感情労働とは?カウンセラーの対応で多いケースをご紹介
感情労働という言葉をご存じでしょうか。面談やカウンセリング、顧客対応が多い職業に見られるもので、心理的ケアを必要とします。感情労働がどのような場面で起きるのか例をもとに把握していきましょう。
※本記事は次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。動画で見たい方は以下リンクよりご覧ください。
▶①感情労働対応で多いケースをランキングでご紹介【感情労働者の心理的ケアに関する交流会】
【目次】
1. 感情労働とは
2. 感情労働の対応で多いケース
1.感情労働とは
感情労働とは、「相手の精神を特別な状態に導くために、自分の感情を誘発、または抑圧することを職務にする、精神と感情の協調が必要な労働のこと」で社会学者のA・Rホックシールドによる言葉です。代表的な職種としては、看護師、保健師、介護士、客室乗務員、カウンセラー、コールセンターオペレーターなどがあります。
2.感情労働の対応で多いケース
当社アドバンテッジリスクマネジメントのアドバンテッジ相談センターに在籍しているカウンセラー25名を対象に、どんなときに感情労働を感じるのか聞いてみました。その中で特に多かった3つをご紹介いたします。
①罵倒、強い怒りや攻撃性のあるクライアント・クレーム対応
最も多くのカウンセラーが感じていたのは、罵倒や、強い怒り、攻撃性のあるクライアント・クレーム対応で、半分近くのカウンセラーが感じていました。こちらの対応は終わりが見えず、時には1時間ほどかかることもあります。
罵倒などに対しては、怒りを覚えたり、「そんなこと言わないでほしい」と思ったりするのが普通でしょう。しかし、その気持ちをグッと抑えて「大変申し訳ございません」「そのような気持ちにさせてしまったのですね」と自分の感情とは全然違う言葉を相手に投げかけ、怒りを鎮静化させることに導く必要があります。そういった感情を抑えることに対する疲労が生まれます。
②心理的応急処置
心理的応急処置とは、サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とも呼ばれ、事故や災害など心に大きな衝撃を与える出来事を経験した人をケアするために構成された、心理的支援法の1つです。
非常に強いストレスを受けた方は、とてもつらい状況にあるためどこまでも共感し、「あなたのような状態が出てくるのは全然おかしいことではないんだよ」とお伝えしていきます。そのプロセスの中で、やはりかなりつらいお話を聞かせていただき、そちらに共感しつづけるという、相談者の状態に対する共感的疲労が生まれます。
昨今、このPFAが増えてきており、企業の現場でこういった対応をされている方も多いのではないでしょうか。疲労し、精神がすり減ってしまうこともあるかと思います。そんなときはご自身のケアも十分に行っていきましょう。
③危機介入
自傷他害のリスクが高いクライアントの危機介入に疲労を感じている方も多くいました。カウンセラー自身も、相手の心配であったり、この方はこれからどうなっていくのだろうかという不安を感じたりするときが多々あります。しかし、その気持ちをグッと抑え、冷静な対応が求められます。①と同様に、感情を抑えることに対する疲労が生まれます。
感情労働対応に従事する方は、このような疲労感を感じる機会が多くあります。そのようなときは自身の心理的ケアもとても重要です。次の記事では当社カウンセラーの心理的ケアの取り組みと、一人職場の場合のおすすめ心理的ケアをご紹介しますので、ぜひご覧ください。
▶記事を読む 「感情労働者の心理的ケア~取り組み事例の紹介~」
講師
カウンセラー 酒井真依子(臨床心理士/公認心理師)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
「人」ソリューション部 ゼネラルマネジャー 兼 事業開発部 ゼネラルマネジャー
臨床心理学という学問に展開される理論をベースとし、個人の生産性向上に向けたカウンセリングサービス提供に従事。メンタルヘルス不調だけでなく、個人のライフキャリア全体を見通すカウンセリングまた、管理職層へのメンタルヘルス事例についてのコンサルテーションなどの活動を精力的に行っている。