はじめに
本記事は、厚生労働省・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が公表するリーフレット『事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット』を基に、産業保健スタッフ・人事労務担当者が事業場での予防・相談対応・再発防止の整備に活用できるよう、要点をFAQ形式で整理したものです。
職場でのセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、働く人の尊厳を不当に傷つけ、能力発揮を妨げるだけでなく、職場環境の悪化や企業の社会的評価の低下につながる重大な問題です。男女雇用機会均等法により、事業主には雇用管理上必要な措置を講じる義務があります。派遣労働者については、派遣元だけでなく派遣先も同様に措置を講じる必要があります。
目次
- セクシュアルハラスメントの定義と範囲
- 類型:対価型/環境型
- 新設:求職者等に対するセクシュアルハラスメント(令和8年10月1日施行)
- 事業主が雇用管理上講ずべき措置(措置義務)
- 事後対応・プライバシー保護・不利益取扱いの禁止
- 外部の相談先・制度
- 産業保健スタッフ向けまとめ
1. セクシュアルハラスメントの定義と範囲
Q1. 『職場におけるセクシュアルハラスメント』とは何ですか?
A. 『職場』において行われる、『労働者』の意に反する『性的な言動』に対する労働者の対応により労働条件上の不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることを指します。被害を受ける者の性的指向やジェンダーアイデンティティ(SOGI)にかかわらず対象となります。
Q2. 『職場』にはどこまで含まれますか?
A. 労働者が通常就業している場所に限らず、業務を遂行するすべての場所が含まれます。
- 「職場」の例:出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせ場所(接待の席を含む)、顧客の自宅、取材先など。勤務時間外の懇親の場、社員寮、通勤中などであっても、職務との関連性、参加者、参加の強制性などを考慮して実質上職務の延長と認められる場合は「職場」に該当します。
Q3. 『労働者』には誰が含まれますか?
A. 正規労働者だけでなく、パートタイム労働者、契約社員など非正規労働者を含む、事業主が雇用する労働者すべてが対象です。派遣労働者については派遣元事業主だけでなく、派遣先事業主も自社労働者と同様に措置を講じる必要があります。
Q4. 『性的な言動』とは何を指しますか?
A. 性的な内容の発言(噂の流布、性的冗談、食事やデートへの執拗な誘い等)および性的な行動(身体への接触、強制わいせつ行為、わいせつ図画の掲示等)を指します。
行為者は事業主・上司・同僚に限らず、取引先等の他の事業主やその労働者、顧客、患者、学校の生徒等も該当し得ます。同性間で行われるものや、相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティ(SOGI)に関わらない言動も含まれます。
2. 類型:対価型/環境型
Q5. 『対価型セクシュアルハラスメント』とは?
A. 労働者の意に反する性的な言動に対する対応(拒否や抵抗)により、解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることです。
Q6. 『環境型セクシュアルハラスメント』とは?
A. 労働者の意に反する性的な言動により就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業上看過できない程度の支障が生じることです。
3. 新設:求職者等に対するセクシュアルハラスメント(令和8年10月1日施行)
Q7. 『求職者等に対するセクシュアルハラスメント』とは何ですか?
A. 令和7年の改正男女雇用機会均等法に基づき、求職活動等(就職面接、会社説明会、OB・OG訪問、インターンシップ、教育実習等)において、事業主の雇用する労働者が求職者等に対して行う性的な言動により、求職活動等が阻害されることを指します。事業主には、求職者等からの相談に応じ適切に対応するための体制整備などの雇用管理上の措置を講じることが義務付けられます。
4. 事業主が雇用管理上講ずべき措置(措置義務)
Q8. 事業主が講ずべき具体的な措置には何がありますか?
A. 厚生労働大臣の指針により、主に以下の措置を必ず講じなければなりません。
- 方針等の明確化及び周知・啓発(セクハラ禁止の方針・行為者への厳正な対処方針の明確化と周知)
- 相談体制の整備(相談窓口の設置・周知、適切な対応体制の確保)
- 事後の迅速かつ適切な対応(正確な事実確認、被害者への配慮措置、行為者への適正な措置、再発防止策の実施)
- 併せて講ずべき措置(当事者のプライバシー保護措置の実施と周知、相談・協力等を理由とする不利益取扱いの禁止)
Q9. 相談窓口はどう整備すべきですか?
A. 相談窓口の担当者をあらかじめ定め、従業員が相談しやすい体制を整備しましょう。相談窓口は形式的に設けるだけでなく、労働者(求職者等含む)が利用しやすい体制整備と周知が必要です。面談・電話・メールなど複数の手段を用意し、ハラスメントが現実に発生している場合だけでなく、「発生のおそれがある場合」や「該当するか微妙な場合」であっても広く相談に応じることが求められます。
Q10. 他社の労働者との間でセクハラが発生した場合、どのように対応しますか?
A. 自社の労働者が他社の労働者からセクハラを受けた場合、事業主は雇用管理上の措置として適切に相談対応を行う必要があります。また、自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合など、他社から事実確認や再発防止などの協力を求められた際には、これに応じるよう努めること(努力義務)とされています。
5. 事後対応・プライバシー保護・不利益取扱いの禁止
Q11. 事実関係や事後対応で留意すべきポイントは?
A. 相談窓口の担当者は、相談者および行為者の双方から迅速かつ正確に事実関係を確認します。主張に不一致がある場合は、第三者からの聴取等を行います。事実が確認できた場合は、就業規則に基づき行為者への厳正な措置を行うとともに、被害者と行為者の引き離し(配置転換)、謝罪、関係改善援助などの措置を講じます。事実が確認できなかった場合でも、改めて周知や研修などの再発防止措置を実施します。
Q12. プライバシー保護および不利益取扱いの禁止とは?
A. 以下の2点が重要です。
- プライバシー保護:相談者や行為者等の情報はプライバシーに属するため、保護措置をマニュアル化・周知し、安心して相談できる環境を整えます。性的指向・ジェンダーアイデンティティ(SOGI)や病歴等も含まれます。
- 不利益取扱いの禁止:ハラスメントの相談を行ったことや、事実確認等の対応に協力したことなどを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。
6. 外部の相談先・制度
Q13. 社内解決が困難な場合の外部機関は?
A. 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)では、ハラスメントに関する相談・問い合わせを受け付けています。また、当事者間で紛争が解決しない場合、男女雇用機会均等法に基づき、労働局長による紛争解決の援助や、機会均等調停会議による調停制度が利用できます。
7. 産業保健スタッフ向けまとめ
- 概念の正確な把握:『職場』『労働者』『性的な言動』の範囲に加え、同性間・SOGI関連の言動や、勤務時間外の行事なども含めて予防策を企画・推進する。
- 改正への対応:令和8年10月1日施行の「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置」を踏まえ、採用活動・インターンシップにおける対応ルールや窓口の周知・整備を進める。
- 実効性のある体制整備:「発生前」「おそれ」「微妙なケース」から相談を受け付けられる柔軟な相談窓口を構築し、二次被害を防止する。
- 連携・外部資源の活用:迅速な事実確認・被害者ケア・再発防止をセットで進め、自社内解決が難しい場合は都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)等の外部機関や専門家と適切に連携する。
出典:厚生労働省・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)『事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット』より作成。(2026年8月4日利用)
※本記事は上記資料を参考に、当社が編集・作成しました。
※本記事の作成にあたり、文章整理にAIを補助的に活用しています。





