産業保健スタッフが押さえておきたい「心理的安全性」とは?職場改善につながる基礎知識と実践法
近年、企業の生産性や従業員の健康に直結する要素として注目される「心理的安全性」。産業保健スタッフが職場のメンタルヘルス対策を担う中で、この概念を理解し、実践することは欠かせません。本記事では、心理的安全性の定義から、低い職場で起こりやすいリスク、そして高めるための実践的なアプローチまで、産業保健の現場で活用できる知識を整理してご紹介します。
1. 心理的安全性とは?
心理的安全性とは、「職場で自分の意見や気持ちを安心して発言・行動できる状態」のことを指します。1999年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱し、Google社が2016年にその重要性を発表したことで世界的に注目されました。これは単なる「仲が良い職場」ではなく、異なる意見を尊重し合いながら、個々が主体性を発揮できるチームの土台ともいえる概念です。
2. 心理的安全性が低い職場で起こる4つの不安
心理的安全性が欠如した職場では、従業員が以下のような不安を抱えやすくなります。
①無知だと思われる不安:「質問=恥」となり、相談や確認がしにくい
②無能だと思われる不安:ミスを隠す、報連相ができない
③邪魔をしていると思われる不安:意見を控え、多数派に同調
④ネガティブだと思われる不安:課題指摘がしにくく、問題提起が減る
このような職場環境では、従業員が萎縮し、生産性やモチベーションの低下につながるリスクが高まります。
3. 心理的安全性を高める5つのメリット
心理的安全性が高まることで、組織全体に以下のような好影響が見られます。
①従業員エンゲージメントの向上:主体的な行動が促進され、離職率の低下につながる
②コミュニケーションの活性化:互いにサポートし合う風土が生まれる
③生産性の向上:自由な発言が新たなアイデアやイノベーションを生む
④エンプロイー・エクスペリエンスの向上:職場に対する満足感が高まり、定着率が上がる
⑤企業のウェルビーイング推進:個人の安心が組織全体の健康へと波及する
産業保健の立場からは、メンタル不調の予防や早期対応、働きがいのある職場づくりに直結する要素といえます。
4. 心理的安全性の測定方法
心理的安全性は主観的な概念ですが、アンケートを活用して可視化することが可能です。エドモンドソン教授が提唱する「7つの質問」では、チームでの非難の有無、助け合い、意見交換のしやすさなどが評価されます。これに自社独自の視点を加えたサーベイを定期的に実施することで、職場の現状と課題を明らかにすることができます。
5. 心理的安全性を高めるための実践法
■アサーティブ・コミュニケーションの推進
相手を尊重しながら自分の意見を伝えるアサーティブ・コミュニケーションは、職場における摩擦を軽減し、信頼関係を築く鍵となります。管理職研修などでこのスキルを広めることで、現場全体の対話の質が向上します。
■1on1ミーティングの活用
定期的な1on1ミーティングを通じて、部下の本音や困りごとに耳を傾ける場を設けることは、心理的安全性の醸成に効果的です。聞く姿勢のある上司の存在は、従業員の安心感につながります。
■多様性を受け入れる組織文化の育成
性格、価値観、働き方など、さまざまな違いを受け入れる文化を育むことも重要です。これにより、マイノリティの声が拾われやすくなり、全員が居場所を感じやすい職場づくりにつながります。
産業保健スタッフとしては、職場の心理的安全性がメンタルヘルスや組織の健全性に密接に関わることを踏まえ、経営層や人事部と連携しながら改善策を提案・実践していくことが求められます。心理的安全性の確保は、従業員の声を引き出し、支援を届けるための“土台”です。
出典
アドバンテッジJOURNAL
いま注目の“心理的安全性”とは?高めるメリットや方法をわかりやすく解説
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