされるかが理解できる状態になると、
良い方向に向かうと体感しています。



深澤先生が仰られるとおり、
事業者(所属長)・従業員・産業医(健康管理部門)が同じ方向を向けられるように、
まずは、ストレスチェックとはなんぞや、ということを産業医(健康管理部門)から
事業者(所属長)・従業員に継続して説明、フィードバック等が大切と思います。