さんぽLAB

記事

職場の無自覚な偏見「アンコンシャス・バイアス」とは?—産業保健スタッフが押さえておきたいハラスメント防止の視点

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、職場におけるハラスメントの温床になる可能性があります。管理職だけでなく部下も含め、誰もが持つ偏見を自覚し、適切なコミュニケーションを取ることが、ハラスメントの予防につながります。本記事では、産業保健スタッフが職場での支援や教育を行う上で知っておきたいアンコンシャス・バイアスの基礎知識と、実際のカウンセリング現場での事例、職場での実践的な対策を解説します。


1.アンコンシャス・バイアスとは?

アンコンシャス・バイアスとは、無意識に抱いている先入観や思い込みのこと。本人に自覚がないため、気づかぬうちに相手を傷つけたり、不公平な対応をしてしまうことがあります。
たとえば「管理職=男性・中高年」といったイメージが浮かぶのも、その一例です。こうしたバイアスは、情報処理を効率化する脳の働きによって形成されるため、誰もが持っているものです。重要なのは、その存在に気づき、個人に当てはめすぎないように意識することです。

2.ハラスメント行為者の背景にある「思い込み」

ハラスメントの加害者が悪意を持って行動しているとは限りません。カウンセリングの現場では、「~べき」「普通は~」といった“べき論”に基づく言動が多く見られます。
たとえば、女性には責任の軽い仕事、男性にはチャレンジングな仕事を与えるといった対応は、本人には配慮のつもりでも、結果的に不満や格差を生み出します。
また、直属の部下には厳しく、他チームには柔らかい態度を取る管理職の例もあります。これは「身内には厳しくすべき」といったバイアスが影響している可能性があります。

3.表面的な行動ではなく、その背景の感情を観察する

ハラスメント防止には、表面的な行動だけでなく、その行動を引き起こす背景の感情や思考パターンに着目することが大切です。
アンコンシャス・バイアスに気づき、思考のクセを見直すことが、感情の暴走や行動の歪みを防ぎ、ハラスメントの予防につながります。

4.相手の立場に立ったコミュニケーションの重要性

管理職も部下も、互いの立場に立ったコミュニケーションが求められます。

  • 管理職のポイント
  • 日頃から部下の特性に合わせた対応を心がける
  • 相手のNGライン(価値観・感情)を理解する
  • 自身の感情をコントロールする
  • 部下のポイント
  • 関係が悪化する前に早めに相談する
  • 自分だけで抱え込まず、必要な支援を求める
  • 相手の言動を一面的に捉えず、意図や背景を考慮する

こうした積み重ねが、信頼関係の構築と、ハラスメントの予防につながります。

5.継続的な教育と内省の機会が必要

ハラスメント防止研修は、一度実施して終わりではなく、定期的かつ継続的な実施が重要です。
産業保健スタッフとしては、職場の誰もがバイアスを持っていることを前提に、行動変容を促す体験型の研修を提案・実施していくことが求められます。
アンコンシャス・バイアスへの理解を深め、互いの違いを尊重する職場づくりに向けた取り組みが、より安全で健全な職場環境の土台となるでしょう。

もっと詳しく知りたい方はこちら

出典

アドバンテッジJOURNAL
アンコンシャス・バイアスの事例とは?~ハラスメント行為者のカウンセリング現場から~

ハッシュタグを押下して関連ページを検索↓

コメントする