コロナ禍のテレワークが産業保健スタッフに示す課題と精神的健康への影響
新型コロナウイルスの流行を契機に急速に広まったテレワーク。しかし、感染対策としての急な導入は働く人のワークライフバランスやメンタルヘルスに複雑な影響を及ぼしています。本記事では、産業医科大学の最新研究をもとに、同居家族の状況や在宅勤務の希望度合いが在宅勤務者の心理的苦痛にどう関わるかを解説し、産業保健スタッフとしての支援のヒントを探ります。
1. コロナ禍で急増したテレワークの現状と働き方の変化
コロナ禍により、感染拡大防止と事業継続の観点からテレワーク導入企業は急増しました。総務省の調査によると、2021年には約半数の企業がテレワークを導入しています。従来、テレワークはワークライフバランス向上や業務効率化のための施策でしたが、コロナ禍のテレワークは主に感染症対策のための急な対応であったことが大きな特徴です。
2. テレワークのメリットと課題〜ワークライフバランスとメンタルヘルスの両面から
テレワークは通勤負担軽減や時間の柔軟利用によるワークライフバランス改善が期待されますが、コロナ禍の急な導入では勤務環境の不備や時間・空間の境界の曖昧さから「長時間労働」や「心身の休息不足」といった課題も顕在化しました。日本渡航医学会・日本産業衛生学会も在宅勤務の課題として業務と私生活の区別やコミュニケーションの工夫が重要であると指摘しています。
3. 同居家族の状況が在宅勤務者の精神的健康に与える影響
産業医科大学の研究では、在宅勤務者の心理的苦痛は同居家族の状況によって異なることが示されました。要介護家族や未就学児、小学生、配偶者と同居する場合、心理的苦痛が増加する傾向があります。これは、仕事と家庭の境界設定が困難になることや、介護・育児負担の増加が影響していると考えられます。
4. 在宅勤務の希望度合いと実際の勤務頻度のミスマッチが心理的苦痛を左右
別の研究では、在宅勤務を希望しない人が頻繁に在宅勤務を強いられると心理的苦痛が増加する一方、希望する人は在宅勤務頻度が高いほど心理的苦痛が減少することがわかりました。つまり、勤務形態の個人の希望に応じた柔軟な対応がメンタルヘルスに大きく関わることが示唆されます。
5. 産業保健スタッフが取り組むべき支援のポイント
コロナ禍のテレワークがもたらす精神的ストレスを軽減するためには、働く人自身のセルフケア促進とともに、企業側による同居家族の状況に配慮した心理的・社会的支援が求められます。また、在宅以外の勤務環境の整備や業務時間管理の徹底、コミュニケーション手段の工夫も重要です。産業保健スタッフはこれらの課題に気づき、適切なアドバイスや環境改善提案を行う役割を担います。
出典
アドバンテッジJOURNAL
コロナ禍におけるテレワークと働く人々の精神的健康 ~ワークライフバランスの観点から~
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