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ストレスとの新しい向き合い方~マインドセットが健康に与える影響とは?

皆さんにとってストレスは有害なものでしょうか。今回は、ストレスとの新しい付き合い方についてポジティブ心理学の知識を用いて、学んでいきます。マインドセットやストレスマネジメントするためのセルフケアについて解説していきます。

※本記事は2023年3月15日に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
⑤ストレスとの新しい向き合い方【ポジティブ心理学勉強会 応用編】



【目次】
1.ストレスの新しい考え方~マインドセットとは
2.ストレスマネジメントによるセルフケア



1.ストレスの新しい考え方~マインドセットとは

今回は、ストレスの新しい考え方について考えていきたいと思います。
ストレスを上手にコントロールするのは、なかなか大変だと思っている方が多いと思います。実は、ストレスが役に立つというマインドセットが、結果的にストレスを乗り越え健康になるという、これまでとは違う考え方が出てきています。

そのエビデンスとして、ウィスコンシン大学のグループが8年間にわたる長期的な調査から示しているものがあります。多くの場合、ストレスは病気の原因とされていますが、実はストレスの捉え方や行動によって体のストレス反応は健康的にもなり、害にもなるということがわかっています。あなたのマインドセット、つまり心の構えが健康に影響を与えるという考え方です。

この研究はアメリカの成人3万人を対象に行われ、過去1年間どのくらいストレスを自覚していたかを調査しました。従来の仮説では、ストレスが多いほど病気になりやすいということがわかっていましたが、彼らは「ストレスが健康に害を与えると思うかどうか」という質問項目を加えました。8年後に誰が病気になったかを追跡したところ、ストレスが多いと自覚している人は、ストレスなしのグループと比べて、2倍ほど病気になるリスクが高いことがわかりました。


ストレスの信念と健康リスク比​​

ただし、この調査で重要なのは、ストレスが病気の原因になると信じていた人と、ならないと信じていた人の違いです。
ストレスが健康に悪影響を与えると考える人は、最大でもストレスの程度で2倍のリスクしか変わらないのに対し、ストレスが病気の原因にならないと信じていた人は、4.5倍も病気にならない確率が高かったのです。これにより、ストレスに対する考え方が健康に大きく影響することが示されました。


ストレスの生理的反応は、ストレッサーの認知的評価、その後の感情に反応して障害を予防する​

この現象がなぜ起こるのかを調べるために、ハーバード大学のグループが実験を行いました。実験では、被験者にストレスを与えた後、3つのグループに分けました。

1つ目のグループには特に説明をせずにストレスを与えたところ、血管の収縮が見られ、ストレス反応が強く出ました。2つ目のグループには「ストレス反応を無視してください」と指示しましたが、大きな変化は見られませんでした。しかし、3つ目のグループには「ストレスは悪いものではなく、むしろ良い反応だ」と説明したところ、血管の抵抗値が上がらず、ストレス反応が軽減されました。

これにより、日常的なストレスに対しても、ポジティブな信念を持つことで、病気のリスクが減少することが明らかになりました。マインドセット、つまりストレスに対する捉え方を変えることで、健康になれるという考え方が重要といえます。

2.ストレスマネジメントによるセルフケア

最後に、ストレスマネジメントによるセルフケアについてお伝えします。
ストレスに対するポジティブな考え方を育むことが大切であり、感動する心がストレスマネジメントにおいて重要であることも示されています。

具体例)

  • 信仰心の有無にかかわらず、困ったときや苦しいときには思わず手を合わせ、神様や仏様、人間を超えた大いなるものに対して祈ったり、願ったりする​
  • 昇る朝日や水平線の彼方に沈む夕陽、素晴らしく澄んだ紺碧の空や大海原を目の前にした時、大自然の美しさ、力強さに深く感動し、畏怖の念を抱く
  • 自分自身が信じている大いなるものとの出会い
  • 個人の力を越えた力としての聖性(スピリチュアリティ)​

ポジティブ心理学の視点から、音楽や絵画など感動する体験を通じて、ストレスに対処する力を育むことが推奨されています。



講師


津田彰 先生(公認心理師、臨床心理士、医学博士)

【プロフィール】
健康・医療心理学、産業・組織心理学、ポジティブ心理学などをご専門とされています。
心理学に関して数多くの著書を執筆、ご講演・論文の発表もされており、多くの賞を受賞されています。
2021年4月 久留米大学 名誉教授
2021年4月 帝京科学大学 医療科学研究科 教授(現在に至る)
2022年4月 久留米大学 医学部 客員教授 (久留米大学)




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