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職場の高血圧対策とは?生活習慣改善方法や高血圧予防について解説

「職場での高血圧対策ってどんなことをすればいいの?」
「生活習慣の改善方法や健康管理の支援方法について知りたい!」

社員の高年齢化が進み高血圧リスクが高い従業員が多い中で、生活習慣改善へのアプローチが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか?職場でなぜ高血圧のリスクが上がりやすいかを知ることで、従業員の健康管理を適切に進めることができます。

本記事では職場で役立つ高血圧対策について解説します。 この記事を読めば従業員の生活習慣改善につながる指導ができるようになるでしょう。


<目次>

1.高血圧の主な原因
2.職場での高血圧リスク
3.高血圧予防の生活習慣改善
4.職場でできる高血圧対策
5.職場での従業員サポートと健康管理
6.まとめ:職場での高血圧リスクについて知り従業員の行動につながる指導をしよう


1.高血圧の主な原因

高血圧は、ひとつの要因だけでなく生活習慣や加齢、遺伝などの複合的な要因によって起こります。様々な要因を総合的に理解することが大切です。

血圧は、血管の柔軟性や血液量、心臓の働きによって保たれています。循環機能に影響する生活習慣や体質の変化が、血圧上昇の主な原因です。

高血圧の主な原因は次のとおりです。

  • 塩分の多い食事:血液量が増え、血管に強い圧がかかる
  • 運動不足や肥満:血流が悪化し、血管が硬くなる
  • 喫煙・過度な飲酒:血管を収縮させ、血圧を上昇させる
  • 加齢:血管の弾力が低下し、血圧が上がりやすくなる
  • 遺伝(家族歴):親や兄弟に高血圧の人がいると発症しやすい

高血圧は日常生活の積み重ねが大きく影響します。生活習慣の改善を意識した予防と、定期的な血圧測定が大切です。


2.職場での高血圧リスク

職場には、従業員の血圧を上昇させるさまざまな要因が潜んでいます。それらのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、従業員の血圧管理の支援に役立ちます。

■ストレスによる血圧の上昇

職場での強い精神的負担は、長期的には高血圧や心疾患リスクの増大に関与する可能性があります。 従業員の健康管理のためには、勤務中の適度な休憩や深呼吸などのリラックス法の導入が有用です。

■多忙による健康意識の低下

業務多忙な状況は、さまざまな側面から、従業員の健康意識の低下を招きやすくなります。長時間労働や業務のプレッシャーによって、自己の健康管理の優先度が下がってしまうことがあります。病院の受診や、血圧測定、薬の服用が後回しになることもありますし、忙しい日々が続くと、食生活や運動に気を配ることも難しくなります。効果的な健康支援を行うためには、こうした要因を理解しておくことも重要です。

■運動不足による血流の悪化

運動不足が続くと、血管の柔軟性や血流を調整する機能が低下します。特にデスクワーク中心の生活では、脚の筋肉を使う機会が減り、血液を心臓に戻すための「筋ポンプ作用」が弱まり、その結果、血液の流れが悪くなって心臓への負担が増えます。


3.高血圧予防の生活習慣改善

従業員の高血圧予防を支援するためには、生活習慣の課題を具体的に把握し、個別に改善ポイントを伝えることが重要です。職場で取り入れやすい生活習慣の改善について解説します。

■塩分過多に注意する

多忙な勤務によりコンビニや外食が増えると塩分の過剰摂取になりやすく、血圧上昇のリスクが高まります。塩分摂取量の目標値は、男性は7.5g/日未満で女性は6.5g/日未満です。コンビニ弁当や外食メニューには1食で3g〜7g程度の塩分が含まれており、簡単に1日の推奨量を超えてしまいます。特にラーメンや定食類は塩分が多いので、スープを残すことや調味料を控えるといった工夫が効果的です。

■飲酒や喫煙に気を付ける

飲酒や喫煙はストレス解消の手段として行われがちですが、高血圧リスクを高めるため注意が必要です。アルコールの過剰摂取は長期的に血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を促進する可能性があります。喫煙と飲酒の組み合わせにより心筋梗塞や脳卒中になるリスクが高まります。

■運動不足を解消する

運動不足は血流の滞りと自律神経の乱れを招き、血圧上昇のリスクを高めます。運動不足により交感神経が優位となり血管が収縮しやすく、血圧が上がりやすくなるからです。運動を継続することで血管を広げる一酸化窒素が分泌され、自律神経のバランスが整い、血圧の安定化につながります。無理なく続けられる軽い有酸素運動や筋トレの習慣化を指導し、継続的な健康維持を支援しましょう。

■十分な睡眠時間を確保する

十分な睡眠時間の確保は高血圧予防に欠かせません。睡眠不足が自律神経のバランスを崩し、交感神経が優位になって血圧を上昇させるからです。睡眠不足は食欲増進ホルモンを活性化させ、肥満になりやすく高血圧のリスクを高めます。十分な睡眠時間を確保することは血圧の安定と肥満予防につながります。


4.職場でできる高血圧対策

職場では従業員の自己管理意識を高め、予防や早期発見につなげることが大切です。具体的に職場でできる対策について解説します。

■簡単な運動やストレッチの促進

産業保健師は従業員に椅子に座ったままでもできるストレッチを仕事の合間に行うよう指導することが効果的です。長時間の座位が続くと血流が滞り、自律神経のバランスが崩れやすくなるため、軽い運動で改善が期待できます。足首を回す運動や肩を上げ下げするストレッチは、血液循環を促進し疲労軽減にもつながります。就業中の短い時間でも実践でき、継続しやすい点がメリットです。

【足首回しの手順】

  1. 背筋を伸ばして椅子に浅く座る
  2. 片方の足を反対の膝の上に乗せる
  3. 足首を手でつかみ、時計回りにゆっくり10回、回す
  4. 次に反時計回りにゆっくり10回、回す
  5. 反対の足も同様に行う
  6. 回す際は力を入れすぎず、リラックスして動かす

【肩の上げ下げストレッチの手順】

  1. 椅子に座り背筋を伸ばす
  2. 肩をゆっくり耳に向かって上げる
  3. そのまま2〜3秒キープする
  4. 肩をゆっくり下ろしてリラックスする
  5. これを10回繰り返す

産業保健師は従業員に具体的な動作を分かりやすく説明し、定期的な声かけやポスター掲示で習慣化を支援しましょう。

■社内健康イベントの導入

社内で健康イベントを導入することは、従業員の健康意識向上と行動変容を促す有効な手段です。ゲーム感覚で楽しく参加でき、日常の健康管理を習慣化しやすくなります。部署ごとに歩数を競うウォーキングチャレンジや、塩分摂取に気を付ける減塩週間を事業者に提案しましょう。定期的に効果を共有してモチベーションを維持できます。産業保健師は社内イベントの企画と運営に関わり従業員の健康管理をサポートします。

以下の記事では、全国の産業保健スタッフから募集した健康施策アイデアをまとめてご紹介しています。運動イベント企画の参考にしてください👇
記事:みんなの社内健康施策アイディア大公開!~運動で元気をつくろう~


5.職場での従業員サポートと健康管理

産業保健師は産業医と連携のうえで、従業員の生活習慣改善や健診後フォローを行うことが重要です。次に職場での従業員サポートと健康管理について解説します。

■健診後のフォローと受診推奨

産業保健師は高血圧を指摘された従業員に対して、産業医と連携し医療機関の受診を推奨し、必要に応じて個別にフォローを行います。また、受診後も必要に応じて、継続的に行動計画の見直しや支援を行い、従業員が自ら健康維持の行動を継続できるよう体制を整えましょう。

■従業員の行動を変える改善案の提供

従業員の行動変容を促すには、抽象的な指導でなく具体的で実践しやすい改善案の提供が効果的です。曖昧な「減塩しましょう」より「ラーメンのスープを飲み干さない」「弁当の漬物を残す」など具体的な行動指示の方が実行しやすく続けやすいからです。

SMART目標の考え方を取り入れ「来月末までに週3回以上、自宅で野菜中心の食事を作る」など明確な目標設定で取り組みを促します。

  • Specific(具体的に):目標が誰にでも明確で、具体的な行動として理解できる
  • Measurable(測定可能な):達成状況を本人自身が確認できる
  • Achievable(達成可能な):現実的に達成可能な行動かどうかを確認する
  • Relevant(関連性がある):自分の健康改善や生活習慣の改善に関連する目標である
  • Time-bound(時間制約がある):いつまでに取り組むか期限を設定する

産業保健師は従業員に対して具体策と目標設定を支援し、行動変化を継続的にフォローアップすることが重要です。

■夜勤・交代勤務者に関する保健指導

交代勤務のある職場では、勤務形態に応じた具体的な健康改善策を提供することが重要です。夜勤など不規則な勤務時間は自律神経の乱れや睡眠不足を招き、高血圧リスクを高める可能性があります。具体的な支援内容は以下のとおりです。

  • 夜勤従業員に、質の良い仮眠を1時間以上とる調整方法を指導する(必要に応じて事業者に休憩時間の確保を提案)
  • 眠気対策の助言を行う(カフェイン摂取のタイミングを勤務開始後に限定など)
  • 睡眠環境の整え方を指導する(勤務後の光の調整やリラックス習慣など)
  • 勤務形態に合わせた生活習慣改善の具体策を個別に提案する(必要に応じて、産業医を通じて勤務体制の見直しを検討するよう事業者に助言する)

産業保健師は個々の勤務形態に合わせた具体的なアドバイスを従業員に伝え、健康維持を支援する必要があります。

以下の記事では、夜勤・交代勤務がもたらす健康影響や企業の具体的な取り組み事例をご紹介しています。従業員の健康と生産性を守るためにぜひお役立てください。👇
記事:夜勤・交代勤務の健康リスクとは?企業が取り組むべき対策と衛生管理者の役割を解説


6.まとめ:職場での高血圧リスクについて知り従業員の行動につながる指導をしよう

職場での高血圧対策では、従業員の生活習慣改善を支援する具体的な行動指導が重要です。職場特有のストレスや運動不足、睡眠状況などが血圧上昇のリスクを高めるため、自己管理だけでは改善しにくい状況があります。

産業保健師の支援内容は以下のとおりです。

  • 椅子に座ったままできるストレッチや軽い運動の指導
  • 塩分摂取の目安や減塩方法の提案
  • 飲酒量の管理や禁煙支援
  • 睡眠環境の整え方や生活リズム改善の助言
  • 夜勤・交代勤務者への仮眠や眠気対策の具体的指導
  • 健康診断後の受診推奨やSMART目標の設定など、産業医との連携
  • 健康イベントや休憩時間の環境整備など事業者との連携

産業保健師と事業者が連携し、従業員に具体的な支援を提供することで、職場での高血圧予防と健康維持を効果的に実現できます。

さんぽLABでは、従業員への情報提供としてご活用いただける衛生講話資料・リーフレットを無料公開しています。PDF形式でダウンロードできますのでぜひご覧ください👇
衛生講話資料:高血圧の種類と治療。家庭血圧の測り方も紹介 リーフレット:今日から始める 脱!高血圧


■参考


1)生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連|厚生労働省
2)健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「ノルアドレナリン/ノルエピネフリン|厚生労働省
3)標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)|厚生労働省
4)健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「高血圧」|厚生労働省
5)高血圧|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター 病院
6)減塩食について|栄養・食事について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター 病院
7)健康で長生きするために 知っておきたい循環器病あれこれ「飲酒、喫煙と循環器病」|循環器病研究振興財団
8)健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「アルコールと循環器疾患」|厚生労働省
9)健康に配慮した飲酒に関するガイドライン|厚生労働省
10)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省
11)健康づくりのための運動の効果|健康長寿ネット
12)健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「睡眠と生活習慣病との深い関係」|厚生労働省
13)看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン|日本看護協会




■執筆/監修


<執筆> 百田れんか (看護師×Webライター)

総合病院7年間勤務後、出産を機に医療Webライターへ転職。
現在は医療や健康をテーマに記事執筆を行い、産業保健や健康経営に関する情報発信にも携わっている。
看護師としての知識を土台に、働く人々の健康を支えるライティングを実践。

<監修> 難波 克行 先生(産業医、労働衛生コンサルタント)

アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医

メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆。YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信。

代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』

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