メンタルヘルス不調者への支援~面談対応の基本からEAPの活用までご紹介
皆さんの職場では、メンタルヘルス不調者への支援として、どのような対策を取られていますか?職業生活等に関して、強い不安やストレスを感じる労働者は5割を超え、私たちは働く上で多くのストレスにさらされています。
今回は、メンタルヘルス不調者への支援についてご紹介していきます。
【目次】
1.職場のメンタルヘルスケア
2.職場でメンタルヘルスケアを実践していく意義
3.メンタルヘルス不調者支援の実際
4.EAP(従業員支援プログラム)の活用
1.職場のメンタルヘルスケア
職場におけるメンタルヘルス対策とは、「事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置」のことをいいます。
メンタルヘルスケア対策に取り組むことは、労働者の心の健康の保持増進はもちろん、労災予防などの事業場としてのリスク管理、さらには健康経営といった事業場の発展に繋がります。
実施にあたっては、中長期的な視点で継続できるような計画を立てて進めることが重要です。事業者は、労働者の意見を聞き、その事業場に適した計画を立てることが求められています。
また、産業保健スタッフは、効果的なメンタルヘルス対策を実践するために、社内の関係者だけでなく、社外の専門機関等と連携を取り、コーディネートする役割を担います。
2.職場でメンタルヘルスケアを実践していく意義
職場でメンタルヘルスケアを実践していく意義にはどのようなものがあるでしょうか。
職場の生産性低下の防止
メンタルヘルス不調になると、仕事への意欲が減退し、本来その人が持っていた業務遂行能力を十分発揮できなくなります。休業に至った場合、長期間になることも多く、貴重な戦力を失います。労働者自身がストレスへの気付きなどのセルフケアを身に着けることで、メンタルヘルス不調を早期発見し対処ができれば、職場の生産性低下の防止に繋がります。生産性・活力の向上
職場におけるメンタルヘルスケアの対象者は、メンタルヘルス不調者だけでなく、すべての労働者が対象となります。メンタルヘルス不調に陥った人だけでなく、組織を対象として、職場環境改善を行うなど、労働生活の質を高め、モチベーションを維持し、生産性や活力の向上に繋げることができます。リスクマネジメント
メンタルヘルス不調に陥ると、集中力や注意力の低下による事故やトラブルに繋がることがあります。時として、本人だけでなく、顧客や同僚など周囲の安全と健康も脅かす危険があり、企業にとっても大きなリスクとなります。メンタルヘルス不調に対して企業の対応が不適切であるとみなされた場合、労災請求や民事訴訟につながることもあります。
3.メンタルヘルス不調者支援の実際
では、実際にメンタルヘルス不調者への支援を行う際には、どのような点に留意することが必要でしょうか。産業保健スタッフは、メンタルヘルス不調者の初期対応をする場面が多いといえます。そのため面談対応の基本や健康情報の取扱いについて、ポイントを押さえて理解することが大切です。
面談の基本としては、下記のようなポイントを中心に対象者から話を聞きましょう。
- いつから?その頻度は?(周辺情報)
- そのことが起こる以前は?(過去情報)
- これまではどう乗り切った?(コーピングスキル)
話をしてくれたことを賞賛する、出来ていることに焦点を当てるといった視点も重要です。対象者の状況を理解し、一緒に考える方針を伝え常に傾聴の姿勢を大切にしましょう。
4.EAP(従業員支援プログラム)の活用
EAPとは、Employee Assistance Programの略で、従業員支援プログラムのことをいいます。
もともとは、アメリカにおいてアルコール依存症からの回復者のケアを目的に始まりました。日本では、メンタルヘルス対策に利用されることが多いです。個人のメンタルヘルスや職場のハラスメント、身体的不調、家庭や経済的な問題など幅広い相談に対応し、解決を支援します。
EAPは「内部EAP」と「外部EAP」に分類されます。内部EAPとは、企業内に専門家を常駐させ、サポートを行う方法です。社内の事情をよく理解している専門家が担当するため、自社の状況に沿ったケアの整備が期待されます。
一方の外部EAPとは、外部の専門機関に委託してメンタルヘルスケアを進めることです。労働者にとっては、社内では話しにくいことを相談できる、企業にとっては常駐が不要であるためコストが抑えられやすいといった利点があります。