ストレスの多い職場環境は、社員のメンタルヘルス不調を招き、生産性の低下や離職率の上昇につながります。産業保健スタッフは、職場のストレス要因を把握し、早期に適切な対策を講じる役割を担います。
本稿では、心理社会的ストレス要因を中心に、ストレスフルな職場の特徴と、産業保健スタッフが現場で実践できる対応策を整理します。
<目次>
1.ストレスフルな職場とは
2.職場の心理社会的ストレス要因
3.ストレスフルな職場がもたらすリスク
4.産業保健スタッフができること
5.まとめ
1.ストレスフルな職場とは
ストレスフルな職場とは、社員が長期間にわたり心理的・身体的な負担を強いられている環境を指します。
物理的要因(温度・照明・騒音など)や化学的要因(化学物質・アレルゲンなど)もありますが、とくに問題となりやすいのは「人間関係の不和」「業務量の偏り」「裁量の低さ」「評価の不公平」といった心理社会的要因が中心です。
たとえば、次のような職場は要注意です。
- 相談しにくい雰囲気がある
- 長時間労働が常態化している
- 努力しても正当に評価されない
- 上司や同僚との関係がぎくしゃくしている
このような状態が続くと、社員の心身の健康だけでなく、組織全体の活力にも影響します。
2.職場の心理社会的ストレス要因
心理社会的ストレス要因とは、業務内容や職場環境、人間関係など、仕事を取り巻く社会的要因によって生じる心理的負担のことを指します。
代表的な要因には、以下のようなものがあります。
- 仕事の要求度が高い(業務量・ノルマ・責任が過重)
- 裁量が低い(自分で仕事をコントロールできない)
- 上司や同僚との関係不良(相談できない、支援が得られない)
- 努力と報酬の不均衡(頑張っても報われない)
これらを理解するうえで参考になるのが「職業性ストレスモデル」です。
- 要求度–コントロールモデル:仕事の量が多く、自由度が低いほどストレスが高まる。
- 努力–報酬不均衡モデル:努力に見合う報酬(評価・給与・感謝など)が得られないとストレスが高まる。
これらの視点から職場の業務量、裁量、支援体制、評価制度を点検すると、どこに負荷が集中しているかを把握しやすくなります。ストレスチェックの結果を組織単位で集計することで、こうした職場の状況を把握することができます。
3.ストレスフルな職場がもたらすリスク
■健康と安全への影響
心理的負担が蓄積すると、集中力や判断力が低下し、ミスや事故のリスクが高まります。
また、心身の不調による欠勤や休職が増え、周囲の業務にも影響します。
■離職率の上昇
ストレスの高い職場では、心身の疲弊から退職を選ぶ社員が増加します。
人材の定着率が低下すると、採用・教育コストが増えるだけでなく、「働きづらい職場」という評判が広まり、優秀な人材が集まりにくくなります。
■生産性と組織力の低下
ストレスによって意欲・集中力・判断力が低下すると、業務の質やスピードが落ち、組織全体の生産性が下がります。
結果として、納期遅延や品質低下など、企業の信用にも関わるリスクが生じます。
4.産業保健スタッフができること
ストレスの多い職場では、早期に兆候をつかみ、組織的な対応を進めることが重要です。ここでは、産業保健スタッフが関わる主な支援の方向性を示します。
■ストレスチェックの活用
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
個人への対応だけでなく、集団分析を活用して部署ごとの課題を可視化し、職場改善につなげることが重要です。「個人への支援」と「組織の改善」を両輪で進めることが、一次予防につながります。
■メンタルヘルス相談窓口の設置
強いストレスを感じても、相談できる場がなければ早期対応は難しくなります。そのため、一次予防の観点から、社内外の相談窓口を整備し、利用方法を広く周知することが重要です。産業医や産業看護職、心理職などの専門家と相談できる相談窓口を整備し、社内ポータルや掲示板で窓口の目的・利用手順・プライバシー保護を具体的に示し、定期的にリマインドを行いましょう。また、管理職研修を通じて、上司が窓口の機能を理解し、部下に利用を促せるよう支援します。
5.まとめ
職場のストレス要因の中でも、メンタルヘルス不調に強く影響するのは心理社会的要因です。産業保健スタッフは、ストレスチェックや面談などの活動を通じて、職場のリスクを早期に把握し、社員と組織の両面からアプローチすることが求められます。
ストレスフルな職場の改善は、社員の健康保持だけでなく、企業の持続的な成長にもつながります。日々の活動の中で小さな変化に気づき、組織全体で改善していく体制づくりを進めていきましょう。
やりっぱなしで終わらせない、ストレスチェックから始める組織改善サービスはこちら👇
■参考
1)ストレスチェック制度導入マニュアル|厚生労働省
2)これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~|労働者健康安全機構/厚生労働省
■執筆/監修
<執筆>
久木田 みすづ (精神保健福祉士、社会福祉士、心理カウンセラー)
福祉系大学卒業後、カウンセリングセンターの勤務を経て、心療内科クリニック・精神科病院で精神保健福祉士・カウンセラーとして従事。うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんと家族に対する相談や支援に力を入れる。
現在は、主にメンタルヘルスの記事を執筆するライターとして活動中。
<監修>
難波 克行 先生(産業医、労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆。YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信。
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』