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円滑な職場復帰のためのポイント~支援のプロセスや健康情報の取り扱いについて解説

円滑な職場復帰を支援するためには、休業者だけでなく、管理監督者や人事担当者など多職種との連携をスムーズに行い、安心して職場復帰できる環境を整えることが大切です。
今回は、職場復帰支援のプロセスや健康情報の取り扱い、また、復帰支援の現場での実際のお困りごととその解決案についてもご紹介いたします。



【目次】
1.職場復帰支援の基本~各ステップのポイント
2.健康情報の取り扱いに求められる配慮
3.会社の判断で休業継続、診断書の取り扱い


1.職場復帰支援の基本~各ステップのポイント

職場復帰支援とは、傷病等により長期休業していた労働者の復職のための支援を、企業側が行う支援活動です。厚生労働省より事業場向けマニュアルとして、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表されており、実際の職場復帰にあたり、事業者が行う職場復帰支援の内容を総合的に示しています。

休業に至る原因や背景は労働者によって様々ですが、手引きを参考に、職場復帰プログラムの策定や関連規程の整備を行っていくと良いでしょう。

職場復帰支援のプロセス~各ステップのポイント

円滑な職場復帰を行うためには、職場復帰支援プログラムの策定や関連規程の整備等により、休業から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが大切です。

■第1ステップ: 病気休業開始及び休業中のケア

労働者から管理監督者に主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され、休業が始まります。該当労働者が安心して療養できる環境づくりに努めます。

■第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断

休業中の労働者が職場復帰の意欲を持ち、主治医が職場復帰可能と判断した場合、労働者は事業者に対して、職場復帰の申請を行い、主治医による職場復帰可能の意見書(診断書)を提出します。労働者の状態が就業可能であるという回復レベルに達していることを主治医の意見として提出してもらうと良いでしょう。

■第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

事業者は、必要な情報収集と評価を行ったうえで、休業中の労働者の職場復帰の可否を適切に判断し、さらに、職場復帰を支援するための具体的プラン(職場復帰支援プラン)を作成します。この具体的プランの作成にあたって事業場内産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者、休職中の労働者の間でよく連携しながら進めます。

■第4ステップ:最終的な職場復帰の決定

第3ステップでの検討内容を踏まえて、事業者による最終的な職場復帰の決定を行います。職場復帰可否については、個々のケースに応じて総合的な判断が必要です。

■第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ

職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、事業場内産業保健スタッフ等による定期的な面談等のフォローアップを実施し、適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。

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2.健康情報の取り扱いに求められる配慮

職場復帰支援の過程では、労働者の健康管理に伴い様々な情報を取り扱います。特に、健康情報は、機微な情報が含まれており、適切な取り扱いが必要です。
取り扱いを誤ることで、不当な差別や偏見、その他の不利益が生じることのないよう、適切な配慮が求められています。

個人情報と要配慮個人情報

  • 個人情報
    生存する個人に関する情報で あって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを言います。個人情報は基本的に保護され、本人の同意なく、第三者に開示されることがないのが原則です。

  • 要配慮個人情報
    本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないように、その取扱いに特に配慮を要するものを言います。
    要配慮個人情報のうち、心身の状態に関するものとしては、身体障害、知的障害、精神障害等の心身の機能の障害、健康診断その他の検査の結果、本人に対して医師等により行われた心身の状態の改善のための指導、診療などがあげられます。「健康情報」は、基本的には「要配慮個人情報」に該当します。

産業保健における従業員の健康情報の取扱い

労働者の健康情報は、守秘義務に基づきプライバシーを守って管理することが求められていますが、その一方で、企業が適切に安全配慮義務を果たすために、必要な情報を事業者や職場に確実に伝える必要があります。
プライバシー保護と、企業としての安全配慮義務や健康管理の両面を、常に配慮しながら健康情報を取り扱うことが重要です。

健康情報取扱規程の策定

2019年に施行された、働き方改革関連法により労働安全衛生法が改正され「心身の状態に関する情報の取扱い」という規程が新設されました。企業には、労働者の健康を管理するための必要な措置として、「健康情報等の取扱規程」を策定することが義務付けられています。
健康情報取扱規程では、健康情報の範囲、管理体制、本人同意の取得方法などのルールを決める必要があります。例えば、健康診断の結果データを閲覧できるのは誰かなど、情報の種類ごとに取扱いの範囲を定めていきます。

労働者が安心して自身の健康情報を企業に提供できる環境を整備し、適切かつ円滑に取り扱われるよう、関係者が連携を取っていくことが求められています。

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3.会社の判断で休業継続、診断書の取り扱い

主治医が復職が可能と診断していても、産業医の意見などを参考に、会社として休業を継続する決定をすることがあります。休業から復帰に至るタイミングで診断書を取り扱う際に、その後の対応に迷うことはありませんか?

さんぽLABには「お困りごとQ&A」というコミュニティがあります。産業保健を実践する上で、日々のお悩みやお困りごとについて、ご質問いただける場となっております。職場復帰支援をする上での、実際の現場でのお困り事と、いただいたご回答例についてご紹介します。

会社の判断で休業継続となった際の対応(質問例より一部抜粋)

がん治療により休業中の従業員から、「復職可」の診断書が出ました。しかし、化学療法の副作用により体力が低下し、階段の昇降や外出時にも疲労を感じる状況のため、産業医からは現時点では「復職不可」という意見書が出ました。
会社としても、復職は認められず、休業継続となりますが、就業規則上、休業継続する場合には診断書の提出が必要です。本人に改めて主治医に状況を伝えてもらい、診断書の日付を変えてもらうか、再発行してもらうことが必要となります。企業の判断により復職不可になった場合のより良い対応方法を知りたいです。

回答例から一部抜粋

病気休業中の会社への診断書の提出は法令に基づくものではなく、社内のルールによるものです。復職が可能だと主治医が診断していても、産業医の意見などを参考に、休業を継続する決定をすることがあります。このとき、会社から主治医に対して、社内の手続きのために「休業が必要」との診断書を発行するよう求めることがありますが、診断結果を変更はできないとして、拒否されることがあります。社内の運用をどうするかを検討しておくことが大切です。

診断書提出に関する対応について

休業中の診断書提出は法律上の義務ではなく、社内規則に基づく対応となります。産業医の意見をもとに会社が休業継続と判断したケースでは、その後の診断書の提出について社内で運用を検討しておく必要があります。

主治医への診断書再発行依頼について

主治医に「要休業」という診断書の発行を依頼する場合には、まずは社内の状況を主治医にしっかり説明することが必要です。会社が事情を説明する書類を作成し、本人経由で主治医に渡すと良いでしょう。

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両立支援につながる休業者管理


近年浸透してきた”ニューノーマル”という言葉がありますが、非対面での営業や、在宅勤務の活用などの新しい働き方が定着し、現場では様々な対応を求められています。これらの場所や時間の制約を緩和する働き方は、両立支援を必要とする多様な働き手に取ってもメリットがあり、ダイバーシティ推進の観点からも重要な取り組みです。
多様な人材の活躍のためにも欠かせないのが、仕事との両立支援です。介護をはじめ、私傷病、産休育休などによる休業をした従業員の管理やコミュニケーションにお悩みの方は是非ご覧ください。



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