はじめに
本記事は、厚生労働省『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』をもとに、産業医・保健師・人事労務担当者が従業員への対応や健康教育に活用できるよう、要点をFAQ形式で整理しています。
本ガイドラインは、アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりが不適切な飲酒を減らすことを目的としており、年齢・性別・体質などの違い、疾病や行動面のリスク、留意すべき飲酒量(純アルコール量)や飲み方、避けるべき飲酒などを示しています。
なお、アルコールの影響には個人差があり、体調などによっても変動します。飲酒習慣のない人に無理に飲酒を勧めることは避けることが望ましいとされています。
目次
1.基礎知識:アルコールの代謝と影響
2.年齢・性別・体質による違い
3.過度な飲酒がもたらすリスク(疾病・行動)
4.飲酒量(純アルコール量)の考え方
5.健康に配慮した飲酒の仕方(実務で伝えるポイント)
6.飲酒に係る留意事項(禁止・避けるべき飲酒)
7.産業保健スタッフ向けまとめ
1.基礎知識:アルコールの代謝と影響
Q1. ガイドラインの目的は何ですか?
A. アルコール健康障害の発生を防止することを目的に、国民がアルコール関連問題への関心と理解を深めるとともに、不適切な飲酒を減らすための指針としてとして示されたものです。
Q2. アルコールは体内でどのように代謝されますか?
A. 飲酒したアルコールの大半は小腸から吸収され、血液によって全身を巡った後、肝臓でアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されます。酢酸は筋肉や心臓に運ばれ、さらに分解され、最終的に炭酸ガスと水になります。
Q3. 飲酒による影響に『個人差』が出るのはなぜですか?
A. 年齢・性別・体質(分解酵素の働きの強弱など)によって、同じ量の飲酒でも影響が異なるためです。また、そのときの体調などによっても左右されます。
2.年齢・性別・体質による違い
Q4. 高齢者はなぜ少量でも注意が必要ですか?
A. 高齢者は体内の水分量の減少などにより、同じ量でも酔いやすい傾向があります。また、一定量を超える飲酒は認知機能への影響が指摘されているほか、転倒・骨折や筋肉量の減少(サルコペニアなど)のリスクも高まります。
Q5. 若年者(20歳代を含む)で多量飲酒が問題となる理由は?
A. 若年者は脳の発達途中にあるため、多量飲酒によって脳機能に悪影響が及ぶ可能性があるとされています。また、高血圧などの健康問題のリスクが高まる可能性も示されています。
Q6. 女性は男性より影響を受けやすいのですか?
A. 一般に、女性は体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないことに加え、エストロゲンなど女性ホルモンの働きなどから、アルコールの影響を受けやすいことが知られています。そのため、男性より少ない飲酒量・短い期間でもアルコール関連肝硬変を発症する場合があるなど、影響が大きく現れる可能性があるとされています。
Q7. 体質的に『お酒に弱い』人が注意すべき点は?
A. 分解酵素の働きが弱い場合、少量の飲酒でも顔が赤くなる、動悸がする、吐き気が出るといった「フラッシング反応」が起こることがあります。長年の飲酒によって不快感が弱まり、飲めるようになったように感じても、口の中のがんや食道がんなどのリスクが高いことが示されているため、特に注意が必要です。
3.過度な飲酒がもたらすリスク(疾病・行動)
Q8. 過度な飲酒で起こり得る『疾病』のリスクは?
A. 急激な多量飲酒は、急性アルコール中毒(意識障害、嘔吐、呼吸状態の悪化など)につながる可能性があります。さらに、長期にわたる大量飲酒は、アルコール依存症、生活習慣病、肝疾患、がんなどの発症リスクを高めるとされています。
Q9. 行動面ではどんなリスクがありますか?
A. 運動機能や集中力の低下により、工具類・電動機器・火気を扱う器具の使用時や高所作業中の事故、路上や公共交通機関での他人とのトラブル、暴力行為、金銭・機密書類・PC・USBなどの紛失といった問題が生じるおそれがあります。
4.飲酒量(純アルコール量)の考え方
Q10. 『純アルコール量』とは何ですか?
A. 「純アルコール量」とは、お酒に含まれるアルコールの量を数値で示したものです。摂取量(ml)×アルコール濃度(度数÷100)×0.8(アルコールの比重)で算出します。たとえば、ビール500ml(5%)の純アルコール量は20gです。
Q11. 飲酒量と健康リスクの基本的な考え方は?
A. 一般に、飲酒量(純アルコール量)が少ないほど、飲酒による健康リスクは低くなると報告されています。そのため、各人が疾患の発症リスクにも目を向けながら、健康に配慮した飲酒を心がけることが重要です。もっとも、少量の飲酒でもリスクが上がる疾患がある点には注意が必要です。
Q12. 国内の参考目標(計画上の『リスクを高める量』)は?
A. 第2期計画などでは、生活習慣病のリスクを高める量として、「男性は1日40g以上、女性は1日20g以上」の純アルコールを摂取している人の減少を目標としています。なお、これらの数値は、個々人にとっての許容量を示すものではないと明記されています。
5.健康に配慮した飲酒の仕方(実務で伝えるポイント)
Q13. 健康に配慮した飲酒の『基本行動』は?
A. たとえば、①自分の飲酒状況を把握する(医師への相談やAUDITの活用など)、②あらかじめ飲む量を決める、③飲酒前や飲酒中に食事をとる、④水や炭酸水をはさむ、薄める、少しずつ飲むなどして、アルコールの吸収や摂取のペースを緩やかにする、⑤週のうち飲まない日を設ける(連日の飲酒を避ける)といった行動が挙げられます。
Q14. 『休肝日』はなぜ推奨されますか?
A. 毎日の飲酒を続けることは、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。そのため、週あたりの純アルコール摂取量を減らす観点からも、定期的に飲酒しない日を設けることが勧められています。
6.飲酒に係る留意事項(禁止・避けるべき飲酒)
Q15. 『重要な禁止事項』には何がありますか?
A. たとえば、酒気帯び運転、20歳未満の飲酒、飲酒により適切な判断や行動ができない状態で危険な機器を操作すること、公衆に迷惑を及ぼす行為などが挙げられます。また、妊娠中・授乳中の飲酒や、体質的に酒を受け付けない人(分解酵素の働きが非常に弱い人など)の飲酒は避ける必要があるとされています。
Q16. 『避けるべき飲酒・行動』の例は?
A. たとえば、①一時多量飲酒(特に短時間での多量飲酒)、②他人に飲酒を強要すること等(暴言・暴力・ハラスメントの防止を含みます)、③不安や不眠を紛らわすための飲酒、④病気の療養中や服薬後の飲酒、⑤飲酒中または飲酒後の運動や入浴など、身体に負担のかかる行動が挙げられます。
7.産業保健スタッフ向けまとめ
- 飲酒の影響は、年齢・性別・体質・体調によって異なるため、「純アルコール量」で把握しつつ、個別の配慮を促すことが重要です。
- 少量の飲酒でもリスクが高まる疾患があることを踏まえ、「できるだけ控える」「飲む場合は量を決める」というメッセージを基本とすることが有用です。
- 職場では、行動面のリスク(事故、トラブル、機密情報の紛失など)を具体例とともに伝え、飲酒と安全の関係への理解を促すことが大切です。
- 禁止事項(飲酒運転、20歳未満の飲酒、妊娠中・授乳中の飲酒、体質的に酒を受け付けない人の飲酒)と、避けるべき飲酒(短時間での多量飲酒、飲酒の強要、不安や不眠を目的とした飲酒、服薬後の飲酒、入浴・運動など)を明確に周知する必要があります。
- 本人や周囲の理解を前提に、「無理に飲ませない」「ハラスメントを生じさせない」職場文化づくりを支援することが求められます。
出典:厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」をもとに作成。(2026年4月30日利用)
※本記事は、上記資料を参考に当社が編集・作成したものです。
※本記事の作成にあたっては、文章整理の補助としてAIを活用しています。


