産業保健で重要な視点 「疾病性」と「事例性」
産業保健の目的は、労働条件と労働環境に関連する健康障害の予防、労働者の健康の保持増進や生産性の向上にあります。つまりすべての「働く人」を対象としています。
一方で医療機関は「診断」や「治療」を目的としており、産業保健の目的とは異なります。
産業保健の目的を達成するためには、疾病性と事例性を分けて考えることが重要です。
本記事では、「疾病性」と「事例性」についてご説明します。
1.疾病性とは
疾病性とは、その人の症状や疾患の有無、診断名などに関する事で、例えば「抑うつ気分、不眠、食欲不振があり、うつ病が疑われる」といった、医師などの医療職が判断することを指します。
仮に、うつ病を抱えていても、治療をしていたり自身でコントロールができていれば、就業に問題がない従業員も多くいます。
この、疾病を抱えているかどうかや疾病を確定診断すること(疾病性の着目)は、治療に関することは「医療機関」の実施目的であるということを認識しておくことが重要です。
2.事例性とは
事例性とは、本人または周囲が困っている事象を指します。例えば、「遅刻や早退、欠勤などの勤怠の乱れ」「業務のパフォーマンスの低下」「業務上のミスが多い」「周囲とのコミュニケ―ションでよくトラブルになる」などといったことを指します。
この事例性という視点が、産業保健では非常に重要です。「疾病性」があったとしても「事例性」なければ問題ないといえます。産業保健では、「事例性」に対する予防のための本人への関わりや、周囲の配慮、その対処が重要です。
3.まとめ
産業保健は、「働く人」を対象としています。
たとえ疾病を抱えていても適切な予防行動や周囲の配慮ができていれば、就業上問題なくパフォーマンスを発揮できている人は多くいます。
そのための予防行動や、周囲の配慮への調整を担うことは産業保健の重要な役割といえます。
産業保健スタッフは、「疾病性」と「事例性」を分けて考え、事例性に着目して支援することで、産業保健活動の目的を明確にすることが大切です。
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