障害を抱える人への支援~合理的配慮の提供、建設的対話について解説
2016年に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が2021年に改正され、事業者による障害者への「合理的配慮」の提供が義務化されました。
法定雇用率は段階的に引き上げられ、誰もが働きやすい環境を整える重要性がますます高まっています。
皆さんの身近にも、障害を抱えながら就労している同僚の方がいらっしゃるかと思います。今回は、障害を抱える労働者への支援のポイントについて理解を深めていきましょう。
【目次】
1.障害者雇用と合理的配慮とは
2.障害を抱える人への支援の実際~発達障害
3.建設的対話とは~傾聴できていますか
1.障害者雇用と合理的配慮とは
障害のあるなしに関わらず、誰もがその能力と適性に応じた雇用の場に就き、地域で自立した生活を送ることができるような社会の実現を目指し、障害のある人の雇用対策が推進されています。
障害者雇用を推進することで期待されることとして、下記があげられます。
- 共生社会の実現
- 労働力の確保
- 生産性の向上
障害者の雇用状況は、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、着実に進展していることがわかります。
障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する労働者の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇うことを義務付けています。法令で求められ、定められていることから、事業場では更なる雇用率の維持や上昇を目指すことが予想されますが、就労継続への支援も重要な課題となっています。
事業主には、障害者への合理的配慮の提供が義務化されています。
合理的配慮とは、「障害者と障害者でない者との均等な機会や待遇の確保、障害者が有する能力の発揮に支障となる事情を改善するための必要な措置」をいいます。ただし、その実施に伴い過度な負担が掛かる場合は、この限りではないとされています。
障害労働者の個別のニーズに応じて、事業主の過重負担なく、パフォーマンスの発揮を妨げる障壁を取り除くために、事業主にはどのような対応が求められているでしょうか。
2.障害を抱える人への支援の実際~発達障害
障害を抱える労働者への支援として、実際にはどのような配慮が必要でしょうか。
同じ診断名、障害といっても、その特性は様々です。画一的な対応ではなく、本人の障害特性に応じた支援が求められています。必要に応じて、主治医や地域障害職業センターなどと連携を取り、支援をすることが大切です。多職種にて連携を取る際には、健康情報の取扱いには十分に留意しましょう。
また、職場で生じている問題の解決には、上司や同僚への支援も大切です。「なんだか空気が読めない」「ちょっと変わった人」などと表現されることがありますが、同僚や上司から受け入れられていない状況というのは、敏感に伝わってしまう場合があります。
産業医をはじめとする産業保健スタッフが間に入り、障害特性について説明をする等の対応を行い、就労をサポートしている同僚や上司の負担の軽減支援を行いましょう。
具体的な支援の例として、発達障害を抱える労働者の支援について、ご紹介しています。
3.建設的対話とは~傾聴できていますか
合理的配慮は、その前段階として、労働者との話し合いによりパフォーマンスの発揮を妨げる個別の障壁を把握し、事業主側の負担とすり合わせをしながら、提供する配慮の内容を労働者と合意する「建設的な対話」が必要となります。
原因となっている障壁は、他人からは分かりにくく、ときに障害者本人もよく把握できていないこともあります。
合理的配慮は、本人の一方的な配慮要求に事業者が応じなければならないわけではありません。同時に、事業者側が本人の希望を聞かず画一的な配慮を押し付けることでもありません。労働者と事業者の対話によって、作り上げていくものです。
対話の前提として、声を届けてもらえるような信頼関係が必要となります。事業者側より、対話を率先して行い、良好なコミュニケーションを促進していきましょう。良好なコミュニケーションを促進するためには、「傾聴」が不可欠となります。
皆さんは「傾聴」できていますか?産業保健スタッフにとっては、耳慣れた傾聴という言葉ですが、実践するのは意外と難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。