はじめに
産業保健スタッフの皆さんは、日々、面談対応や記録作成、社内調整など、さまざまな業務に追われているのではないでしょうか。
「本当は個別相談にもっと時間をかけたいのに、記録業務が終わらない」
「専門職にしかできない業務に集中したいのに、事務作業や雑務に多くの時間を取られてしまう」
と感じることもあるかもしれません。
そこで今回は、【産業保健業務の中で、「最も時間を使っている」と感じる業務はどれですか?】をテーマにアンケートを実施しました。
投票結果から見えてきた、産業保健スタッフの皆さんが時間を取られやすい業務の実態と、限られた時間を有効に活用するためのヒントについて考察します。
投票結果(概要)
期間:2026年5月2日~5月15日
投票数:89票
結果
- 事務作業:36.0%
- 面談対応:28.1%
- 社内調整・連携:24.7%
- 企画・施策立案:9.0%
- その他:2.2%
今回の結果では、「事務作業」が最も多く36.0%となりました。次いで、「面談対応」28.1%、「社内調整・連携」24.7%と続いています。
産業保健業務と聞くと、従業員との面談や保健指導をイメージする方も多いかもしれません。しかし実際には、記録作成やデータ管理、関係者との調整など、直接的な支援以外の業務にも多くの時間が費やされていることがうかがえます。
各項目の傾向と対応のヒント
事務作業:36.0%
最も多くの時間を占める業務
3人に1人以上が「事務作業」に最も時間を使っていると回答しました。
産業保健スタッフの業務では、
- 面談記録の作成
- 健康診断結果の管理
- 長時間労働者面談の対象者抽出
- ストレスチェック関連業務
- 各種報告資料の作成
- データ集計や管理
など、多くの事務作業が発生します。
厚生労働省が示す産業保健活動においても、健康情報の適切な管理や記録保存は重要な業務とされており、法令対応の観点からも欠かせません。
一方で、「本当は面談や職場支援にもっと時間を使いたいのに、記録作成に追われている」という声も少なくありません。
対応のヒント
- よく使う文書やメールはテンプレート化する
- ExcelやPower Queryなどを活用し、集計作業を自動化する
- 生成AIを活用して、記録や資料作成の下書きを作成する
- 業務手順を標準化し、属人化を防ぐ
事務作業は削減しやすい業務でもあります。定期的に業務棚卸しを行い、「本当に専門職でなければできない作業か」を見直してみることも大切です。
面談対応:28.1%
産業保健職の中核業務
4人に1人が面談対応を最も時間のかかる業務として挙げました。
産業保健スタッフは、
- 健康診断事後措置面談
- 長時間労働者面談
- メンタルヘルス相談
- 復職支援面談
- 保健指導
など、多様な面談を実施しています。
面談そのものだけでなく、
- 面談準備
- 関係資料の確認
- 面談後の記録作成
- 人事や管理職との情報共有
まで含めると、想像以上に多くの時間が必要になります。
特にメンタルヘルス対応や復職支援では、一人の従業員に対して複数回の面談や継続的なフォローが必要になるケースもあります。
対応のヒント
- 面談記録フォーマットを統一する
- 面談前に必要情報を整理しておく
- 定型質問を活用して面談の質を均一化する
- 記録作成支援ツールや生成AIを活用する
ただし、面談は効率だけを追求するものではありません。従業員との信頼関係構築や、職場課題の把握につながる重要な機会であることも、忘れてはならないでしょう。
社内調整・連携:24.7%
見えにくいが重要な業務
4人に1人が「社内調整・連携」に最も時間を使っていると回答しました。
産業保健活動では、
- 人事労務担当者や管理職との連携
- 産業医との情報共有
- 安全衛生委員会対応
- 外部医療機関との連携
など、多くの関係者との調整が必要です。
産業保健スタッフは「健康」と「職場」をつなぐ橋渡し役でもあります。そのため、直接支援以外にも調整業務が多く発生します。
近年は働き方の多様化やメンタルヘルス課題の複雑化により、関係者との連携の重要性はさらに高まっています。
対応のヒント
- 情報共有ルールを明確にする
- 定例ミーティングを活用する
- 連携フローを文書化する
- 関係者が必要な情報をすぐ確認できる環境を整備する
調整業務は減らすことが難しい一方で、「探す時間」「確認する時間」を削減することで効率化できる場合があります。
企画・施策立案:9.0%
意外と時間を確保しにくい業務
企画・施策立案を選んだ方は9.0%でした。
健康経営や人的資本経営への関心が高まる中、
- 健康教育
- 健康増進施策
- 生活習慣改善プログラム
- メンタルヘルス対策
- 組織分析を活用した施策立案
などへの期待は高まっています。
しかし、今回の結果を見ると、多くの産業保健スタッフは日常業務への対応に時間を取られ、企画業務に十分な時間を確保できていない可能性も考えられます。
対応のヒント
- 健診結果やストレスチェック結果を活用し、課題を明確化する
- 他社事例や公的機関の資料を参考にする
- 小規模な施策から始める
- 効果指標を設定して継続的に評価する
限られた時間の中でも、データを活用して優先順位を付けることで、より効果的な施策展開につながります。
その他:2.2%
詳細は不明ですが、その他には、
- 安全衛生委員会対応
- 教育研修
- 職場巡視
- 産業医業務のサポート
などが含まれていた可能性があります。
企業規模や業種、産業保健体制によって、時間を要する業務は大きく異なるため、それぞれの現場に応じた工夫が求められます。
まとめ
今回のアンケートでは、最も多かった回答が「事務作業」、次いで「面談対応」「社内調整・連携」という結果になりました。
この結果からは、多くの産業保健スタッフが専門職としての支援活動だけでなく、その周辺業務にも多くの時間を費やしている現状が見えてきます。
近年は、健康経営の推進や人的資本情報の活用など、産業保健に期待される役割が広がり続けています。その一方で、日々の業務負荷も増加していると感じている方は少なくないでしょう。
大切なのは、
- 現在の業務を見える化すること
- 専門職でなければできない業務を明確にすること
- ITツールや生成AIを活用すること
- 関係者と協力しながら効率化を進めること
ではないでしょうか。
限られた時間の中で、より多くの従業員の支援や健康課題の改善に取り組むためにも、自分の職場の業務配分を振り返るきっかけとして、今回のアンケート結果をぜひ活用いただけますと幸いです。






