さんぽLAB

記事

うつ病による復職支援の実務ポイントとは?産業保健スタッフが押さえるべき判断基準と対応策

うつ病による休職者が職場復帰を希望したとき、産業保健スタッフとしては慎重な対応が求められます。本人の意思や主治医の診断だけでは復職を決定できないケースも多く、再休職を防ぐためにも段階的な確認とサポートが必要です。本記事では、復職判断の基準や生活記録表の活用、リワーク支援の導入など、実務で役立つ対応策を整理して解説します。


1. 本人の意思だけでは復職判断できない理由

うつ病は再発のリスクが高いため、本人の「復職したい」という気持ちだけでは職場復帰を許可することはできません。収入面の不安などから焦って復職を希望するケースもありますが、職場としては再発防止の観点から主治医の診断書を確認し、産業医の意見を踏まえた上で復職を判断する必要があります。

2. 主治医の「復職可能」だけでは不十分

主治医が復職可能と判断しても、職場が求める業務遂行能力とはギャップがあることが多いため、職場独自の復職判断基準を設けることが重要です。生活記録表の提出を求め、睡眠や活動のリズムが安定しているかを確認します。加えて、復職後に必要な業務レベルの情報を主治医にも共有し、職場との認識のずれを防ぎましょう。

3. 生活記録表で客観的に状態を確認

生活記録表では、「決まった時間に起床・就寝できているか」「日中の外出や活動が継続できているか」など、日常生活が整っているかを確認します。具体的には、週5日・2週間にわたり規則正しい生活が送れているかが一つの目安になります。記録内容をもとに産業医と主治医が連携し、復職可否を判断します。

4. 試し出勤やリワークで復職の準備を

復職の前に、段階的に職場に慣れるためのリハビリ支援も効果的です。リワークプログラムや試し出勤制度を活用することで、業務に対する耐性や適応度を確認できます。オンラインで参加可能なリワークもあるため、地域に支援施設がない場合も対応可能です。復職に不安を抱える休職者にとっても、有益な機会となります。

5. 復職希望の背景や通勤可能性もチェック

復職希望があっても、「会社の前まで行くと足がすくむ」「通勤の途中でパニックになる」など、復職を阻む心理的・身体的ハードルが残っているケースがあります。こうした要因を丁寧に確認し、通勤可否を含めて現実的な復職計画を立てることが再休職の予防に繋がります。

6. 職場環境の調整と配慮も重要

復職後の業務量や職場の人間関係などが、本人にとって過度な負担にならないように調整することも産業保健スタッフの役割です。職場環境が原因で休職に至った場合には、部署異動や業務内容の見直しも検討しましょう。ただし、復職を優先するあまり、安易にハードルを下げすぎることには注意が必要です。

7. 復職までの流れと人事との連携

復職支援の流れは主に以下のとおりです。

  • 休職中のケア:体調確認や不安のヒアリングを定期的に行う
  • 主治医の復職判断:診断書を取得し、必要な業務遂行情報を共有
  • 生活記録とリワークの実施:復職可否の判断材料を整える
  • 産業医・本人との面談:通勤可能性や就労意欲を確認
  • 職場環境の調整:必要に応じた業務配慮や配置転換を検討

情報管理やコミュニケーションには、社内イントラやクラウドサービス(例:アドバンテッジ ハーモニー)を活用し、担当者の負担軽減を図るとスムーズです。

8.まとめ

うつ病からの復職には、焦らず慎重にプロセスを踏むことが重要です。産業医・主治医・人事担当者が連携し、休職者本人の状態や職場環境を総合的に評価することで、再休職を防ぎ、円滑な職場復帰につながります。産業保健スタッフとしては、制度面・実務面の両方で適切な支援体制を構築しましょう。

もっと詳しく知りたい方はこちら

出典

アドバンテッジJOURNAL
うつ病からの復職支援。復職判断基準や対応方法、不安を取り除く再発防止策

ハッシュタグを押下して関連ページを検索↓

コメントする
1 件の返信 (新着順)
ak バッジ画像
2023/02/28 12:13

産業保健師をしております。

安全配慮として再発予防をとるために、復帰プロセスは非常に重要だと実感しています。

体調が就労可能な状態に回復しているか、
不調になったことはどのようなことが考えられそうか、
再発を予防するためにご本人が工夫できると良いこと、
周囲、職場上長がサポートできると良いこと、
など、
厚労省でいう4つのケアの連携をとりながら、
どのような形の復帰ができると良いか本人-関係者とで検討するが大切かと存じますが、
検討をする上で大切な情報となるいくつかの媒体も記事でご紹介いただけ、
参考になりました。

色々な文献を参考に復帰プロセスのフローがある中で、
ご案内いただいたエッセンスもふまえながら復帰プロセスをより良いものになるよう
検討したいと思います。

ご紹介ありがとうございました。