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【ウェビナーへのご質問に回答】ミレイ先生と学ぶ!職場で使えるメンタルヘルスサポート

【ウェビナーへのご質問に回答】ミレイ先生に聞く!ミレイ先生と学ぶ!職場で使えるメンタルヘルスサポート
2025年1月29日に開催いたしました『ミレイ先生と学ぶ!職場で使えるメンタルヘルスサポート』では、支援者が楽になるメンタルヘルスサポートについて具体的な事例を多く交えてご講義いただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
2月のウェビナーはこちら

ウェビナー内でお答えしきれない回答について、講師の上谷実礼先生にご回答いただきましたので本記事にて紹介させていただきます。

上谷 実礼 先生ヒューマンハピネス株式会社代表取締役

目次

1.困難なケースへの対応
2.面談の進め方や記録の方法
3.精神的負担の高い相談への対応
4.産業保健と組織の関係
5.講師のセルフケア


1 困難なケースへの対応


質問 ①私生活の悩みが原因で業務に支障が出ているケース

私生活の悩み(不妊治療、夫婦関係、介護、子育て)が原因で心身の不調が生じ、業務に支障が出ているケースはどのように情報と個人への対応をするのが良いでしょうか?

■回答

ご質問ありがとうございます。
心身の不調の原因はお仕事だけではないこともありますよね。
このような場合は、課題がこんがらがってしまって苦しくなっているのかもしれません。
支援職として、まずは課題を切り分けるお手伝いから始めるのがよいでしょう。場合によっては、行政や医療機関など、様々な支援に関する具体的な情報提供が有益なケースもあるでしょう。
また、業務上に支障が出ているということは事例性があるということなので、ご本人の同意を得た上で適宜、会社側にも配慮を求める必要があるかもしれませんね。
課題の仕分けから始めて、支援職の立場でできることからサポートしていくのがよろしいかと思います。

質問 ②長期間にわたる定期面談への対応

お話頂きありがとうございました!事例にあったように、私もいつまで定期面談するか決めかねているケースがありまして、身体的不調毎に色々な病院にも自ら率先してかかっており(メンタル既往もあり体調不良によりメンタルも波があります)、報告を受けるのみなのですが、本人が希望するので面談という形で傾聴をしています。こういったケースの場合の線引きはどこですべきかアドバイス頂けますと幸いです。

■回答

ご質問ありがとうございます。
希望者が増えて面談の件数が多くなっている場合は、他の産業保健スタッフや人事にも相談して面談を設定する基準を決めた方がいいかもしれません。
そして、ご本人にも「この面談はどこに向かっているのでしょうね」「私(支援職)に期待していることを確認させてもらえますか?」などと目標の一致をするようにしてみると、方向性が明確になるように思います。

質問 ③否定的な反応を受けた際の気持ちの整理

相談者から否定的な反応があると、自分の実力不足だと感じ落ち込むことがあります。そんなときの自分自身の気持ちを整理し、次に進めるために何かできる対処法や心の持ち方はありますでしょうか。教えていただけますと幸いです。

■回答

ご質問ありがとうございます。
自分の実力不足だと感じて落ち込むということは、成長に向かう力があるということです!
面談でうまくいかなかったなと感じる時や自分の感情が動いてスムーズに進められなかったと感じる時は、その面談をテーマに自分がカウンセリングを受けるといいですよ。
相談者から同じような対応をされても否定的だと感じない人もいるかもしれません。ですから、相談者からの反応を否定的だと捉えたのはどうしてなんだろう?と自分を理解してあげるチャンスにしてあげてくださいね。

質問 ④リフレーミングをネガティブに受け取る人への対応

リフレーミングをしても、「言葉の裏を取る人」がいます。リフレーミングをネガティブにリフレーミングする人、こうした方への伝え方はどうしたらいいでしょう。

■回答

ご質問ありがとうございます。
たとえネガティブに感じられるような言動だったとしても、その人が今日まで生き延びるために必要だったことです。「言葉の裏を取らざるをえない」人生のワケがあったのでしょう。
私だったらどうするかな、と考えてみると、「〇〇さんは~~のように受け止められるのですね」「そのような受け止め方をされる想いはどんな感じでしょうか?」のように、その人が積み重ねてきた人生に興味を持って聞いてみるかなと思います。

質問 ⑤対人関係への支援について

対人関係に問題のあるケースへのアプローチとして、状況によっては、配置変換や異動を検討する場合がありますが、組織が小規模な場合、契約上異動が難しい職種等があると思います。信頼関係が崩壊してしまっている場に、身を置き続けなければならない対象者に、どのようなアドバイスができますでしょうか?ネガティブに傾いた状況を立て直すのは限界があるのではないかと思っています。良いアプローチがあればご教示いただきたいです。

■回答

ご質問ありがとうございます。
とても難しいケースですね。
産業保健スタッフができることはそう多くはないので、小規模事業所の場合には現実的には活動の限界を痛感することが多いように思います。
相談者の方には職業選択の自由があり、自分の人生を選択していけることを考えると、「信頼関係が崩壊してしまっている場に、身を置き続けなければならない」ということはもしかするとないのかもしれません。支援職がお世話を焼きすぎなくても、当事者たちは自分の人生を自分で選択する力があると信じることもまた勇気づけになります。

質問 ⑥従業員と産業保健スタッフによる共依存関係

メサイアコンプレックスのご説明の中で、「悪意なく相談者のバウンダリーを超えてしまう」というお話がありました。稀に、従業員と産業保健専門職が共依存のような状況になっている場合があります。自立の妨げやチームでの支援にも支障がでるため、従業員の方にとっても、企業側にとっても良い状況とは言えないかと思います。こういった依存しあっている関係性を整えていく場合、どのようなアプローチが効果的しょうか。

■回答

ご質問ありがとうございます。
こちらはご自身が従業員の方と共依存状態になっているのでしょうか? それとも産業保健スタッフのうちの別の方が従業員と共依存状態になっているのでしょうか?
このご質問は後者のパターンについてのものかなと想像してお答えしますね。
産業保健活動の基本は会社の枠組みとルールの中で行うことです。ルールを逸脱した関わりになっている場合はそこを切り口にアプローチするのがよいかと思います。
ルールは逸脱していなくても共依存のような関係になっていると感じる場合は、どの部分、どの関わりが従業員の自立の妨げやチームでの支援に支障が出ているのかをできるだけ具体的に伝える形でアプローチして対話をしてみてくださいね。その対話のプロセスが、チームとしての成長にもつながると思いますよ。


2 面談の進め方や記録の方法


質問 ①相談者との適切な距離感を保つ方法

最後の事例、職場の面談では必要以上に踏み込まれないようには対応できるのですが、同業者からの必要以上に頼られることに困っています。
私は経験年数が長く、質問しやすいから質問してくれると思うのですが、職場の悩みや友人の愚痴など、必要以上に相談されてしまい、神経がすり減ってしまいました。
社員とも、同業者とも、距離感を調整できない人に対して、どのような態度で示すのが良いのでしょうか。

■回答

ご質問ありがとうございます。
私だったらどうするかなと考えてみると、「質問や相談をしてくれるのは私のことを信頼してくれているのかなと思う反面、私も受け止めきれなくてしんどいなと感じることがあるんだよね」「自分の状況で、あなたの話を聴けるときと余裕がないときがあるんだよね」のように言葉を選びながらも自分の状況や感情を伝えるかなと思います。

質問 ②面談におけるPCの利用

面談の記録は話を聞きながらパソコンを利用されてらっしゃいますか?
感覚的にパソコンをはじきながら話を聞くことに抵抗がありつつも、あとからの面談記録の作成時間も負担になります。

■回答

ご質問ありがとうございます。
記録の作成は時間とエネルギーを使いますよね…。私は面談の前に「記録にパソコンを使ってもいいですか?」と相談者に断ってからパソコンで記録しています。

質問 ③相談者の話が長い場合の対応

相談者の話が長い場合の、返答や話の取りまとめのタイミングのポイントはあるでしょうか。
こちらから反応をしないと、20分30分と話すケースがあり(依存性が高い相談者でもありましたが)、何を言いたいのかこちらも把握がしづらいうえ、共感や返答もどこですることで相手に響いて、前を向ける面談につながるのか、結局話して着地点がなくただ時間だけが過ぎるということになってしまいます。相談者の話が長い場合の、返答や話の取りまとめのタイミングのポイントはあるでしょうか。

■回答

ご質問ありがとうございます。
相談者の話が長くて困るという場面はよくありますよね。面談開始時に「〇〇さんのために30分の面談時間を設定しています」と明確な時間制限があることを伝えると相談者も時間を意識することにつながります。そして、話が分かりにくくなってきたなと感じたら、話の中で時折「ちょっと確認していいですか?」と話を止めて、「ここまで話を聴いてきて、~~のように感じましたが、その理解で合っていますか?」と伝え返して理解の確認をすると、話の交通整理ができますよ。

質問 ④オンライン面談で感情を観察するコツ

対面と異なり、オンライン面談だと相手の反応がわかりづらいことがあります。オンライン面談で上手に感情を観察するコツなどがあれば教えていただきたいです。

■回答

ご質問ありがとうございます。
オンラインでも相談者をよく観察するという基本は同じです。感情は目元や口元に現れますので、マスクをされているときには、「今はどんな環境におられますか? 周りに人がいない環境でさしつかえなければマスクを外していただけると表情が見えてお話ししすいのですが…」のように伝えて、マスクを外してもらうようにお願いしています。


3 精神的負担の高い相談への対応


質問 ①「死んだほうがマシ」「仕返しをしたい」と言われた場合の対応

相談者から、こんなに辛いことが続くなら死んだほうがマシ、仕返しをどうしたら良いかなどと言われることがあり、返答にとても困った経験があります。どんな関わりができるか、何かご助言いただけると嬉しいです。よろしくお願いします

■回答

ご質問ありがとうございます。
仕返しをしたいほどの相手が社内におられる状況ということでしょうか…。このような発言を聞くと対応に困ってしまうのも無理はないと思います。
私だったら…という回答になりますが、セミナーでもお伝えしたような自己開示、「〇〇さんの話をうかがって、今、どうしたらいいか私も困っています…」「〇〇さんのお話を聴いて私の胸が苦しくなりました…」のようにその時の自分の状態、感情、感覚をお伝えするかなと思います。そして、「死んだ方がマシと思うぐらいツラい、仕返しをしたいと思うぐらい腹が立っている感じが伝わってきます」のように、伝え返しをするかもしれません。
面談の場になってみないと分かりませんが、私自身の状態、感情、感覚などを開示しながら対話をするかなと思います。
相談者さんがどんなにネガティブなことや攻撃的な発言をされたとしても、それを否定せずに「そこまで思うほど、そんな感情になるほどの状態なのだ」ということに受容・共感していくことが大切かと思います。

質問 ②相談者に共感しすぎて泣きたくなった場合の対応

共感して自分の気持ちが揺さぶられ、自分も泣きたくなってしまった場合は、泣いてもいいものですか?

■回答

ご質問ありがとうございます。
私は面談でもカウンセリングでも、よく泣いたり怒ったりしています。
というよりも、自然に涙が出てくるときはそのままにしています。
相談者に「ありのままのあなたでいいんですよ」「感情を出してもいいんですよ」「どんなことでも開示していいんですよ」と口では言いながら、自分自身は支援職としての役割にとどまっているなら、自分はネクタイをしながら相談者には服を脱げと言っているのと同じです。
カウンセリングのクライエントが「ミレイ先生が自然体で泣いたり怒ったりしているのを見て、私も自然体でいていいのだと感じられました」と言われることがあります。
支援職がありのままの自分でいることが、相談者に「自分はありのままでいていいのだ」というメッセージとして伝わります。


4 産業保健と組織の関係


質問 ①心理的知識のない上司の意向に従うべきか不安な場合

会社としての意向が決まりとしてあるわけではなく、特に心理系の知識などがない上司の意向になってしまうのですが、それでもいいのか不安です、どうしたらいいですか?

■回答

ご質問ありがとうございます。
産業保健の関わりとしては、あくまでも会社の枠組みの中での支援であること、疾病性ではなく事例性に注目することというところに軸足を置くと迷いが少なくなると思われます。
人事担当者や経営者に会社としての考え方や意向を聞いてみるのもいいかもしれませんね。

質問 ②残業時間制限における保健師の立ち回り方

過重労働面談の場合、残業時間制限を提案できるのは産業医だけでしょうか?保健師の立場でそのような提案はしない方が良いでしょうか?

■回答

ご質問ありがとうございます。
残業時間が長い社員のことを心配されている様子が伝わってきます。
産業医には労働安全衛生法で定められた事業者に対する「勧告権」がありますが、実務ではよっぽどのことがないと「勧告権」の行使はしないことが多いと思われます。どれぐらいの残業時間が発生しているかにもよるでしょうが、保健師でも産業医でも「提案」をすることが理論的に可能であったとしても、営利企業であれば売上と利益を上げる目的のために運営されているわけで、保健師や産業医による「提案」は、企業の目的の元には残念ながら微力であると思われます…。


5 講師のセルフケア


質問 ①ミレイ先生のセルフケア

ミレイ先生が日頃実践されているセルフケアはありますか?特に、メンタルヘルスで意識されていることがございましたら、おうかがいしたいです。

■回答

ご質問ありがとうございます。
まずは、よく眠ることを大切にしています。
そして、信頼するセラピストおふたりに月1回ずつセッションを受けています。
Aさんセッション➡2週間後にBさんセッション➡2週間後にAさんセッション…のように隔週でどちらかのセラピストのセッションが受けられるように予定を組んでいます。
特に相談したいテーマがなかったとしても、ネイルサロンのように定期的にセッションを予定しておいて話を聴いてもらうことで、自分の感情を深く味わうことができ、自己理解が深まります。
また、最近はほとんどありませんが、相談4のように、自分のセラピーがうまくいかないように感じたときは、そのセッションをテーマに自分がカウンセリングを受けることで自己理解を深めるようにしています。
ブログやメルマガを書いたり、SNSに投稿したりするのも、ジャーナリングのようにセルフケアになっていますね。
あとは定期的に運動しています。毎日、ワンコの散歩に行く他、筋トレと水泳を月に数回ずつ行っています。

質問への回答動画解説

■講師 上谷先生より

たくさんのご質問、ありがとうございました!
当日は質疑応答の時間が足りず、申し訳ありませんでした。
文字化して回答することで私の頭の理解も進みましたので、感謝申し上げます!!


講師のご紹介


産業医|上谷 実礼 先生

ヒューマンハピネス株式会社 代表取締役
産業医業務に従事する他、心理カウンセリング・講演・研修・執筆・ワークショップ主催・対人支援職向け自己成長のためのオンラインスクール主宰
●著書のご紹介
 ・ミレイ先生の「アドラー流 勇気づけ メンタルヘルスサポート」
 ・ミレイ先生の「アドラー流 勇気づけ 保健指導」
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