自分の強みを知ってポジティブになる~ポジティブ心理学の応用
ポジティブ心理学を産業保健の現場に活用するポイントとして、自分の強みを知ることにはどのような効果があるでしょうか。今回は、自身の強みを活かして、支援に活用する方法について学びを深めていきましょう。
※本記事は2023年3月15日に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
▶④自分の強みを知ってポジティブになる【ポジティブ心理学勉強会 応用編】
【目次】
1.強みとは?自分の強みを知ってポジティブになる
2.認知的柔軟性の研究
1.強みとは?自分の強みを知ってポジティブになる
今回は、支援する皆さんがどのように自分の強みを見つけて、いかに働く人への支援に結び付けていくかについて話していきます。まずは、「強み」について理解を深めていきましょう。
強みとは?
強みは、下記のように定義されます。
ポジティブな特性(中核の人徳)(Peterson & Seligman, 2004)
- 徳性・美徳(道徳上の価値ある要素)
- 最適なパフォーマンスを産むための、個人的な高い行動特性の能力
セリグマンはこの強みの種類を24種類あげています。
強みの効果としては、下記があげられます。
- 自信
- 自尊心
- 生きようとする意志
- 幸福感
- 充足感
- 目標が達成しやすい
- ストレスを感じにくくなる
自分の強みを知り、その強みを活かすことによって自信や幸福感をあげていくことができます。
強みをはかる尺度としては、セリグマンらによって、生き方の原則尺度(VIA: Values-In-Action)が開発されています。測定をすると自身の強みのトップ5についてフィードバックがもらえます。興味のある方はぜひ実施してみてください。
2.認知的柔軟性の研究
ポジティブ心理学的介入が幸福感が高め、抑うつ感をどのように下げるかについて、6ヶ月にわたって追跡した研究結果があります。
1番幸福感を高める介入としては、「3 Good Things」という、良いこと探しが心理的な介入で1番効果があったと言われています。1日の終わりに、その日にあったうまくいったことを3つ書きます。そして、なぜうまくいったかの原因について書き留めることを1週間続けます。その結果、介入群の抑うつ感の低下と、幸福感の上昇が半年にわたって認められたという結果になりました。
では、なぜこのような結果がでたのでしょうか?
私たちには、ネガティビティ・バイアスという、うまくいかないところに焦点を当ててしまう傾向があります。意識的に良かったこと探しをすることで、物の見方や視点をネガティブなものよりもポジティブに転換する習慣がつき、効果が得られたと考えられます。
このような認知的な柔軟性をもって、苦しまないような解釈もあることに気付き、それを習慣とすることで、幸福感が上がるといわれています。
良いこと探しの他には、自分なりの幸せや豊かさを見つけるということがあげられます。
八方塞がりの時にこそ、ささやかな幸せを見つけてみることが大切です。些細なことを書き留めることで、また良いことがあるのではないかと、自分に暗示をかけることも効果があります。
レジリエンスという精神的回復力を高めることも大切です。
また、何もしないという、ありのままに受け入れることも重要です。うまくいかない自分も受け入れ、今現在の瞬間に生じている経験に気づく、マインドフルネスもあります。
慈愛を込めて自分・他者と関わると効果があると言われているので、色々な方法を試してみることが重要です。
次の記事では、「ストレスとの新しい向き合い方」について具体的にご紹介します。
是非ご覧ください。
▶記事を読む ストレスとの新しい向き合い方~マインドセットが健康に与える影響とは?
講師
津田彰 先生(公認心理師、臨床心理士、医学博士)
【プロフィール】
健康・医療心理学、産業・組織心理学、ポジティブ心理学などをご専門とされています。
心理学に関して数多くの著書を執筆、ご講演・論文の発表もされており、多くの賞を受賞されています。
2021年4月 久留米大学 名誉教授
2021年4月 帝京科学大学 医療科学研究科 教授(現在に至る)
2022年4月 久留米大学 医学部 客員教授 (久留米大学)