はじめに
産業保健活動では、従業員面談、人事担当者との連携、管理職支援など、多様なコミュニケーションが求められます。
しかし、「自分はどんなコミュニケーションスタイルなのか」を意識する機会はあまり多くないかもしれません。
そこで今回は、さんぽLAB会員を対象に実施した「日々の業務中のコミュニケーションを振り返ったとき、あなたのスタイルに最も近いものはどれですか?」というテーマのアンケート結果に基づき、皆様が普段どのようなコミュニケーションスタイルで業務に取り組まれているか、実際の投票結果をもとに、その傾向や対応のヒントを整理します。
投票結果(概要)
期間:2026年3月14日~3月20日
投票数:59票
結果
- サポーター(人の気持ちや調和を大切にし、安心感のある関係づくりが得意な温かみのあるタイプ):66.1%
- アナライザー(事実やデータを丁寧に読み解き、確実性の高い判断や改善ができる思慮深いタイプ):13.6%
- コントローラー(状況を整理し、決断力をもって物事を前に進める実行力のあるタイプ):10.2%
- プロモーター(新しいアイデアで可能性を広げ、周囲をワクワクさせるエネルギッシュなタイプ):10.2%
コミュニケーションスタイルとは
- 他人とのコミュニケーションの取り方の傾向・癖・好み
- 「良い」「悪い」ではなく、個人の持つスタイル・傾向
- 自分のコミュニケーションスタイルを知ることで、意識して自分のコミュニケーションの癖を調整することができる
- 他人のスタイルが理解できて、相手に合わせたコミュニケーションがとれる
各項目の傾向と対応のヒント
サポーター(人の気持ちや調和を大切にし、安心感のある関係づくりが得意な温かみのあるタイプ):66.1%
約3人に2人がサポータータイプという結果になりました。従業員の相談対応や職場支援を行う産業保健職らしい結果、と感じられる方もいるのではないでしょうか。
産業保健スタッフは健康相談など、人の話を聴く場面が多くあります。また、従業員・上司・人事労務担当者・産業医など、多職種との橋渡し役になることも少なくなく、相手の気持ちを受け止める姿勢が自然と求められることが考えられます。
そもそも、産業保健の仕事を選ぶ方の中には、「働く人を支えたい」「誰かの役に立ちたい」という思いを持つ方が多いのかもしれません。このあたりは、サポータータイプの特徴とも重なる部分がありそうです。
対応のヒント
- 共感力を活かして信頼関係を築く
健康相談やメンタルヘルス面談などでは、まず相手の話を丁寧に聴き、「理解してもらえた」という安心感を提供することで、相談しやすい関係づくりにつなげましょう。
- 寄り添うだけでなく、必要な助言も伝える
相手の気持ちを大切にしながらも、専門職として必要な情報提供や提案を行うことが重要です。「共感」と「専門的支援」のバランスを意識しましょう。
- 抱え込み過ぎず、客観的な視点を持つ
相手に寄り添う力は強みですが、一方で悩みや課題を一人で抱え込まないことも大切です。人事や産業医などの他職種と連携しながら、客観的な視点で支援を進めましょう。
アナライザー(事実やデータを丁寧に読み解き、確実性の高い判断や改善ができる思慮深いタイプ):13.6%
約7人に1人がアナライザータイプという結果になりました。
アナライザータイプは、事実やデータをもとに物事を整理し、論理的に判断することが得意です。産業保健の現場では、健診結果やストレスチェック結果の分析、健康施策の効果検証、エビデンスに基づく保健指導などで強みを発揮しやすいでしょう。また、人事担当者や経営層に対して、データを活用しながら健康課題や施策の必要性を説明する場面でも力を発揮できます。
一方で、論理性や正確性を重視するあまり、相手の気持ちへの配慮が後回しになってしまうこともあります。保健指導や面談では、データや根拠を伝えるだけでなく、相手の不安や悩みに寄り添いながら行動変容を支援する視点も大切です。「分析力」という強みに「共感力」を組み合わせることで、より効果的な産業保健活動につながるでしょう。
対応のヒント
- データや根拠を活用する
健診結果やストレスチェック結果などのデータを整理し、客観的な根拠に基づいて課題や対策を考えましょう。
- 論理性だけでなく感情にも目を向ける
面談や保健指導では、正確な情報提供に加えて、相手の不安や悩みに耳を傾けることを意識しましょう。
- 分析結果を行動につなげる
課題を見つけるだけで終わらせず、「次に何をするか」を相手と一緒に考え、実践しやすい形で提案することが大切です。
コントローラー(状況を整理し、決断力をもって物事を前に進める実行力のあるタイプ):10.2%
コントローラータイプは約10人に1人という結果になりました。このタイプは、目標達成に向けて素早く判断し、行動に移すことが得意です。産業保健の現場では、健康課題の改善や健康経営の推進、復職支援の調整など、関係者をまとめながら物事を前に進める場面で強みを発揮しやすいでしょう。課題の優先順位を整理し、「何を・いつまでに・誰が行うか」を明確にしながら進められることも特徴です。
一方で、結果や効率を重視するあまり、相手の気持ちやプロセスへの配慮が不足してしまうこともあります。面談や職場支援では、結論を急ぐだけでなく、相手の考えや不安にも耳を傾けることが大切です。「推進力」という強みに「共感的な関わり」を加えることで、より円滑で効果的な産業保健活動につながるでしょう。
対応のヒント
- 目標と優先順位を明確にする
課題が見つかったら、「何を優先するか」「いつまでに取り組むか」を整理し、具体的な行動につなげましょう。
- 決断力を活かしつつ、相手の意見にも耳を傾ける
素早く判断できることは強みですが、面談や職場支援では相手の考えや気持ちを確認しながら進めることも大切です。
- 課題解決だけでなく、関係者の納得感も意識する
結果を求めるだけでなく、関係者が目的や方針を理解し、納得して取り組めるよう丁寧な説明を心掛けましょう。
プロモーター(新しいアイデアで可能性を広げ、周囲をワクワクさせるエネルギッシュなタイプ):10.2%
プロモータータイプも約10人に1人という結果になりました。このタイプは、新しいアイデアを考えたり、人を巻き込んだりすることが得意なコミュニケーションスタイルです。明るく前向きな雰囲気をつくる力があり、周囲のモチベーションを高めながら行動を促すことができます。
産業保健の現場では、健康イベントの企画や健康づくり施策の周知、従業員の行動変容を後押しする場面などで強みを発揮しやすいでしょう。また、新しい取り組みを提案したり、関係者を巻き込みながらプロジェクトを進めたりすることも得意です。一方で、アイデアや勢いを大切にするあまり、計画や効果検証が十分でなくなることもあります。実践する際は、データや根拠を確認しながら進めることを意識すると、より効果的な産業保健活動につながるでしょう。
対応のヒント
- アイデアと発信力を活かす
健康イベントや社内広報活動では、新しい企画やわかりやすい情報発信を通じて、従業員の関心や参加意欲を高めましょう。
- 相手のモチベーションを引き出す
面談や保健指導では、小さな成功を認めたり前向きな声かけをしたりして、「やってみよう」という気持ちを後押ししましょう。
- アイデアを実行につなげる
新しい取り組みを提案するだけでなく、目標や効果指標を設定し、継続的に振り返ることで実践につなげましょう。
今後の展望
コミュニケーションスタイルに優劣はありません。
実際には複数の特徴をあわせ持つ方も多く、状況によって表れ方が変わることもあります。
大切なのは、
- 自分の傾向を知ること
- 相手との違いを理解すること
- 状況に応じて関わり方を工夫すること
ではないでしょうか。
ぜひご自身のコミュニケーションスタイルを振り返りながら、自分の強みや伸ばしたい点を整理し、日々の産業保健活動に活かしてみてはいかがでしょうか。自分の傾向を理解することで、従業員や管理職、人事担当者との関わり方の幅が広がり、より効果的な支援につながる可能性があります。






