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ハラスメントのない職場づくり~カスタマーハラスメント、セカンドハラスメントについて解説

厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するために、集中的な広報・啓発活動を実施しています。近年、ハラスメントは社会問題として大きく取り上げられ、ハラスメントのない職場環境づくりは、すべての企業が取り組むべき重要な課題となっています。ハラスメントは従業員の健康や職場環境に深刻な影響を与え、企業の生産性や信頼性にも悪影響を及ぼします。
今回は、企業に求められるハラスメント対策やセカンドハラスメント、カスタマーハラスメントについて解説いたします。



【目次】
1.ハラスメント対策~企業に求められる対応とは?
2.セカンドハラスメント~さらなるハラスメント被害
3.カスタマーハラスメント~顧客による理不尽なクレーム


1.ハラスメント対策~企業に求められる対応とは?

ハラスメントとは、相手が不快に感じる言動や行動による嫌がらせのことを指します。
近年は、さまざまなハラスメントが社会問題として取り上げられ、企業のハラスメントに対する問題意識は高まっていると言えるでしょう。ハラスメントのない職場環境づくりを進めるために、企業には適切な対応を実施する義務があります。

ハラスメントがもたらす問題

職場におけるハラスメントは、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける、決して行ってはならない行為です。ハラスメントがもたらす問題としては下記のようなことがあげられます。

  • 労働者の意欲低下による職場の環境悪化
  • 職場全体の生産性の低下
  • 労働者の健康状態の悪化
  • 休職や退職に繋がる可能性
  • 経営的な損失 等

ハラスメントの防止と対応-事業者が講ずべき対策

ハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、以下の通り厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置を必ず講じなければなりません。
事業主及び労働者の責務について、職場におけるハラスメント防止のために、事業主、労働者に対して以下の規定が定められています。

【事業主、労働者の責務】

  • 職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題に対する労働者の関心と理解を深めること
  • その雇用する労働者が他の労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
  • 事業主自身(法人の場合はその役員)がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うこと

【労働者の責務】

  • ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者(※)に対する言動に注意を払うこと
  • 事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること

※ 取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。


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2.セカンドハラスメント~さらなるハラスメント被害

セカンドハラスメントとは、ハラスメントを受けた従業員が被害を相談・申告したことによって生じる二次被害のことです。勇気を出して相談したにもかかわらず、相談窓口の担当者や周囲の従業員からバッシングされたり、威圧感のある対応をされたりすることで、被害者はさらなる精神的苦痛を受けてしまいます。

セカンドハラスメントは一次被害であるパワハラやセクハラなどと比べると認知度が低いですが、発生すると従業員からの信頼が大きく損なわれます。企業のイメージや価値も下がり、ハラスメントが発生しても相談されなくなる恐れがあります。加害者が無自覚で行っているケースも多く、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が対策を難しくしています。

セカンドハラスメントの具体例

セカンドハラスメントにはいくつかの種類があり、以下の具体例を挙げます。

  • ハラスメント被害の事実を信じない・否定する
  • ハラスメント被害者を責める
  • 加害者を擁護する
  • 特定の価値観を押し付ける
  • 告発内容を社内に広める、加害者に知らせる
  • 被害者にペナルティ・不利益を与える

セカンドハラスメントの原因

セカンドハラスメントが起きる主な原因として以下が挙げられます。

  • ハラスメントを軽視している
  • セカンドハラスメントへの認識が薄い
  • ハラスメント対策が形骸化している

セカンドハラスメントの対策

セカンドハラスメントを防ぐための具体的な対策として以下が重要です。

  • ハラスメントに関する研修の実施
  • 心理的安全性の高い環境の構築
  • 傾聴力の向上
  • ハラスメントの相談窓口の設置

企業としては、ハラスメントそのものを生じさせない環境づくりと併せて、セカンドハラスメントについての理解を深める取り組みが求められます。具体的な対策を講じることで、従業員が安心して働ける職場環境を整えることが重要です。


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3.カスタマーハラスメント~顧客による理不尽なクレーム

カスタマーハラスメントとは、顧客から受ける理不尽なクレームや不当な言いがかり、過剰な要求といった迷惑行為のことで、カスハラと呼ばれることもあります。
厚生労働省の対策マニュアルでは、「顧客などからのクレーム・言動のうち、当該行為・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。

カスタマーハラスメントの増加と背景

カスタマーハラスメントが増加している要因には、さまざまなものが挙げられます。主な要因は以下の通りです。

  • 顧客至上主義の弊害
    高度経済成長期から続く「お客様は神様」という価値観が、顧客に過剰な期待を抱かせ、従業員に対する過剰な要求やハラスメントにつながるケースが増えています。
  • 顧客の発言・発信力の増大
    SNSの普及により、顧客が簡単に匿名でクレームを発信できる環境が整ったことも、カスタマーハラスメントの増加に拍車をかけています。

企業に与える被害とリスク

カスタマーハラスメントは従業員のストレスによる離職や休職を招き、企業にとって大きな損失となります。また、放置すれば企業イメージが悪化し、業績にも影響を与える可能性があります。さらに、従業員の適切な保護を怠ると、安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるリスクもあります。

企業が取るべき対策

企業がカスタマーハラスメントに対応するためには、まず企業全体での方針を明確にし、それを従業員に周知することが重要です。また、具体的な対策マニュアルの作成や、従業員向けの研修を通じて、従業員一人ひとりが適切に対応できるようにすることも不可欠です。さらに、対応した従業員のメンタルサポートとして、専門家によるカウンセリングサービスを提供することも考慮すべきです。
また、対策に取り組む際には、労働契約法、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)等の遵守すべき法律を把握し、適切な対応が求められます。


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